護衛チーム短編夢

□maldestroー不器用
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「maldestroー不器用」

◆相手:ミスタ

_______________


ミスタ:side




… …

… …


「じゃあ私は任務に行ってくるね〜」

俺は名無しさんの声で振り向いた。
その瞬間、雷に打たれたような衝撃が走り
俺は開いた口が塞がらずそのまま半開きになる。

「ミスタ、どうしたの?ふふふ、いつもと違って見惚れちゃった?」

「……ッ!!お前ェ、その格好どうしたんだよ!!」

今の名無しさんは見たこともない美しいドレスに身を包んでいる。背中が見える大胆なデザインに、幾重にもレースが折り重なっている豪華なドレス。髪型も普段と違い上で結われうなじを惜しみなく晒している。

俺の視線は名無しさんの肌に食い込んだ。
言葉が出ない代わりに、唾をごくりと飲み込む。

「任務先がパーティーだから潜入で使うのよ。どう?似合う?」

彼女は俺の気も知らないで手でドレスの裾を持ち上げてくるりと回ってみせる。可憐な笑顔を浮かべて…。まるで花の女神のようだと思ってしまうが…、俺はこれ以上、見ていられなくなり視線を逸らしながら、感想を述べる。

「ドレスが綺麗でもよぉ〜ゴリラには似合わねぇな」

「誰がゴリラじゃ!!」

そう言う彼女はそばにあった置物を俺の方に投げる。
それをギリギリ交わしながら、

「あっぶね。おいおい、マジにゴリラを出してくんなよな〜」

「もうミスタなんか知らない。行ってくる。ちょっとはお世辞くらい言えるようにならないと女の子と付き合えないよ!!」

「俺は名無しさんと違って、すでにモテててるからいいんだよ」

「なんで、こんなデリカシーない男がモテるの。モテてるって言ってるけど……それ、絶対勘違いだからね!」

扉をバタンと閉める名無しさんの背中を見つめ
ため息を漏らす。

正直、普段と違う名無しさんにかなりビビっちまった。なんかああしてみると、本当に綺麗で……、俺の手の届かない場所に行ってしまいそうで怖くなる。

雑誌を捲るのに夢中で、てっきり名無しさんとのやり取りを見てなかったと思っていたが、ナランチャの奴はしっかりと見ていたらしい。
すっごい怪しむような目で俺に尋ねる。

「なぁミスタ。ミスタってさ〜名無しさんの事好きだろ?」

「は?好きじゃねぇし。言っただろ俺は巨乳のセクシーなお姉さんがいいんだよ……名無しさんは仲間だし女に見れねーっつーの。」

「ふ〜ん。じゃあさ、俺が名無しさんとデートしても文句言わねぇーよな?今日のドレス姿の名無しさんを見て思ったんだけどさ、改めてみるとスッゲェ可愛いなぁって思ったんだよね」

ナランチャの言葉に俺は開いた口が塞がらない。
デートだぁ??フザケンな!
俺だって本当は名無しさんとデートしたいし
改めて見るまでもなく名無しさんはスッゲェ可愛いんだよ!!

