ロー長編連載夢
□02医者と貧血者
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そう…相手は海賊。
簡単に助けてもらえるなんて思っていない。
そして、この【病】は
【病】が【病】だけに
そんな簡単に治せる代物ではない。
それでも、1ミリの期待をかけて、
この船に乗り込んでみた。
それは決して計画的ではなく、
未来が見えない、衝動的な行動であった。
何の準備もしていない。
自暴自棄な行動とも言える。
今できる事はひとつ。
「どうしたら診てもらえますか?その為なら何だってします」
私は頭を下げながら聞く。
「逆に…お前に何が出来る。“病人”なんだろ?」
「…ッ!!」
「ついでに聞くが…シャボンティ諸島にも病院はあったはずだ。なぜ、そこに行かず俺の船に潜りこむなんて危険を冒す必要があった?」
「……ぅ。病が特殊すぎて…医者も手をあますようなもので…色々な島を航海して色々な病をみてきたこの海賊団なら…私の特殊な病をなんとかできるんじゃないかって思って」
私のその言葉に目の前の男は顔をしかめた。
そして、その後ろで静かに成り行きを聞いていた
PENGUINと書かれた帽子の男とエメラルド色の帽子にサングラスをかけた男がたじろぎ顔を見合わせていた。
「…仕方ねぇ…どんな症状か言え。」
男の言葉に期待が生まれる。
「診てくれる気に…!?」
「勘違いするな。こちらとしても把握しておかねぇと面倒事になるからだ。」
確かに、特殊な病って言い方はまずかった気がする。
感染病とか、思われてるのかも知れない。
新種のウイルスを船に持ち込まれたと判断したのだろうか?
「俺は外科医だ。内科の専門じゃねぇが…聞いていくしかねぇ…か。どんな特殊な症状がある?それは、いつからだ?」
「発熱とか痛みとか、咳とか…そんな症状は一切ないんですけど…数年前から…体温が下がって、身体は色白くなったのに運動神経だけはよくなって…昼の直射日光が苦手に」
その言葉に、男は自分のあごひげを触り考え込んでいた。
そして、私は声を出す程に喉が渇いている事を思い出した。
喉がカラカラ。
また、嫌な焦燥感に襲われる。
そういえば、ずっと喉を潤していない。
喉の乾きだけは最高潮に達していた。
拘束されたこの状態でいっても聞いてもらえないかも知れないけど、どうしても言いたかった。
「あの…どうしても喉がかわいたので水を頂けませんか?」
私がそう乞うような目を向けると、
男はサングラスの男をそばに呼んで、なにやら小声で命令していた。
言われた男は「えぇえ?」と驚いた声をあげるが、船長命令だった為かしぶしぶ部屋をでていった。
そして、私を観察する様にじっと見ていた。
いや、じっと診ていた。
一体この男は何を考えているんだろう?
目だけを合わせない様にして、水がくるのをひたすら待った。
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