ブチャラティ 長編夢

□5.Portale II
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第2章「Portale II」
Capitolo2《扉 02》


ブチャラティ :side




窓から眩しい光が差し込んだ。
部屋を照らす光に目を細めながらも
腕を伸ばした。

こんなにも目覚めが良いのは、
いつぶりだろか。

俺はシャワーを浴び、
身支度を済ませ
ナワバリを巡回する。

ソフィアは仕事を今頃
頑張っているんだろうな。

俺はつい彼女の事を考える事が
多くなっている事に気がついた。

彼女の笑顔や話している時の事を思い出すと
自然と心は安らぐような気持ちになる。
ここ数日の内で彼女の表情を色々と目にした。
後悔、絶望、笑顔、そんな中で彼女の笑顔が忘れられない。
彼女にはずっと笑っていて欲しいと思う。

だが、そんな彼女を今危険な目に合わせて
しまったのは他でもないこの組織だ…。

それを考えると、
急に重たいものがのしかかって来る。

ソフィアの事を考えると
複雑な感情がせり上がって来るが、
自分でもよくこの感情を説明できない。


突然、鳴り響く電話の呼び出し音に
ハッとする。

「トゥルルル、トゥルルルル」

ソフィアに何かあったのか?
と思い焦って電話に出た。

「はい、ブチャラティです」

しかし、彼女ではなかった。
勿論かかってきた番号も違った。

「今すぐに 来るんだ」

ポルポさん…
俺のボスからの
呼び出しであった。




*****

*****





俺がポルポさんのガラス前まで来ると、
彼は相変わらず食事中だった。
お世辞にも綺麗な食べ方ではなく、
ポロポロと服の上にソースが飛び散っていた。


「回収したライターです」

俺はいつでも返せるように
ポケットに忍ばせていたライターをそっと
囚人用の小さな受口に置いた。

彼は巨大な手を伸ばし、
小さな自分のライターをマジマジと見つめ俺に話す。

「今回呼んだのは、何故だかわかるかね?ブチャラティ…」

ポルポさんは猫なで声のような優しい口調で俺に訊く。
普段とは違った態度に俺は背筋に寒気が走るのを感じた。

まさか…。

いや…ソフィアの事は
流石にわからないはずだ。

遠隔操作型のスタンドに本人の意識はない。
何が起こったか知りようがないはずだ。

ここで動揺したのを悟られてはいけない。

「すみませんボス。俺には心当たりがありません」

「んん?隠し事をしてないと、そう断言できるのかね?」

ガラス越しにグイっと俺に顔を近づける。
さっきの猫撫で声から一変する。

どんな情報をボスが掴んだのかは分からない。
しかし何も情報なくこんな問いかけはしないだろう。
ボスが知り得そうな情報…
ここで何か機転を効かせなくては…


「ボス…すみませんでした。隠し事にするつもりではありませんでした。」

俺がそう言葉を絞り出すと
ボスは獲物を追い詰めたというような表情で
満足そうに俺を見下げる。

「さぁ。自分の言葉で何を企てているのか、言うんだ。ブフフッ」

俺は意を決して言う。

「ボスの言う…俺の隠している事は、俺が『自分のチームを作ろう』としている…その事についてーですよね?」

「!!」

俺のその言葉にボスは意外そうな顔をした。
そして少し考えた表情をした後、
納得した様子だった。

掴んだ情報はこれではなかったのか…?

「あぁ、…そうだったのか」

ポルポは急に明るくなる。

「ブフフフ、それならそうと言ってくれれば良かったのだが_いや、何ちょっとした勘違いをしていたのだよ。組織に忠誠を誓った君を疑って悪かった。」

一体何を勘違いしていたのだろうか。

「俺はもっと上に行きたいんです。その為にはチームが必要だと思い仕事の合間に情報を集めていました。ボスに許可を取らずチームを作ろうと動いていた事は本当に申し訳無いです」

「グフッ、まぁ、こちらも勘違いしていた事だ。気にしないでくれ。組織としても信頼できる君がチームを作るのは大変有益な事で結構な事だ。ブフフフ、期待しているぞ。」

一体何を疑っていたのか結局はわからなかった。
よく信頼していると言う言葉を口にできるな と
正直に思うが、彼女の事を勘付かれていないようで良かったと改めて思う。
それと同時に今まで以上に注意をしなければと心から思った。


ボスは下がっていいと手で俺に合図を送った。
俺がジッパーを開きその場を去ろうとした時に
一言言われた。

「最後に一つ_チームを作るのは問題ないが、勿論組織に入団させるのだからな…私の入団テストを受けさせ給えよ?」

「勿論です。ボス」

俺はそのままジッパーの闇に消えた。




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