護衛チーム短編夢

□ciliegioー桜
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「cilifgioー桜」

◆相手:ブチャラティ

_______________



名無しさん:side




桜が咲いている場所が
イタリアにもあるなんて
知らなかった。

私とブローノが来た場所はエウローパという場所。
ローマは35の地域群からなっており、
その32番目に位置する(通称:エウル地区 E.U.R)
そこには、かつて日本から送られた数千本もの桜の木が植えてあり“日本の散歩道”(Passeggiata del Giappone)という名称で呼ばれているお花見スポットがある。

「遠く離れた故郷を少しでも思い出せたらいいんだが…」

彼のそんな優しさに胸が熱くなった。

「ありがとうブローノ。桜…本当に久しぶりに見た気がする」

イタリアの景色は、イタリアの景色で凄く好きだけど…こうして故郷の桜を見ると日本にいた時や日本の情景を思い出す。

「名無しさんは…やっぱり故郷に帰りたいと思ったりはしないのか?」

ブローノは私をマジマジと見つめる。

「たまには帰りたいって思うけど…やっぱり住むとこはここイタリアって決めてたから。それにブローノの側がいいの」

「嬉しい事を言ってくれるじゃあないか」

「ふふっ」

彼の少し照れたような表情が、とても可愛らしく思う。

「Giappone、俺もいつか名無しさんの故郷に一度は訪れてみたいもんだ」

彼と一緒に日本の観光地を巡るのも悪くないのかも知れない。ふと想像してみる。きっと観光地では着物も借りられる。ブローノが着物に身を包んでいる事を想像すると本当に似合いそうだった。

「ふふ、きっとブローノは浴衣が似合うんじゃないかな」

「浴衣?」

「着物の一種よ。ブローノは髪も黒いし髪型的にも、きっとGiapponeの伝統ある服も似合うと思う」

「着物…あぁ、着物は写真で見たことがある。名無しさんも着たりするのか?」

「普段から着るものではないけれど、着る時は勿論あったよ。イタリアに来てからは勿論ないけどね」

「着物や浴衣姿の名無しさんか。それは、さぞかし美しいんだろうな。俺も名無しさんの浴衣姿をぜひ見て見たいな…」

こんな風に恥ずかしい事をさらっと言ってしまう所は、
ブローノもイタリア人なんだとしみじみと思う。

桜の花びらが美しく舞い、
春の優しい風に包まれる。
桜並木を彼と歩いていると私自身や彼がギャングだという事をうっかり忘れてしまいそうになる。

きっとこんな平穏な日常を送れるのは永遠じゃない。

いつ命をお互い落とすかはわからない。
桜が咲いている季節はすぐに過ぎ去ってしまい、桜が散るように、私達だって命を散らせるのは一瞬なのだろう。

「…どうしたんだ?」

私が急に顔を曇らせたので、
ブローノは心配だという表情を浮かべた。私は慌てて誤魔化す。

「桜…ずっと咲いていればいいのになぁって」

「これは、あくまで俺の考えだが…ずっと咲かないからこそ、こんなにも綺麗なんじゃないか?」

「?」

「ずっと咲いていたら、いつでも見れるが、またここにこうして来る事そのものが特別ではなくなってしまう気がするんだ…。」

「なるほど…そういうの確かに分かるかも」

彼の言うように、桜が年中咲いていたら、そこまで見に来る事に特別感がなくなってしまう。
いつ散るか分からない命だからこそ、こうして彼と桜を見に来たというのはより強い思い出になるのかも知れない…。

「そこの若いお二人さん!お嬢さんにピッタリのアクセサリーがあるんだ。どうだい?買っていかないかい?」

露店をしていた おじさんに声をかけられる。「少しだけ見ていかないか?」ブローノは私の手を引き露天商の前まで来てみた。

「綺麗…」

桜を象った美しいピンクのアクセサリー。
簪から、指輪、ネックレスまで色々なものがある。どれもうまく桜をイメージしたもので、派手過ぎず地味過ぎず綺麗だった。

「お嬢さんジャッポーネゼかい?」

「ええ。でもこっちに住んでいるから…桜を見たのは本当に久しぶりで」

「そうかい。それで彼氏連れて見に来たって訳かい。どうだい彼氏さん、彼女に1つ買うってのは…」

「そうだな…名無しさん、欲しいものはあるかい?」

「これなんか、どうだろうか」

彼が手にしたのはガラス細工の桜が美しくあしらわれた簪だった。

「私に似合うかな?」

「なんなら、つけて見てもいいよ!」

店の人に言われ、彼も私の髪にそっと簪をさしてみる。

「差し方は合っているだろうか?」

私は彼が差した場所に手を伸ばし確認してみる。多分合っている。

「大丈夫。どうかな?似合ってる?」

「あぁ。本当によく似合っている」

彼があまりにも真っ直ぐ言うものだから顔が赤くなるのが自分でも分かるほどだ。ブローノは店の人に支払いをし、私に他に欲しいものはないかい?と聞く。

「ブローノ、ありがとう。この簪は十分過ぎるほどよ!大切にするわ…」

この簪も…あなたとこうして訪れた思い出も。




******

****


「お前ェら、俺と名無しさんがいない間に問題は起こしていないだろうな?」

アジトの扉をブローノが勢いよく開ける。
目に飛び込んでいる光景は、相変わらずで…

フーゴとナランチャは取っ組み合いをしている途中で、
ミスタはセックスピストルズたちと揉めている。
アバッキオに関しては我関さずと言った感じで…

「おい、ブチャラティどこに行ってたんだよ」

ナランチャがフーゴにナイフを構えるのをやめて、
ブローノに聞く。

「桜を見に行っていたんだ」

「ハァ〜ズリィよ。俺も見たかったよ〜」

ナランチャが私を羨ましげな目で見る。
ミスタもミスタで

「俺も桜見たかったぜ」

「お前たちが桜を見たいのは驚きだな。花より団子ってたまだろ」

「花より団子?」

「名無しさんが教えてくれた、Giapponeのことわざだ。花をながめて目を楽しませるより、団子を食べて食欲を満たす方がいいって意味だ」

「まぁ、確かに花見るよりも普通に食いもんだよなぁ〜」

これには納得したように頷く4人。

「名無しさんがお前たちにって買ってきたもんだ。名無しさんにせいぜい感謝するんだな」


こうしてやっぱり、花より団子なミスタやナランチャやフーゴやアバッキオは私が買った、桜餅を満足そうに平らげていた。

《ciliegioー桜》
…end
2019/04/05.

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