ロー長編連載夢

□20シャボンディ諸島にて08
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見つかってしまった。


「おい…何してるんだ?」

そう声をかけるペンギンさんは、
少し怖い声だった。

「あ…その…」

「誤摩化しても、顔に悪い事してるって書いてあるが…」

「え、ぁ…そんな書いてある訳がないですっ!!」

そう言うと、ますます
胡散臭そうな空気になってしまい
誤摩化す様に首を振る。

「なんでもないんです、あの、違うんです」

「手に持ってるもんは何だ…?」

「あ…これは…」

何故かこうゆう時に限って
上手い言葉が見つからず…

冷静に言葉を繕えなかったのが情けない。

「はぁ…。やっぱり何かあったんだろ?そして、まだ何かを隠してるってのは分かった。あの話だけじゃ…ないんだろ?」

ペンギンさんには、
完全に見破られていたようだった。
あの話が全てではない事が…。

「独りで抱え込むより、言った方が楽になるんじゃないか?一体、何があった。あの屋敷で…」

声が震える。

誤摩化しきれない。

ペンギンさんに言ってしまおうか?

抱えられない程の大きな心のわだかまり。
それを言ってしまえば肩の荷が軽くなるのかも知れない。

でも言ったら…

もし言ってしまったら…

もう、私は…戻ってこれないんじゃないかな…。

偽物なんかじゃなくて
あの薬が本物なら

私は…ッ。



「船長には…絶対に言わないと約束する。それでも…言えないか?もちろん船長以外のみんなにも言わない」

そういうペンギンさんは
怯える私の頭をぽんっと撫でてくれた。


私にはこの秘密を独りで
抱え込み、それを守れる程
強くなかった。


懺悔。


ぽつりと罪を
口から吐き出して行く

一つ一つ
言葉にしていく内に
肩の荷物が一つ一つ下りて行く。

全部は下ろせる訳がない。

それでも…こうしてペンギンさんに
話す事で救われた。


話し終わるまでペンギンさんは、
私を咎めの言葉を一言も言わずに
聞いてくれていた。

ペンギンさんが放った第一声は…

「とにかくこの薬を確かめてみよう」

だった。


……

………


俺はラミアから聞いた話は
想像を遥かに越えた予想以上の話だった。

何か隠しているというのは
態度で何となく分かっていた。

だが、まさか…

吸血鬼から人間に戻れるかも知れない薬

そんな薬が存在し、
それを吸血鬼がラミアに渡しただなんて…
あまりにも予想以上の話だった。

ラミアが望んでいる事は
おそらく…人間に戻るという願望よりも
ロー船長と一緒に居たいというのが
第一になっているのだろう。

人間に戻ってしまっては…
確かにここに居る必要はなくなってしまう。

そう考えたからこそ
この薬をどうするか迷い
結論を導き出せないまま…

本物かどうかを
調べに来たのだろう。

もし…本物だったら…

たとえ
本物でラミアが
これを飲み人間に戻っても…
ロー船長はもう、ラミアを手放したくないはずだ。

ラミアはラミアで…
人間に戻ってもロー船長の傍に居たいと思っているのだから何も問題がないように思えるが…。

…いや、そう簡単には行かないか。

ロー船長もラミアも恋愛に関して不器用だ。

本物だとしても、すぐに飲んで結論を焦るよりは
タイミングを見計らう必要がありそうだな。

そして…この薬が本物かどうか分からない。
まずは…

「とにかくこの薬を確かめてみよう」

この結論に至ったのであった。


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