ロー長編連載夢

□19シャボンディ諸島にて07
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……

……


結局、
船までみんなで警戒して歩いたものの
あの“Blood Wood“は本人が宣言した通り
姿を現さなかった。

船にようやくつき、
甲板まで来たところで

ガクンと足が崩れ
座りこんでしまった。

戻ってきた安心感で
なんだか力が一気に抜けてしまったのかも
知れない。

すぐに立てると思っていたのに、

立とうと何度も試みるが、
どうしても立てない。

気がつけば
足はガクガクと震え…

今更になって…
すごい恐怖心が戻ってきたのだった。


立てない私を船長は
何も言わず抱え上げ、
自室のベッドまで運んでくれた。

自室のベッドに寝かされるも、
心臓の鼓動が早く…
不規則だった。
正直、またすぐにでも
“あの男“が現れるんじゃないかと
不安になっていた。

船長は相変わらず無言のまま、
ベッドの横に椅子をもってきて、
ガタンと腰かけた。

私はベッドの上で
ゆっくりと身を起こす。





静寂。


予想以上に気まずい雰囲気。
何より罪悪感が溜まり
言葉を紡ごうにも…

何も言えない。


船を抜け出すという勝手な真似をした罪悪感。

結局、みんなを巻き込んでしまった罪悪感。

そして、何より…

今もつなぎの懐に隠している

あの男にもらった薬の事を話せない罪悪感。

罪悪感がつもりに
積もって何も言えず、

押しつぶされそうだった。


俯く私に、船長が声をかけてきた。


「あいつに何かされたんじゃねェか?」

首を振ると…

「そうか…」

と言った後、一度溜め息をつき再び私を
しっかり見据え口を開いた。

「船に戻ったら問いつめると言ったが…、今日は、とりあえず寝ておけ。俺は部屋に戻ると言いたい所だが…この場を離れる訳には行かねェな」

「でも、そんな…私なんかの為に船長がそこまでしなくてもッ!」

「あいつはしばらく現れねェとは言ったが、信用できねェ…今晩だけは見張らせてもらう」

私は消え入りそうな声で…

「船長…ごめんなさい」

とだけ言い、
そっと目を閉じ横になった。

横を見ると
船長は腕を組み目を瞑ったまま座っていた。
私の視線を感じたのか、
目を開き…こちらを見る。

目線が交差し、なんだか気まづくなり…
慌てて天井の方を見て目を瞑る。


「…ふッ、相変わらずだな。明日…っつても、もう今日か…目を覚ましたら、改めて話を聞かせてもらうからな」

「はい…」


それを最後に聞き、
私は眠る事にした。

本来なら目が冴えている夜中だけれど…
緊張が緩み…眠気が襲う。

船長がいる安心感に包まれながら
私は眠気に身を任せた。


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