護衛チーム短編夢
□Mare doratoー黄金の海
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「Mare doratoー黄金の海」
◆相手:ブチャラティ
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名無しさん :side
朱色の細長い雲がゆったり流れている。
燃え盛る夕焼けが、
水平線にゆっくりと沈みこみ、その姿を小さくしていく。
西からの優しいオレンジの光が辺り一面を包み込み、ものの輪郭をどんどん濃くしていく。純白のドレスをひらめかせるように控えめに捲れ上がった波は何度もザパァン、……ザパァンという音を立てて、砂浜の砂を連れ去る。遠くの海面はこちらからでも眩しいくらいに、キラキラと黄金色を反射して揺らめいていた。
砂浜の上で私とブローノは一つの大きな影となっていた。
私はそっと……彼の肩にコトンと頭を持たれかけさせと、彼は決まって私の頭をよしよしと優しく撫でるのだ。
波が引いては返す音がだけが
耳に心地よく響き渡る。
しょっぱい潮風を受けながら、
水平線に日が沈んでいくのを眺めていると
どこかセンチメンタルな気持ちにさせる。
彼は忙しい人であり、デート回数だって決して多くないけれど……日が落ちかける頃によく夕闇に紛れて私達は逢瀬重ねた。
私は彼と、こうして寄り添いながら夕日を眺める事が好きだった。
気取ることもなく
自然体で彼を感じられた。
時折、海を眺める彼の目が水平線より向こうのどこか遠くを寂し気に見ている時がある。そう感じるのはきっと彼が父を思い出しているからだろう。
彼が辛いと感じても、
私には彼にそっと寄り添う事しか出来ない。
「………………」
「………………」
波の音だけの会話が続いていた。
そんな彼が、夕日を眺めたままポツリと唐突に呟いた。
「なぁ……名無しさん、俺と結婚してくれないか?」
突然言い放たれた結婚≠ニいう言葉に私は驚いて彼の顔をまじまじと見る。
彼は真っ直ぐな瞳で、
「俺は、君以外とは考えられないんだ。……こうして海を眺めている時、いつもきみとずっと一緒に居られたらと思ってしまうんだ」
夕焼けで黄色い光に照らされた彼の顔は、どことかく照れ臭そうだった。
彼は私に優しく問いかけた。
「君の気持ちを聞かせてくれないか?」
彼の青い海のような瞳に吸い込まれるように…私は震えた声で答える。
「私も……、ブローノとずっと一緒になりたいです」
気が付けば私は泣いていた。
嬉しくて嬉しくて、こんな幸せな事があっていいのかと思い泣いた。
彼は泣く私に、戸惑い気味に背中をさすってくれる。
「おいおい、どうして泣いているんだ?無理やり言わせた訳じゃ……ないよな……?」
「違うよっ、幸せすぎて。ブローノ……ありがとう。愛してる。ずっと一緒に居よう!」
「あぁ、ずっと一緒だ」
彼と私は心の底から幸福感に包まれた。
………
………
ブローノから名無しさんと婚約したと突然告げられたチームのみんなは雷に打たれたようにその場で固まった。そして、何が起きたか理解した瞬間に、まるで魔法でも解かれたように、私達に弾丸のような質問を浴びせた。
「言っておくが……、婚約を報告したのはお前達が名無しさんに手を出さないようにする為だ。自慢するためでも何でもない」
そう言い切るブローノに、今度はみんなの視線が私に向く。私も私で自慢げに話すことをしない、どちらかといえば、言わないと決めた事は何が何でも口を割らないタイプの人間である。その事はみんな知っている為か…
「私からも……言わないよ」
と伝えると、面白くないと言わんばかりだった。本人達を抜きにして、勝手な憶測が私とブローノの頭上を飛び交っていた。彼らの興味は、自分達のリーダーが一体どういうプロポーズをしたのか気になって仕方がないようだった。
「ブチャラティ がしそうなプロポーズだろ?高級リストランテの最上階で夜景を見ながらのプロポーズしたんじゃあないのか?」とか、「いや、違うと思うぜ。豪華クルーズ上でのプロポーズだったんじゃないか」「教会でプロポーズしたのかも知れない」って勝手に囃し立てていた。
散々あれやこれや並べた後、最終的にはまた私へ視線を飛ばし、
「結局のところ、どれが正解だったんだよ?」
と聞いてくる。ブローノに関しては、机の書類から頭を軽くこちらにあげ「お前ら
なぁ……。人の恋事情がそんなにも気になるものなのか?」と呆れ顔で言った後、すぐに仕事に視線を戻していた。
私はうーんと自慢げな笑みを浮かべて、
「どれも不正解だったけど、皆んながさっきあげた場所よりも、うーんと素敵なところだったって事は言っておくわっ」
「はぁー!今あげた場所よりいい場所思いつかないねぇよ!!」
あの場所以外に素敵な場所を
私は本当に知らない。
だってあの砂浜は、
彼が1番心を許してくれる場所なのだから。
《Mare doratoー黄金の海》
…end
2019/08/20
【Request: プロポーズされる夢】