ブチャラティ 長編夢

□20.Sospetto II
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第6章「Sospetto II」
Capitolo6《疑惑 02》


ソフィア :side





ブチャラティ達のようなギャングと関わるな

不気味な手紙が一通送られた後、
今まで通りにブローノやフーゴさん達にリストランテで接客する。あの手紙で怖気付いたと思われるのも癪なので、私はいつも以上に明るく声をかけ絡む。

「ナランチャ君、勉強の方はどう?」

「ん〜フーゴに教えてもらってんだけど。なかなかわからねェんだよ。今度教えてくれよ」

「いいですよ!今度お昼にでもきた時に教えますよ!」

フーゴさんはフーゴさんで眉間にシワを寄せながら、

「言っておきますけど、ナランチャに教えても教えても本当に覚えませんからね。きっと時間の無駄になると思いますよ」

「は〜そんなことになんねぇ〜っつーの!!」

そして目の前で皿など割れてしまうのではないかという戦闘体制に入るところでブローノが声を上げる。

「おい、お前ら。ソフィアの仕事の邪魔になるような事はするな!」

「ブロ…ブチャラティさんありがとうございます」

「いつもうるさくして、済まないな」

私とブローノの茶番に、フーゴさんとナランチャ君はニヤニヤする。アバッキオさんだけは怪しむようにこちらを見るだけだった。私は席を離れ、レオナルドさんの元に行く。レオナルドさんに頼んでいる事があった。

「何人くらいいた?」

「ん〜あそこのB席3人とC席4人。は見ていましたよ」

「ありがとう…。いつもの常連さんが5人と2人は初めての方か…」

「なんでこんな事、俺に頼んだんですか?」

「実はこんな事があって…」

私が家に届いた手紙の話をすると、驚愕する彼。

「えーーそれって…!!」

「声でかい!!」

「ちょっとこっそりこっそり調査を進めたいから、内緒にしてて欲しいの。後、どんな目的かもわからないから様子見にしてる」

常連の五人が私とブローノ達のやりとりを見ていたのだから、ここの五人が怪しいと思っていいのかも知れない。
でもそれは決めつけすぎかな。

メッセージについてもう少し深く考えてみよう。

ブチャラティ達のようなギャングと関わるな

ギャングと関わるな…という一文を考えると
私の身を案じているような気もする。
しかし、ブチャラティ達のようなという一文で
彼らが町のみんなから慕われている存在である
彼を引き合いに出されている事から、ただ単に身を案じている訳ではない事はわかる。

ブチャラティ…ブローノが私みたいな一般人に危害を加えない事は明白だし、関わらないで欲しい理由とはなんだろう。

可能性としてはあるのは、
もしかしたらブローノ達の事が大好きな女性がいて
私が店員とはいえ親しくしている事に腹を立ててるのか。

彼らと仲が良いと危険だと、はたから見て純粋に私の身を案じてくれているのか。

それとも…別の理由があるのか。

今日仕事終わった後に、客のうちの一人を夢の中で調べてみようかな。


… …

… …



イイノ?…ブローノ・ブチャラティ二
 ソウダン シナクテ大丈夫カシラ

「フォアビデン・ドア…もうちょっと情報集めてからにする。彼に相談するにしても、こんなちょっとした事で彼に相談しちゃう方が恥ずかしいもの」

ソウ…デハ、気ヲツケテ行キマショウ
 少シデモ危険ナラ、スグニ相談シマショウ

「やれるところまではやるわ。さぁ…いける?」

彼女はコクんとうなづいた。
今回見るのは常連の一人の男の夢の中にお邪魔する事にした。


フードを深くかぶり顔は仮面をはめる。
これで間違いなく私ではない。

コン コン コン

いつも通り扉を開けて、ゆっくり入る。

すると…
そこは普通のどこにでもあるアパートの一室だった。

常連客の男レイルという60歳くらいの男性は、
椅子に座り、テーブルにある新聞に目を通していた。

私の存在に気づいた男は、うわぁと一瞬驚いた声をあげて
椅子から落ちる。お尻を打った男はいててと撫りながらも私の方を怪しげに見る。

「なんなんだ、お前は…」

「気にしないで…」

「その声はどこかで…いや、この声は」

まずい。
常連だけあって、声でも十分特定できてしまうのだろう。
私はこれ以上何も話さないように黙った。

レイルは椅子に座りなおしながら、
辺りを見回して私に話しかける。

「君はリストランテで働いている…ソフィアって子じゃないのか?」

私はそっと首を振る。

「なんだ、違うのかい。似てると思ったんだけどね。似てると言ったら、彼女も君も、私の娘に、だけどね」

彼はそう言って部屋の棚にある写真立てを指差した。
そこに写っているのは、レイルと若い娘さんで少し私に似ているような気がした。

彼はそのまま語る。

「娘はすごく元気で優しくて本当に…いいこだったんだよ。だけどね、ある日ギャングの抗争に巻き込まれて命を落としてしまったんだ…。すまないね、こんな話。ああ娘に会いたいね」

私はこれ以上長くいて、身がばれるのを防ぐために
扉を通って帰る事にした。

本当ならもっと話を詳しく聞きたかったけど、
それもできない。

私は挨拶もしないまま、その部屋を後にした。


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