ブチャラティ 長編夢
□17.Angelo IV
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第5章「Angelo IV」
Capitolo5《天使 04》
ブチャラティ :side
「急に呼び出してすまないな」
俺の正面の席に…
たった今、座った女性に対して謝る。
「ブチャラティ…あなたから呼び出してくれるなんて、嬉しいわ、あなたの頼みだったらすぐに飛んでくるわよ」
彼女は俺が、これから話す事を全く予期していないという様子で嬉しそうに微笑む。
言いづらい状況だが、それでも俺には言わないという選択肢はない。
「君をここに呼んだのは…他でもない。君と別れる為だ…」
俺の言葉を聞いた瞬間に信じられないという顔をする彼女。
あぁ、…ひどい事をしているのはわかっている。
俺の言葉をゆっくり脳が咀嚼し理解したのだろう。しばらく無言だった彼女は目元に涙を浮かべ、シクシクとか細い声で泣いていた。それでも俺は無遠慮に話を続ける。
「…、君自身…分かっていただろう?すまないと思っている。君が気持ちを弄んだと思うなら、そう思ってもらっても構わない。」
女性は震えた声で疑問を口にした。
「…ッ、どうして、こんな急に。ブチャラティが他の女性と居ても、私は我慢していたのにこんなのって!」
「君も複数の女性と付き合っている俺のような男じゃなくて、もっと君を大切にしてくれる男と付き合った方がいい…」
泣いている彼女は、「Arrivederci…」と俺に一言だけ残し、その場から去った。
まだ一人目だ。
… … …
… … …
「振るのは…私で何人目かしら?…でもいいわ。あなたが私に感情を抱いていない事も知っていたから。」
「そうか…」
「ギャングと付き合うって、どんな感じなのかと思ってスリリングな展開を期待していたのだけど…正直に言って、あなたはとてもつまらなかったわ」
「そこまで言ってくれた方が、俺も後腐れがなくて助かる。つまらない男で悪かったな」
「ええ、本当によ。Arrivederci…最後にこれだけは言っておこうかしら。今のあなたのその間抜けな頬だけは面白かったわ」
ようやく…最後の1人が終わりため息をつく。
怒りのあまり張り手を食らわせた女性もいた。俺が自分勝手に彼女たちの心をかき乱したのだから、それくらいの報いは甘んじて受けた。
… …
「うっわ、痛そう」
「あなたのこんな情けない姿見たくはなかったですよ」
「まぁ、お前たちにはともかく、…ソフィアには意地でも見せたくないな」
好きな女の前では、男というのはどうしてもカッコつけたくなるものであり情けない姿なんか見られたくはない。
俺が鏡で改めて自分の頬を確認する。
そこには頬にくっきりと掌型に赤く染めた間抜けな男が映った。
「随分とひどい物言いだなと思ったが、これは、確かに…情けないな」
「ブチャラティ。僕とナランチャで外回りとみかじめ徴収に行ってきますね。あなたは間違っても外に出ないで下さいよ…流石に…ねぇ」
フーゴはクスクスと笑ったあとにナランチャの方を見る。
「外のことは俺たちに任せてくれよな!」
ナランチャはナランチャで純粋にガッツポーズをしている。
「あぁ、分かったよ。俺も丁度調べなくちゃならない事が多いからな…」
俺は2人に任せてデータを洗う事にした。
あれから身を潜めていた麻薬生業組織
ズッケロ・ビアンコだったが、
流石にずっと活動していない訳じゃない。
パズルピースのように散らばった情報を
組み合わせて調査を重ねていた俺たちだったが、
ここ数日で
ようやく尻尾を掴めそうだった。
俺がマーカーで以前印や写真を貼ってわかりやすくしてある町の地図の一点を眺める。
恐らく…ここだろうな。
情報の上ではとあるセレブが所有している
敷地の一部にある場所なのだが
そのセレブがズッケロ・ビアンコから麻薬を受け取っている可能性が高かった。
もしそこに確証があればアジトは間違いなくここだと絞れる。だが、そのセレブを調べる為には…誰にも気づかれず相手を調べる必要があるな。
これはフーゴと慎重に検討する必要がありそうだ。
ナランチャの能力は戦闘に非常に特化していた。
あとは使い方をしっかり身につけてもらえば…
この組織を壊滅させる事も可能かも知れない。
皮肉というものなのか…
これは運命というものなのだろうか。
ナランチャは明らかにこちら側の人間ではなかったはずだ。
だが、俺やフーゴが助けた事でこちら側の人間になろうと
決意を固めて実際にポルポの試験をくぐり抜け俺の下で働く決意をした。
そしてスタンド能力はそれこそ俺よりもずっと戦闘に特化している。
…俺がこれからやろうとしていることはかなり危険を伴う上、ナランチャの能力にかなり頼らないといけなくなるだろうな…
俺自身、もっと力をつけれていれば…
ふとソフィアが俺に初めて出会った時に言った言葉を思い出す。
「誰にだって、それこそスーパーマンでも1人で敵対組織をどうこうって無理ですよ!だから、ブチャラティさんは仲間を!チームを作ったらいいんじゃないですか?」
まだお互いのことを全然知らなかった状態で、
ソフィアにもらったアドバイス。
確かに俺一人ではどうにでもならない事はある。
今回やろうとしている事もその一つだ。
あの時から…
思えばソフィアとは出会うべくして出会ったような、
そんな感覚になる。
さて、フーゴとナランチャが帰ってくるまでに
整理しないとな。
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