ブチャラティ 長編夢

□24.Reminiscenza
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第7章「Reminiscenza」
Capitolo7《追憶 01》


ブチャラティ :side




俺は町外れの静かなワインバーに赴く。
頭上を見上げれば、
ソフィアのスタンドのような、
深い藍色の夜空のベールが広がっている。
星は小さく煌めいていた。

俺が店に入ると、店のマスターは笑顔で出迎えた。

「ブオナセーラ、ブチャラティさん。頼まれたものはこちらにありますよ」

「あぁ、急に取り寄せてもらってすまないな」

「いえいえ、ブチャラティさんの頼みですからね!このワイン覚えてますよ。あの彼女にですよね」

彼女がこのワインバーに行ったのは、俺の記憶が正しいければ随分前の事になる。それでも、しっかりとソフィアを覚えてくれているマスターに感心した。

「彼女は入院していて明日ようやく退院するんだ。その退院祝いにってやつだ。それにしても相変わらずここは落ち着く…な」

店内はあの時同様に、人があまり入っていない。

「落ち着くより寂れてるって言い方が正しいですよ。少し飲んで行きますか?」

店側からしてみたら、寂れてるという言い方は正しいのだろうが、俺はこの客が少ないこの店の静かさに幾度も救われてきた。だからこそ、最悪な気分の時は決まってここに来ていたんだ。

「そうさせてもらうよ…マスター」

俺がカウンター越しの椅子に腰掛けると、何も注文しなくても、俺の趣味を把握しているマスターは俺のお気に入りのワインをグラスに注いだ。

明日はソフィアが退院する日だ。
どんなに言いづらくても言わなきゃいけないんだ。


… …


酒を煽りながらもカウンターの隣を見る。
そこには誰も座っちゃいないが、
ここで彼女と出会った時の事が鮮明に蘇る。

出逢いはほんの些細な事だった。
虚ろな彼女に自分自身のやるせない気持ちを重ね、俺がこのワインを彼女に奢り声を掛けたのが始まりだったな。
あの頃からソフィアは頑張り屋で…今もそこは変わっちゃいない。

あの時何故か俺は、あんなにも彼女の事が気になって仕方がないと思ったのか…ようやく分かった 。
あの時からすでに俺は、
ソフィアに心を奪われていたんだ。

彼女は矢に刺され俺の家に連れ帰った時や
彼女とお気に入りのリストランテで食事をとった時のこと
リストランテで働く彼女の姿は本当に眩しかった。
彼女が同時に麻薬を捜査し危険な目にあった時に
涙ぐむ彼女。そして告白をされ、俺は彼女を初めて抱いた。
嫉妬をする可愛いソフィアを思い出す。
そして、俺は俺で彼女が他の男とデートして居た時は
どうしようもなかった。
彼女との夢の中での日々もどうしようもなく
愛おしくて掛け替えの無いものだった。

俺は彼女以外にこんな気持ちが起こらないだろう。
生涯愛する女性がいるとすれば…ソフィアだ。

それでも、俺は…

ソフィアと別れないといけないんだ。
愛しているからこそ。

彼女を失いかけた今回の出来事が
何より恐ろしかった。



別れる時は、せめて…


彼女が前を向いて別れられるように
しなくちゃならないな。

ああ。

ソフィア…。

すまない。



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