ブチャラティ 長編夢

□2.Caso
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第1章「Caso」
Capitolo1《偶然 01》


ソフィア :side




ソフィアはある光景を目撃した。

夕暮れの公園。
昼間だったら、おそらくサッカーをして遊んでいる子ども達もこの時間には家に帰り母の手料理を食べているのだろう。
夕焼け色から深い夜色に変わる狭間の誰もいない公園に
年齢は若そうな、しかし目元には異様ともいえる深い隈が特徴の男が1人ポツンといた。

あまりにも目立つ男をつい注視してしまっていたが、
その男を何やら挙動がおかしかった。

その怪しげな男がどう言う訳か周囲を警戒してキョロキョロとしている。私からは少し離れている為わかりにくいが手には何か灯りを持っていた。

あれは、ライターだろうか。

ソフィアはその場に足を止め、
よく目を凝らしてみる。

震える右手には恐らくライターを持っている。そして、左手は火を消さないようにしているのかライターの火を守っている様子だ。

別にタバコをつける様子もなく火を消さないようにしている動作に不審に思う。


********

****


普段であればこの道は通らない。
今日は珍しく仕事が早く終わり、まだ日が落ちきる前に帰れることが決まった。こんな時、本来であれば翌日の仕事も着手する。私もそうしたい気持ちは山々だったが、先方の都合もあり、どうしても今日はやる事がなくなってしまったのだ。

昨晩出会ったギャングらしかぬ男、ブチャラティ さんの言葉に救われた私はいつもよりも成果が出せた気がする。

何となく気分を変えていつも通らない道から帰ることにした。

公園の横を通り抜ける時、
そこにいる男に目を奪われたのは

本当に偶然であった。

男の挙動に興味を持った私は、
木の陰に隠れつつ、
そっと様子を伺う。


火を消さないように気をつけていた男だったが、

「はっ、はっ、ハックションッ!!」

!?

なんと自分のくしゃみで火を消してしまった。
あんなにも気をつけていたのになんという落ち。

男はかなり慌正しく周囲をキョロキョロと見回し、
そして再びライターの火をつけた。

そもそも、なんで火を消さないようにしていたのかも分からない上、火をつけた男はフゥと安心したように一息をついた。

一体なんだったんだろうか。

ただの変人なのかも知れない。

私はその男から目を離そうとした、
その刹那。辺り一面の空気が変わるのを感じた。

何かが、

おかしい。


目の前の男は安心していた時の表情とは一変し、
なんとも言えない顔をしていた。
顔いっぱいに汗を浮かべ、
身体は固定されたようにピクリとも動かない。

そして、震える声で

「た、す、け、、、て」

と苦しそうな声を発した。

もしかしたら、体調が悪いのかも知れない。
心臓発作?

さすがに見ず知らずの人とは言え
放っておくことなんて出来ない。

私は彼の方に走る。

私が彼の元にたどり着く前に
男はドサッっと地面に崩れ落ちてしまう。

その刹那ー。


私の身体もその場で動けなくなった。

え・・・。

どうして


まるで金縛りにあったように動かない。
嫌な空気に包まれ、
すぐ目の前に何かの気配を感じる。

「……も、 ……さ 点火 …た… な…」

「……ンスをやろ… むか………、……つの道……」

何者かの声が、耳元でうっすらと聞こえた気がした。

あまりにも、断片的すぎて何を言っているのか分からない。
言葉にすらなっていない。

身体が一切動けないこの状態に、
思考が完全に働かない。

たす、 け、 

こんな時に昨夜出会ったブチャラティさんの顔が頭に浮かんだが、一瞬でかき消される。

鋭い痛み。激痛が身体も心も引き裂く。

痛みに支配され意識が遠のいていくのがわかる。
すぐ後ろに『死』が迫っているのを感じた。








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