護衛チーム短編夢

□Rispetto e differenzaー憧れとの違い
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「Rispetto e differenzaー憧れとの違い」

※憧れのイタリア語はdesiderio intenso。ただ強烈すぎる欲望のイメージになってニュアンスが違ってきてしまうので、憧れを尊敬の単語であるRispettoにしました。

◆相手:ブチャラティ
_______________



名無しさん :side






私の突然の告白に対して、
一瞬驚いた様子の彼だったが、
何か考えこむように黙っている。

しばらくの沈黙の後、
彼は深いため息をついた。

「ハァ…名無しさん。恋と憧れの違いはわかるか?」

そんな事をブチャラティさんから言われた時、
私は動揺し言葉が出なかった。
部屋のレコードから流れている
音楽が一瞬止まったかのような…
そんな思い違いをする程、
彼から発っせられた言葉に衝撃を受けた。

重苦しそうに話を続けるブチャラティさん。

「名無しさん…。お前からの告白は嬉しいんだが、お前から見ると…俺は頼れるリーダーなのだろう。だが、それは恋と果たして言えるものなのか…俺のようになりたいというお前の日頃の発言を聞く限り、それは恋とは別のもののように感じる…。」

ブチャラティさんは、
酷く真剣な表情で私の瞳の中を見つめる。

彼からしてみれば、私は犬のように周りを走り回っている
忠実な部下。ただそれだけなのだろう。
私の告白に、彼は冷静にそう問いかける。

「私のこの気持ちは…憧れじゃなくて…本当に恋なんです!
確かに私は普段、ブチャラティさんのようになりたいって思ってます。憧れている気持ちはあります!でも、それだけじゃないんです…」

私が必死に言うと、ブチャラティさんは
椅子から離れ、私に詰め寄った。
私は彼とぶつからないように後ずさるが
彼は足を一向に止めない。
背中がピタッと冷たい壁にへっつく。

もう、逃げられない。

「それだけじゃないって言うんなら、他に何があるんだ?なァ…言ってみろ」

そう言うブチャラティさんの様子は普段とは
全く違うので、私は目を泳がせ怯える。
でも、ブチャラティさんは許してくれる気もないのか、
私の顎をぐいっと掴み…

「俺から目をそらすな…」

彼の目は獣のような、
普段優しくて冷静な彼とは全く違う
獰猛さを感じた。

唇が触れるか、触れないかまで顔を近づける。
私はキスされると思いぎゅっと目を瞑る。

… …

が、

何もされない。

顎を離す感触があり、
目をゆっくりと開けると…
ブチャラティさんはさっきまで座っていた椅子の方に
もうすでに戻っていた。

「名無しさん…今のお前の反応で十分に分かった。恋愛ごっこなら…他所でやれ」

そう言って、書類に目を通すブチャラティさん。
口調も普段通りに戻っているが、
いつもより冷たい。

私はッ…
普段と違ったブチャラティさんに、
困ってしまった。
どうすればいいのか分からなくて、
頭がぐちゃぐちゃになってしまっていた。

私はきっと、まだ本当に恋≠ワでは
行っていないのかも知れない。
…彼が言うように、私がブチャラティさんの事を好きだって
気持ちは憧れなのかな?

分からない。

私は悔しさに唇を噛み締め、

「今日は…出直します。でもまだ…諦めませんから!!」

私はそう言って、勢いよく扉を閉めた。


******

******



ブチャラティ :side




閉まった扉。その奥の椅子に腰掛けている
先ほどよりもっと深いため息をつく男がいた。

「…、…。危なかったな」

思わずポロリ本音が俺以外いない空間に溢れ落ちた。

名無しさんと違って、俺のそれは…
どうしようもない感情なんだ。

恋ってやつは…
憧れだとかそんな綺麗で真っ白な感情ではなくて、
黒く欲望まみれでドロドロとした感情だと
俺自身がよく分かっている。

いつか、この関係が壊れてしまうのが
何よりも怖いんだ。

《Rispetto e differenzaー憧れとの違い》
…end
2019/05/23

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