ブチャラティ 長編夢

□3.Caso II
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第1章「Caso II」
Capitolo1《偶然 02》



ソフィア :side




… …

… …



重い瞼をあげると、
見知らぬ天井が真っ先に目に入る。

ここは…
身体を起こした後、
意識が朦朧とする中で状況を確認する。

そこは、落ち着いた…しかし、
決して豪華ではないが上品さを感じさせる寝室だった。
小さな窓からは光が差し込み、開けっ放しなのかカーテンは風ではためいている。
部屋の中に紛れる空気がどこかしょっぱい。
海に近い場所なのかも知れない。



… … !?

眠りから覚めた頭がゆっくりと働いてくると、
この状況の異常さにハッとする。

えっと、
そもそも、知らない寝室になんでいるの!?

光が部屋に差し込んでいるという事は…
時間がかなり経っている事に焦る。

え…、今 何時?
仕事は!?

焦りながら
必死に部屋を見回し時計を見る。
古い、のっぽの時計の針は12時を指していた。

あーーーー!!!

終わった。

パタン…

背中から私はベッドに倒れこむ。

あー、職場に連絡なく休んでしまった。
どうしよう。やることが溜まってるのに…。
昨日は、早く終わって上機嫌だったのに、
まさかこんなことになるとは…。

そこで、ふと重要な問題を思い出す。

あれ?
昨夜の記憶がない。

記憶の糸をたぐってみる。
私がこの知らない部屋に来た覚えはない。
ホテル…?*B&B?
酔っ払って、無意識に泊まったのだろうか…。
ワインを飲んで、ブチャラティさんと話して

いや、あの後はちゃんと帰った。
昨日じゃなくて、それは一昨日だったはず。

えっと、昨日は… 仕事が早く終わって
いつもと違う帰り道にして
そこで公園で…

あ!!


そうだ。
変な男が苦しそうな顔をして倒れたのを覚えている。
私は確か、必死に駆け寄ろうとした。

そこで…
すごい痛みが走って…

それ以降の記憶がない。

あそこで私は気絶してしまったのだろうか…。

あの痛みを思い出して、私は身体を恐る恐る見回す。
傷や痣はどうやらなさそうだ。
それどころか痛みさえ、ちっともない。
あんなにも痛かったのにどうして…。

そして、ここが病院ではない事はわかるけど、
ここが何処で誰がここに運んで来たんだろう。

倒れた私を見知らぬ人が運んでくれたのかも知れない。

私は再び身体を起こし、部屋の扉の前まで行き
扉向こうの様子を伺うよう、耳を当ててみる。

ーー人の気配を感じる。

扉をゆっくりと開けながら、

「あ、あの〜!!すみません!」

声をかけながら、扉を開けるとそこには…

手元に新聞を持った、
特徴的な髪型に、模様の入った白いスーツの男が、
私を見つめた。

私はこの男を知っている。

「Buongiorno. ソフィア。ようやく目を覚ましたようだな」

「ブ、ブォンジョールノ、…じゃなくて!ブチャラティさんが、どうして、ここに!?」

私の言葉に、ブチャラティさんが
フッと苦笑し、

「どうして…って、ここは、俺の家だからな。ーー君は、こう聞きたいんじゃないか?どうして自分がここにいるのかって…」

「そう…、ですね。私、倒れたんですか?」

「まぁ、そうだな。ちょっと色々と複雑な事をこれから君に話さないといけなくなる…」

彼が真剣な顔で私を見ている最中に
部屋に大きな音が響く。

ギュゥゥゥぐるぐるぐる

私は自分のお腹からすごい音が出て、
恥ずかしさに耳まで熱くなるのがわかる。

「やだ、恥ずかしい」

「昨晩から君は何も食べていないんだ。恥ずかしがる必要はない。ーーそうだ、近くに俺の行きつけのリストランテがあるんだ。そこに行って話をしようと思う。それでいいか?」

彼のようなギャングが行くリストランテって
高級な所なのだろうか。私そんなお金持ってきたっけ…
って思っていると、自分のカバンがないことに気がつく。

「あ…、あの」

「ん?なんだ」

「私のバッグは、公園に置いてきちゃったままですかね?」

「あぁ。それなら心配ない。君のバッグなら、隣の部屋にかけっぱなしだ…」

彼はそう言って、何もない壁の方に行き
そして、よく見えなかったが、
そこから一瞬で私のカバンを取り出した。

「!?」

一瞬壁に隙間が見えたような…
私はまじまじと壁を見ていたが、
視線を彼に戻す。

「え__なに?それは…」

彼の後ろに突然、変な人の形をしている
何か≠ェいる。
決して人と呼ぶには異様な謎のもので不気味そのもの。
青色と白色をした彼と同様に金色のジッパーが複数ついた
謎の物体がいる。

ヒィっ、う、動いた。
生きてるの?

いつからいたの?
そして、一体この生き物は何?

彼は私の反応を確かめるように声をかけてくる。

「やはり…スタンド≠ェ見えるようになっているようだな」

「スタンド=H それって一体…。」

ぎゅるるるるる
2回目のお腹からの主張。

「君は今、ひどく混乱している事だと思うが…とりあえずリストランテに行こう。必ず君に話す…。話さないといけない事柄だ。だからこそ、今はその質問はしまっておいてくれ」

彼がそう言うと、彼の背後にいた謎の生き物?スタンドは消えていた。
彼にバックを手渡され、彼と一緒に家を出た。





**********




*B&B… Bed and Breakfastの略、寝る場所と朝食を提供する個人か経営する宿泊施設である。ツインだと1泊€50〜100くらいで泊まれる。
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