ブチャラティ 長編夢

□27.Reminiscenza IV
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第7章「Reminiscenza IV」
Capitolo7《追憶 04》



ソフィア:side






Costa Victoria
コスタ・クルーズが運航しているクルーズ客船。
近年できたばかりのこの船で実業家や資産家が集まり、特別なパーティーを催していた。
夜の闇に紛れ、私たち6人も船に潜り込んでいた。

…… ……



「俺が仕事を受けなかったら、どうするつもりだったんだ?」

「えーと、そうですね……」

ブチャラティさんの腕にしがみつきながら、船内の倉庫にゆっくりと足を下ろした。遅れて、ドサっと私のカバンが落ちてくるので慌てて受け止める。彼の方を見上げ疑問に答える。

「その時は……、色仕掛けでもして、どこかのセレブにでも一緒に乗船してもらうよう行動してましたね」

「おい……!」

「ブチャラティさん、そこは怒るとこじゃなくて、お前に色仕掛けは無理だって笑うところですよ。」

実際にブチャラティさんのスタンドが使えなかったら、乗船リストを改変した上で招待状を作成しなくちゃいけないので……非常に苦労した事だろう。

私のすぐ後ろに控えていた、フーゴさん、ナランチャくん、アバッキオさん、そしてミスタさんもジッパーの裂け目から倉庫に下りてくる。

「で、どうすんだっけ、この後」

疑問を口にするナランチャ君にブチャラティさんはテキパキと答える。

「俺とソフィアは、ドレスコードに着替え船内で客として振る舞うさ。ナランチャ、お前とミスタは中で働く従業員の振りをしてくれ。アバッキオとフーゴは警備員を捕まえて入れ替わってもらえばいい。ミスタ、お前のセックス・ピストルズを伝達用に借りたいがいいか?」

「ああ、いいぜ。銃撃戦になるとは到底思えないしな。No1、お前はブチャラティとソフィアについてろな。No 2お前はフーゴとアバッキオについてろ」

わかったぜミスタ

オッケー、何かあったらすぐ連絡するよ

か、可愛い。やだ、なにこの小さいスタンド可愛い。
そう思ったけど、ブチャラティさんの目が何か言いたげだったので見えない、聞こえない振りをした。さっきちらりとみたスタンドの額の部分に「1」と書いてあった。

「3手に分かれるぞ。合図があるまでは別行動だ。じゃあ任せたからな……」

「おう!!」

彼の合図で、3チームに分かれる。

…… ……

私とブチャラティは早速ドレスコードに着替える事にした。
それぞれ荷物や棚の陰になる場所で手早に着替える。


「着替え終わったか?」

「ええ」

ドレスが汚れないように手で裾を持ち上げながら、
物陰から顔を出しお互いの姿を確認する。

彼の姿を目にした途端に心臓がドクンと脈打った。
濃いネイビーのタキシードに身を包んだ彼があまりにもかっこよすぎて緊張する。
私の方に歩み寄る彼は、
真っ直ぐな青い瞳で私を見つめた後、

「すごく…綺麗だ。とてもソフィアに似合っているな」

と私の手をとり、甲にキスをする。

「ちょっと、ブチャラティさん」

紳士な振る舞いにクラっと来そうになりながらも、
恥ずかしさと緊張で熱くなってくる。

『おいおい、ブチャラティ。イチャついてる場合か〜』

「ひゃ」

『ん?俺のこと見えてんのか?』

突然、ミスタさんのスタンドNo.1に茶化されて赤くなる。
でも反応してはまずいと思い、見えてない振りをする。

『手を握ったままだから、彼女驚いてるぜ』

No.1に言われた瞬間に離すのかと思いきや更にグッと手を握る。

「ブチャラティさん?」

「俺たちはこれから夫婦という設定で潜入するんだ。これくらいの事に驚いている場合じゃないだろ?」

「そうでしたね……夫婦らしくですね」

「そうだ。だから、間違ってもブチャラティさんだなんて呼ぶんじゃないぜ?」

彼の笑顔は反則だった。

「ッ!!……ブローノと言えば満足?」

「ああ、それでいい。ソフィアパーティーに潜り込む覚悟は出来たか?」

「ええ。」

私たちは気を引き締め
客室が続く廊下へとジッパーのゲートを何度も潜り抜けた。
パーティー会場で彼がそっと私の腰に手を回す。その動作はスムーズで自然であったが、そんな事にいちいちドキドキしてしまう自分が恨ましい。

皮肉な事に付き合っている時よりも
付き合ってない今の方が恋人らしい状況だなんて……。

「初めまして、綺麗な奥様ですね」

髭を蓄えたでっぷりとしたタキシードの男性がブチャラティさんに話しかける。

「ああ、自慢の妻だ。こんな素敵な女性、他にいないだろ?」

「ええ、夫婦仲睦まじくていいですね。私も本当は妻をこの場に連れて来たかったんですが予定が合わなくて。では、失礼」

私は、にっこりと笑顔を浮かべ話しかけて来た男を見送った。
こんな素敵な女性ほかにいないだろう…?だなんてよくそんな言葉がスラスラと出てくるものだと思い感心して彼を見つめる。

「ん?どうした?」

「いや、なんでもない」

「目的の人物はもう少し別の場所にいるようだな」

「……いえ、居たわ。ほら、あそこの奥にいる。」

奥で、いい笑顔で話している中年男性が目に入った。依頼人から聞かされた人物で間違いない。

………

………


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