仲間だから関係崩したくねぇーから今まで
女性として敢えて接してなかったんじゃぁねーのか。

「言っておくけど、俺は認めねぇよ!仲間に対して、そんな関係は良くねぇだろ〜がよぉ!!」

「じゃあさ、仲間としてなら……名無しさんと二人っきりになってもいいだろ?」

「ダメだ!!」

「ちぇ〜。でも、他の男に取られるよりマシじゃねぇの?今夜任務とか言ってパーティー行くけどさ、絶対に告白されると思うぜ?」

俺はその言葉に完全に頭を鈍器で打ち付けられるような目眩を覚えた。そうだよな、あんなに可愛いんだ。無い方がおかしいよな。

「名無しさんをつけるなら、ドレスコードで行かないと怪しまれるよな」

「え。ミスタ、マジで?ガチで好きじゃんか名無しさんの事」

「ば〜か。好きじゃなくて、あのゴリラ女の被害者が出ねぇように見張りに行くんだよ」

俺はアジトのクローゼットから、潜入用のスーツに着替え愛銃を持ちながら勢いよく扉を出て行く。


… …

… …


ずっと見張っていたが、
名無しさんはパーティーに上手く潜入した後
上手く華麗に仕事を終えたようだった。


俺は仕事を終えた彼女に近づこうと
人並みをかき分けていると

いけ好かないハンサムな男が名無しさんに甘ったるい声をかける。声からしてもナルシスト野郎だってわかる。

「あぁ、僕はなんて幸運なんだ。天界では大変な事になっているだろうね。天使がこんなところに抜け出してくるなんて……」

そして片手で名無しさんの手の甲に口付け、
もう片方の手で彼女のか細い腰に回した。

アンニャロ〜!!ふざけんじゃねぇ。
俺は自然とズボンのポケットに入れている拳銃に手が伸びる。

「ごめんなさいね、私はそろそろ帰らなくてはいけなくて……」

「引き止めてしまってすまないね。今夜ダメなら別の機会にどうかな?これが連絡先さ、良かったら電話して?」

「ええ。是非、また別の日に会いましょう」

なんなんだよ、この甘い空気は。
俺は名無しさんに対しても信じられなくて唖然とした。
まんざらでも無いと言わんばかりの笑み。

名無しさんは男に言った言葉通り
パーティー会場を離れアジトの方に向かって歩く。
途中で先ほど男からもらった紙を眺めていた。

俺は容赦なくその紙に狙いを定め
ピストルズを打ち込む。

ドォオン

あまりの出来事に驚いた彼女は、一瞬飛び上がるが……
俺の姿を見てキッと睨みつけた。

「ミスタ……。流石に怒るよ?」

「お前、ああ言う甘いマスクの男が好みなのかよ」

「悪い?ミスタと違ってゴリラ扱いせずに天使扱いしてくれるんだよ?」

「俺はッ……!本当は……お前の事ゴリラだって思って無ぇーんだよ!てか、好きだ!」

「え?」

目を丸くする名無しさん。
あ〜余計な事言っちまった。
今まで関係崩さないように必死だったのに自分でヘマしちまった。だが、どうにでもなれ畜生ッ!!

「だからよぉ〜、俺はずっと前から、お前のことが好きだって言ってんだ」

俺が照れながらも、必死に言うと……。

「はぁああ??」

切れた。突然キレる事に俺は動揺する。

「俺の告白になんでキレるんだよ」

「ねぇ、ミスタってさ。童貞なの?」

「は?そんなんじゃね〜よ」

「好きな女にゴリラって言う?ねぇ、信じられないんだけど」

「悪かったよ。お前ェの事、素直に可愛いって言いたくても言ったらチームの中で変わっちまうだろ?俺もよくわかんねぇんだけどよ〜。なんかアイツらがいる前で可愛いとか名無しさんに言いたくねぇんだよ」

「ミスタが私に可愛いって言いたいとか……。これ、明日ハリケーンでも来るのかな。それとも、ドレスマジックかな?」

俺の態度の変化を、名無しさんはドレスを着たせいだと思ったらしい。

「い〜や違うね。言っておくが一度きりしか、言わねぇ。アジトに戻ったら絶対に言わねぇけどよぉ〜。ドレスを着た時に確かに綺麗で可愛いって思ったのは事実だ。だが、普段通りの名無しさんが一番、可愛いって俺は思ってるぜ」

「ふふふ、ミスタ……。ずっと言われたかったのが、ようやくだね……。」

「おい、どう言う意味だよ」

「ふふ、ミスタには教えない〜。そかそか、ミスタはずっと私の事が好きだったのか〜」

「ああ名無しさん!!調子に乗るんじゃねぇねェよな!!」



《maldestroー不器用》
…end
2019/08/18

【Request: ミスタ甘夢/本命に奥手&一途な話】


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