ブチャラティ 長編夢

□7.Peccatori
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第3章「Peccatori」
Capitolo3《罪人 01》


ソフィア :side





私はいつも通り早い時間に目が覚めた。
職場に向かう支度をしようと思い
今日のスケジュールを確認しようと手帳を
開いた。

そこで、はじめて…
仕事に行かなくていいのだと気がつく。


一気に脱力し
部屋のフローリングの上に
ドサっと座り込んでしまった。



*****



私は簡単にカリカリのベーコンと
スクランブルエッグを作りお皿に盛り付ける。
先ほど、焼いたばかりの
ふっくらしたパンを口に頬ぼりながら、
テレビ画面をぼーっと見つめる。

テレビは丁度天気予報を伝えている最中だった
今日は快晴。気温もちょうど良さそう。

いつもは早々に準備をして仕事場に向かう為、
こうしてテレビをゆっくりと見る事もなかった。

天気予報が終わり、ニュースの画面が切り替わる。
緊急速報が流れ込んで来る。

「それでは本日のニュースをお伝えします。
 今朝…自宅のベットの上で焼死体となって発見された××…」

!!

咥えたパンが口から落下していく。

画面の報道に開いた口が塞がらない。
テレビに映ったのは、
私の嫌いな、あの上司だった。

「出火した形跡がないことから、何者かが別の場所で殺害後、運び出した可能性をみて捜査を進めています。次のニュースですー」


徐々に実感が湧き始める。

昨夜、私は…

燃え盛る炎の音と
真っ赤な炎の映像が
脳裏に一瞬フラッシュバックする。

!!


あれは夢ではなくて…


私が殺したんだ


昨夜、夢の中での出来事を思い出した。

私の怒りが頂点に達した時に、
まるで、私の心の業火を写し取ったように
部屋は復讐の炎で燃え盛っていた。



フォアビデン・ドア Forbidden door
は言っていた。

 夢ダケド

 現実デモアル…アナタガ怪我ヲスレバ…

 現実デモ怪我ヲシテシマウ…

つまり、その逆も…。
その夢にいた人も同様なのだろうか。

「熱い!!苦しいッ!

 待て、おい!!助けてくれ!!」

燃えた部屋から私が逃げ出した時、
背後から聞こえた彼の、
あの上司の悲痛な声が
まだ耳に残っていた。

私は口を手で覆い、
込み上げて来る吐き気を抑える。
食欲は地に落ち、
代わり胃の中に重い何かを抱える事になった。

なんて事を…してしまったんだ。

自分にはあんなにも覚悟を持って
復讐する事を決意したはずだった。
実際はその覚悟がなかった事を知る。

あんなにも憎かったからこそ、
望んで望んで実行したのに…

人、1人の人生を奪った事実は
消そうにも消してくれない。


私が…殺したんだ。


罪の意識が私の心をベッタリと染め上げた。


もう…

私は…

戻れない。

普通の生活には戻れない…

私が頭を抱えていると、フォアビデン・ドアが優しく言葉をかける。

アナタガ罪悪感ヲ抱ク必要ハ ナイデショウ?

彼ガアナタに今マデ 何ヲシテキタカ、何ヲシタノカ

 忘レテイナイ訳ジャナイデショウ

忘れた訳ではない。
でも、あの男のせいだと本当に全て言い切れるだろうか。
自分の仕事ができない無力さが
あの状況を作り出したんじゃないか。

とっさにあの男へ怒りを向けたのは…
自分自身の不甲斐なさを、
転化したに過ぎないのかも知れない。

完璧に仕事をこなしていたら、
果たして、私に罪を着せれただろうか?
きっと違う。

理想に届かない悔しさと、
環境の過酷さで…あの男を悪者にしただけだもの。

アナタノオカゲデ…アノ男ガイナクナッテ
 助カルモノモイルハズヨ…
 ソレデモ後悔シテイルノ?

後悔…?
これは…後悔なのかな?
わからないよ。

でも私はもう、逃れられない。

私は出頭することに決めた。

そんな時、「ピンポーン」と玄関のチャイムが鳴る。

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