護衛チーム短編夢
□Insensibileー鈍感
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「Insensibileー鈍感」
◆相手:ブチャラティ
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ブチャラティ :side
「絶対にこれで好きな人は振り向くと思うよ!!」
そう俺の目の前で意気込んでいるのは…
名無しさんという名前のチャーミングなシニョリーナだ。
俺はその言葉に飲んでいたカッフェをこぼしかける。
「名無しさん!?今なんと言ったんだ?」
俺は一瞬耳を疑った。
言葉の意味を理解できず走馬灯のように俺は数週間前の出来事を思い出す。
…
…
俺はこの名無しさんという名前の女性に一目惚れをした。
こんな事は今までになかった。
俺がたまたま普段行かないピッツェリアでピッツァを注文した時に…ちょうど彼女が目に入った。
元気よく、客にも愛想がよく楽しそうに働く彼女は輝いていて眩しかった。
彼女に会った瞬間に運命の女性だと感じた。
俺は彼女になんとか想いを伝えたくて、
そこのピッツェリアに通い
あれこれと、気がある事を匂わせようとした。
「Ciao, 名無しさん、今日も元気そうだね」
「Ciao ブチャラティさん!今日も来てくれたんですね!」
「ああ。ここのピッツェリアを気に入ってしまってね。ここには、元気で可愛いシニョリーナがいるからね。そのシニョリーナに会いに来たくて、つい…な」
「ありがとうございます!えっと、ミランナ目当てのお客さん多いんですよね!呼んで来ますね!!」
「お、おい。違うんだ」
「ミランナ〜ブチャラティさんからご指名!!」
「名無しさん、待ってくれ…違うんだ」
そうこんなこともあった。
他にもこんな事もあったな。
「名無しさん…君は今付き合っていたりするのかい?」
「え、私ですか?私は今は誰とも付き合ってませんね」
「好きな男はいたりするのか?」
「ええと…う〜ん、いません!」
そういう彼女はきっぱりと言う。隠している様子も恥じらう様子もない事から実際にいないのだろう。
これはラッキーだと俺は素直に思った。
「例えば…そうだな。俺みたいな男の事はどう思う?」
「え、ブチャラティさんみたいな人ですか!!そうですね、素敵だと思います!街の人にも信頼されているし、かっこいいですし、優しいですしね…と言ってもまだ、全然知らないのでもっと知りたいですね」
「じゃあ、敬語じゃなくて、もう少し気軽に俺と話さないか?もう少し俺の事を知ってもらいたいんだ」
そう、俺はこのやり取りで…
彼女も俺に気があるんじゃないかって思ったんだ。
俺の想いも少しは伝わったんじゃないかって。
現にその日以来、結構よく話すようになった。
敬語も取れて自然と会話も弾む。
名無しさんとこうしてピッツェリアで話している時だけ、
俺は自分がギャングではなく一人の男でいられた。
ふと彼女の誕生日が近い事を思い出す。
彼女に何か贈り物をしたいと思うが…困った問題が出てくる。本人に聞いてしまった方が早い…か。
聞くかどうか迷った俺は結局彼女に聞く事にした。
「名無しさん…俺は実は、自分から女性を好きになるという経験がなくて…贈り物はどういうものがいいのかわからないんだ。名無しさんは何をもらったら嬉しいか教えてもらってもいいか?」
彼女は少し考えた後…
「えっと…何をもらったら嬉しいかだよね。うーん…、私はそうだなぁ…花とアクセサリーとかかなぁ…」
「なるほど…。アクセサリーと言っても、女性はこだわりが強かったりするだろう?俺のセンスで買ってしまったら、これじゃないっていう事になったりしないか?」
「確かに…よし!明日私は休日だから、私も一緒にお店に探しに行く!ブチャラティ…それでもいい?」
サプライズとして贈りたかったが、
どうやら俺の趣味で選んで買ってくるより本人が一緒に行った方が確かに早いし喜んでもらえるならそれが一番だ。
「ああ、勿論だ」
こうして一緒にデートをする事になった。
アクセサリー屋で色々と見ている時、
彼女は驚いた顔をする。
ガラス越しのネックレスなどを見て小声で俺に言う。
「やっぱり結構するね。ひゃ〜高い」
「値段なんか気にするな。俺は喜んでもらえたらそれでいいんだからな」
「かっこいい!さすがモテる男は違うね!」
「…フッ。嬉しい事を言ってくれるな…。どれがいい?」
「えっと…このピンク色の宝石が付いているやつが、めちゃくちゃ可愛いと思う」
「宝石はこんな小さくていいのか?右側のは大きいが…」
「デザイン的に絶対こっちの方が可愛いし、女性はあんまり露骨に大きければいいってのは好きじゃない人の方が多いよ」
露骨に大きければいいってのは好きじゃない…か。
なぜかこの時、この言葉から連想されたものが、
こんな昼間から想像するような事じゃない事を想像してしまい、なんとか頭の中から想像を追い出した。
どうかしているな…。
こうして俺はピンクダイヤモンドがついたネックレスを購入した。
「他にこれはあった方が嬉しいってものはないかい?」
「そうだな〜。花は当日だもんね…。あとは、チョコレートなんていいかも!人気店のチョコレートって自分では買わないからこう言う機会じゃないと食べれない気がする」
チョコレートか。甘いものが好きな女性は多いが、名無しさんも例外ではないらしい。
「確か最近できた、オシャレなチョコレート店があったな。そこに行こう」
…
…
買い物が終わり、俺たちはバールで休憩をしていた。
名無しさんと俺はカッフェを頼み、味わっていた。
空いた隣の席に今日買ったものを置く。
それを愛おしげに見つめる彼女は、
「こんなに想われて幸せだね…」
と一言こぼす。その言葉に胸が熱くなる。
「幸せを感じ取ってもらえる事が…俺にとって、一番の幸せなんだ」
そう言うと名無しさんは、可愛らしい俺を魅了してやまないその笑顔で衝撃的な言葉を放つ。
「絶対にこれで好きな人は振り向くと思うよ!!」
彼女の言葉に俺は、カッフェを危うくこぼしかけた。
「名無しさん!?今なんと言ったんだ?」
俺の止まっていた時間が、ようやく動き出した。
が、それでも俺の脳内はフリーズしたままだ。
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