ブチャラティ 長編夢

□16.Angelo III
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第5章「Angelo III」
Capitolo5《天使 03》


ソフィア :side




*****

*****

日差しが眩しく、
風は爽やかで今日はデートをするには
ぴったりの日だった。

待ち合わせ場所に着くと、
レオナルドさんはいつもと違う
お洒落な服を着ていた。
待ち合わせの時間より10分ほど早かったけれど、
すでに待ってくれて居る事になんだか嬉しくなる。

「今日は雰囲気が違いますね。
 すごく…綺麗ですソフィア さん」

そう言う彼の方がずっと普段の雰囲気とは違う。
子犬のようなイメージとは違って何処と無く大人っぽい。

「お世辞が上手ね」

私がフフと笑うと、彼は慌てたように手をブンブン振って困ったように言う。

「お世辞なんかじゃないですよ!素直に綺麗だって思ったから言ったんです!」

こんなに純粋で熱心であどけない彼の想いには
答えられないのに…
そう思うと、今日のデートが申し訳なくなってくる。

「本当に今日いいの?…だって、私は…」

「まだ!言わないでください!今日だけは、ちゃんと一日デートしてから答えを聞かせてください。なので、今日は楽しみましょう!ソフィアさんが好きそうな店リサーチして来たので!」

そして、手を握る彼。
突然握られて驚いた私は手を引っ込める。

「…ごめんなさい…」

「あ…、俺…。すみません。ちょっと調子に乗りました。気を取り直して行きますね!」

先ほどの気まずさも、
彼の目的地に向かう途中の町並みを眺めていると
だんだんと薄れてきた。

お洒落な店が並んだ通り。
色々な雑貨店や服が並んでいる。

ブローノとは直接デートできない上、
夢の中で服を変えられたから
そこまで買う必要を感じなくて、
買っていなかったけど…
こうやってお洒落な店のショーウィンドウの服に
目が奪われ、確かに欲しくなる。

「Buongiorno…」

店の扉を開け店員に挨拶して入る。

「ちょっとみてもいいですか?」

「ええ。どうぞ」

店の店員に触っていいかの許可を得て、
気になった服を手にとってみる。

鏡で服を合わせてみる。
ん〜似合うかな…。どうだろう。

「ソフィアさんに似合うと思うんですよ。」

彼が眩しい笑顔で言ってくれる。

「そうかなぁ?試着してみようかな。」

私は店員に伝えて試着させてもらった。
その姿を見たレオナルドさんは…

「似合ってます!」

と大絶賛してくれた。私はそんな彼の顔を直視できない。
だって…私が考えていたことは…

「よし、これ買おう!」

自分を誤魔化すように笑顔を作って
服をレジに持っていく。

「僕が出します!」

私はレオナルドからの提案を全力で断った。

だって…

だって、この服を選んだ理由だって

『あっ、これブローノ好きそう!…今度の夢であった時にこれを着ようかな?』

ってすぐに考えてしまったから…

それに彼に本当に奢ってもらうって事を
してもらうなんて最悪だって思う。

いや、もう最悪な事をしてるんだ。

だってレオナルドさんに想いが傾くとは思えないのに…
デートを承認してしまったのだから。

私はブローノがリストランテで食事をしてる時に現れた
ブロンドの美しい女性を思い出した。
ブローノが他の女性と接触している事の当てつけの気持ちで
きっとレオナルドさんのデートを承諾した。

私はレオナルドさんにも…ブローノにも最悪な事をしている。
それなのに、彼はどうしてそんなに楽しそうで眩しい笑顔で私を見るのだろう…。

このままデートを続けて、今日1日デートが終わった後レオナルドさんにはっきりと気持ちを言おう。



**********


ナランチャ:side





「なぁ、フーゴ。俺がなんでこんなに荷物を持たなくちゃいけねぇんだ?ズリィ〜よ」

俺は買い出しの荷物を持ちながら、
なんとか人にぶつからないように歩いていた。
目の前にいるフーゴのヤツは買い物のメモを見ているだけで
手ぶらで俺との差に納得がいかなかった。

「あなたは新人なんです。新人は言う事を聞くもんですよ。それに誰が組織に紹介したか忘れ訳じゃないでしょうね?」

「ちぇ〜」

それを言われたら、何も言い返せないっつーの。
せめて休ませて欲しいぜ。
俺は周りのカフェを見渡した。

「なぁ、あそこで休まない?俺のど乾いたんだけど」

「仕方ないですね。少しだけですよ」

こうして俺はカフェテラスで町の様子を眺めながら休憩して居た。この時間は人が多いなぁ。そんな事を考えながら色々な人間を見ていると…

向こうのカフェに見覚えのある人物がいた。

「なぁ、フーゴ。あれってソフィアなんじゃね?それにあの隣にいるのって前、楽しそうに話してたリストランテの同僚だろ?」

俺が指さすと、フーゴはすごい驚いたという形相をしたあと、突然ヒソヒソ話をし始めた。

「この事は絶対にブチャラティには言わないでくださいよ」

「なんで?」

「いいから、絶対に他言しないで下さい」

「納得がいかねぇーよ。ソフィアとあの男がデートして何が問題あるのかちっともわからねぇよ」

俺がじーっと見ていると、お?
向こうもこちらに気がついた様子だった。

ソフィアと目と目があった。

ソフィアはフーゴと同様にすごく驚いた顔をした。
そのあとは笑顔を向けたが、何やら顔が引きつっている事を俺は見逃さなかった。

「なぁ、フーゴ。ソフィアの方も俺たちに気づいたようだぜ。でも見られちゃまずいって顔してたんだけど、なんで?」

俺の質問にフーゴはため息を深く吐き出した後、

「ナランチャ。普通に考えて見て下さい。ギャングなんですよ。僕たちは。それなのに普通に関わり合いがあるって思われたくないもんです。リストランテの外で今は仕事じゃなくてプライベートなんですよ?」

「まーそれだったら、ソフィアが困る顔をするのは納得かも知れないけどさ。じゃあさ、なんでブチャラティには絶対に言っちゃダメなんだ?」

「それは…。…。あなたがお馬鹿さんだからわからないんです。自分で考えてみればいいですよ」

「おい!また俺を馬鹿にしやがったな!!」

「行儀が悪いですよ。ナランチャ。」

俺はフーゴに言われた通り、自分で考えてみたけど、
わからなかった。


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