ブチャラティ 長編夢

□18.Angelo V
1ページ/3ページ

第5章「Angelo V」
Capitolo5《天使 05》


ブチャラティ :side





俺は倉庫の中をジッパーで少し開き中を覗きながらフーゴに声をかける。

「しかし…よく調べることが出来たな」

「僕には飛び切り腕のいい情報屋がいますからね。」

フーゴが人を褒めるのは珍しく思うが、逆にそれだけ腕が良くて信頼できる人物なのだろう。先日、俺はフーゴからの情報を元に更に調査を進め計画を練り今日に至る。
組織を匿っているこの屋敷の持ち主の男オレステ・キアーラは今日はいない。
なんでも、信仰には熱心らしいその男は、この日には教会で行われる集会に参加しているらしい。ギャングを匿ってよく信仰心を口に出せるな、と思いつつも俺は倉庫内部のありとあらゆる場所に視線を走らせた。

このセレブの敷地内は、
セキュリティに関して言えば決して入り込めないわけではなかった。厳重な警戒態勢を敷いている方が逆に怪しいと察知されると考えたのだろう…一見すると普通の富裕層が住まう最低限のセキュリティのように見えるくらいだった。門の端と端に黒服にサングラスの男が立っている。あとは敷地内にある監視カメラと数人徘徊しているくらいだ。
 カメラの位置さえわかってしまえば、俺たちが移動する時だけ、俺のスティッキィ・フィンガーズを使いカメラのレンズ部分を切開し映らなくし、移動し終わったらジッパーで戻す簡単な作業で切り抜けられた。一瞬映像に乱れがあってもすぐに元に戻るのでそこまで注意されることもまずないだろう。目的の倉庫の中に入るのは容易かった。

倉庫の中はずらりと外車が並んでいる。
監視カメラが複数交差して配置してあり、厳重だが、これだけ金目の物が並んでいたら頷ける。

「ナランチャ。レーダーの反応はどうだ?」

「ブチャラティ 。バッチリだ15人分の反応がある、今姿が見えないって事は、多分この下にいる」

「15人か…当初の想定した人数よりは多いが、まぁ地下にいるのはわかっていた事だ。通気口の場所からジッパーで慎重に探るしかないな…。フーゴ持ってきたか?」

フーゴは懐から紙を取り出し広げて見せた。

「ええ、ここにありますよ。工事自体は随分と前に行ったようですね。ここから別個で工事を依頼していたとなるとわかりませんが、この見取り図でまず間違いないでしょうね。もともと何かを隠すための部屋としてあって、丁度、匿う場所に最適だったんでしょうね」

「ああ。あとナランチャ…これだけは言っておかないといけないな」

俺はナランチャの目を見つめハッキリと宣言する。

「俺たちは別に暗殺を生業にしている訳じゃない。だが、今からやる事は確実に始末≠しないといけない事だ。ターゲットである幹部を確実に殺さないといけない。そこに躊躇いや迷いが生じれば自分も殺される上、仲間を危険に晒すんだ。」

「ギャングの世界を自ら選んだんだ。…だから覚悟を持てよ。俺たちは正義のヒーローなんかじゃ勿論ないんだ」

その言葉にナランチャはまっすぐと俺を見つめ
宣言した。

「わかってるよ…ブチャラティ。俺からあんたの元で働きたいって言ったんだ。どこまでも汚れる覚悟はあるぜ!」


.
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