ブチャラティ 長編夢

□22.Sospetto IV
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第6章「Sospetto IV」
Capitolo6《疑惑 04》


ブチャラティ :side





「なるほど…。どこまで追跡する事になるか分からないが確かめてみる価値はありそうだな」

俺達は、ナランチャにソフィアを任せ、
問題のソフィアが住んでいるアパートの郵便受けに訪れていた。アバッキオの報告を聞く限り、俺のスティッキィ・フィンガーズで切り開かないといけない場所にネズミが潜り込んでいったそうだ。ネズミを飼っている男がその先にはいるだろう…十分リプレイで追うメリットはある。

「すぐにやれそうか?」

アバッキオを見やると、彼はすでに彼のスタンドであるムーディー・ブルースを出していた。

「ああ。今からリプレイを開始するぜ」

ムーディー・ブルースの額にある数字がくるくると遡っていきその姿をネズミに変えた。

「本当に、ただのネズミだな」

素直に口をついた感想はそれだった。別段特別な色でもなくごくごくありふれたドブネズミだ。

「ああ、ただのネズミに見えるが手紙を運びにきたという芸当をお披露目した」

「逆再生してくれよ、手紙を運んだ後は手紙を書いた男の元に戻るとは限らないからな」

「ああ、分かってるぜ」

そして、ねずみは後ろに走るように、逆再生されながら下水道の細い穴に逃げ込んだ。

「スティッキィ・フィンガーズ!!!」

俺のスタンドが大きく下水道への道を開く。
用意していた懐中電灯で暗闇を照らす。
アバッキオは下水道の匂いに、もともと顰めている顔をさらに顰め、眉をひそめた。俺をチラッと見るその目が下水道に入るのを拒んでいるのはよく分かった。

「最悪だが、行くしかない。アバッキオ…いくぞ」

俺が声をかけると、アバッキオは渋々付いてくる。
下水道への道を進みながらネズミの足取りを追う。
下水道は
俺たちのブーツの足音がやたらコツンコツンと
ねずみは入り組んだ下水道の道のある場所にたどり着く。

そこは、こんなところに何故あるか分からない小屋のようなものがあった。そこに辿り着いたネズミがいきなりいなくなる。しかし消えてしまったという訳ではない。何故ならそこにはネズミよりずっとでかいものが居たのだから。

ネズミであったはずのムーディー・ブルースは今は人間の男に変わっている。ムーディー・ブルースの再現で額には再生のメーターが付いてはいるが…顔は確認できた。
体型は細身、前歯が長い特徴を持っている。

「おいッ!アバッキオ、一時停止をしてくれ。一体どういう事だ?…ネズミから人間になったが…こいつがネズミの飼主ってことか?リプレイのターゲットを変えたのか?」

「いや、変えてない。信じられないが、そのネズミがその男で間違いない。ネズミの飼い主じゃなく、ネズミそのものが今回のストーカー野郎って事だな」

ネズミに変身できるなんて事できるって事は…
つまり、今回ソフィアを狙うストーカー野郎は
スタンド使い≠チて事か。
となると、どこでも潜り込めるって事で危険すぎる。
すぐにソフィアのところに戻らなければ心配だ。

「アバッキオ…すぐにアジトに戻らねェとソフィアが心配だ」

「ここがクソ野郎の隠れ家で間違い無いだろうが、ここは調べなくていいのか?」

「悪いが…アバッキオ。お前に頼みたい」

アバッキオはため息をついた後、

「1分も居たくはねェ場所だが、あんたの命令は聞くって決めたのは俺だ。情報は集めておく」

こうして、アバッキオに任せ俺はアジトに急いだ。


… …

… …




アバッキオ :side





ひどい匂いに
ったく…警察時代を思い出す…。

警察になって、熱心に俺は仕事に打ち込んで居た時に何度も腐乱した死体とは対面してきた。そん時に比べたら、下水道の方がまだマシなのかも知れない。

俺は小屋の扉の前で一時停止をさせている
ムーディー・ブルースに懐中電灯を当ててよく面を確認する。ネズミになる能力だけではなくネズミのような顔つきだと思った。

一時停止を解除すると、小屋の右端に積んである木箱の一つつを持ち上げ何かを手にし扉の前まできた。
どうやらこの小屋の鍵を木箱の下に隠して居たみたいだ。それを使って内部に入って行くのを俺も追う。

扉を入ってすぐに俺は不快なものを見ることになる。

壁一面にリストランテで働くソフィアの写真が
貼ってあった。完全にこれは盗撮写真だ。
顔のアップから、随分遠くから撮ったと思われるもの、
そして、ブチャラティと談笑している写真まであったが…ブチャラティの顔部分は完全に切り取られて居た。服だけが印象的だからこそ分かったが…。

俺はムーディー・ブルースの様子を見ると、ネズミのようなひどく出っ歯の男は手紙を必死に書いているところだった。

俺は写真をそのままスルーして、
証拠になりそうなものを探す。

すると男の診察カードが複数、引き出しから出てきた。
顔はないが、おそらくこの男のもんだろう。
名前  デンティ・カラーチェ
年齢  28
住所も載っている。一枚持っていっても気づかないだろう。
俺は一枚だけポケットに忍ばせた。

「デンティ…そこにいるのか?」

突然、人の声がして俺はハッとする。
声は女性の声で、その声は少し遠くから聞こえた。

俺はムーディー・ブルースを解除する。
ムーディー・ブルースでリプレイしている間は完全に無防備状態だ。それは避けなきゃな。

俺は相手の姿を確認することよりも
まず身を隠すことを優先し、声とは反対の方に足音を立てないように気をつけながらも移動する。

こんな壁一面に女性の盗撮写真を貼っている。
その上、こんな最悪な匂いの場所の小屋にまさか女性がいるとは思わず、俺は予想外の出来事に戸惑う。

どうすりゃいいのか分かんねェな。

考えがまとまらないうちに、
俺の居場所に声の主が近づいてきた…。


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