ハート短編夢

□ホットチョコレート
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「ホットチョコレート」

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私達ハートの海賊団は
とある島に停泊をしていた。

この島には、海軍がいないという珍しい島。
海賊達相手に商売をする事で成り立っているという
なんともおかしな島である。

よくも野蛮な海賊相手に商売できるものかと
疑問に思っていた私達だったが…

話によると、この島の住民が常日頃から
戦闘訓練しているとの事で…
もはや住民が戦闘に長けている為、
平気だとか、何とやら。

それに加えて…

いや、むしろこちらが大きいのだろうけれど、
甘いもの好きと評判が高い
4皇の1人「ビッグ・マム」のお眼鏡に叶い
ビッグ・マムの旗に守られている為…
なかなか手を出せないでいるのかも知れない。


さらに不思議な事に
2月14日に
女性が好きな男性にチョコレートを渡して
告白をするという風習があるとの事。
「チョコレートを貰う」という事は=告白という
流れがあるので、ある意味…
告白しやすいのかも知れない。


私達が停泊したのが2月13日
1日早いものの…
ちょうど町中がチョコレートの甘ったるい匂いで
溢れ返っていた。





「おいおい、こんな強い匂いじゃ…何食ってもチョコの味しかしねェな…」

船長がそんな事をぼやきながら、
黙々とご飯を口に運んでいた。

眉間によせた皺が…
不満さを物語っていた。

「確かに時期がまずかったッスね〜!でも、俺はいい風習だと思います!だって、女の子が好きな男にチョコをもって告白って…なんかロマンが!」

熱弁するシャチさんにペンギンさんが
すかさず冷や水を浴びせる。

「シャチ…。お前…何か期待してるだろ?言っておくが、期待するだけ…告白されなかった時のショックはでかいぞ?」

「ペンギーン!お前だって、本当は期待してんだろ!」

「期待はしてないが…。風習としてはいいんじゃないか?」

「はっは〜ん。冷静ぶっても顔には…女の子からチョコもらいたいって顔に書いてあるぞ!!」

「!!?」

そんなやりとりを、
少し微笑ましそうにみながら


「はっ、くだらねェな…」


とぼやく船長に思わずドキッとする。

私は、この仲間思いで
クールに見えて実は熱い船長が…
たまらなく好きだった。


好きというこの気持ちは、
仲間としてだけではない事に
自分自身で気づいたのは

つい、最近の事で…。

今まで恋愛というものを本の上で
読み聞きした程度で、
実際にこのもやもやした気持ちを
どうすればいいのか分からないままでいた。

今まで船長の事をカッコイイと思っていたのだけど、
それはあくまで仲間を守ってくれる船長としてで、
異性として意識して見た事なんてなかった。

こうやって、近くで見ると…

船長の顔、ゴツゴツした手…
無造作にはねた毛…
細い脚と腰、それでいて筋肉がある所とか…

やだ…全て、かっこいい。


「名無しさん、お前はどうだ?」

「あ、あっ」

突然、船長に話をふられて、
あまりにも動揺してしまった。

意識しすぎてしまう。

恋心を自覚する前は普通に反応できたのに!
それでもなんとか、平静を繕う。

船長に合わせるかどうか迷ったものの、
なんだか、恋をしている女の子を応援したいという
気持ちもあって…。


「私はいいと思いますよ!女の子がチョコを渡して告白するなんて風習素敵じゃないですか!」

「…そうか。まぁ、考えてみりゃ、お前が好きそうな風習だったな」

「はい!甘い物も大好きなので!」

そこにシャチさんが少しいじけたような表情で…

「船長こそ、この島で女の子からチョコを貰い過ぎて大変な事になるんじゃないッスか?貰ったら、一個くらい分けて欲しいんスけど…」

「それでいいのかよ!」

ペンギンさんのナイス突っ込みが入る。

「あー。メスの熊からチョコもらえないかなー」

「「「いねェーよ!!」」」

これには、船長をのぞく全員が突っこんだ。

周りのみんなを見ると…どこかこう…
そわそわしているような…。

島の女の人から貰えたりする事を期待している
様子だった。


そして、船長が…女の子からチョコを貰う…かあ…。

そりゃあ船長あんなにもカッコイイんだもん。
貰えない訳がないよね…。

モテモテ船長はいつもの事だもん。

でも…

なんだろう。

なんか、やだな…。

甘い香りが漂う食堂の中で
何故か取り残された気分になった。

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