ハート短編夢

□迎春の幸せ者
2ページ/3ページ


……

………


外は活気に満ちあふれていた。
まだ朝早くなのに、車は多く走っていた。

彼の運転する車の助手席に私は座っていた。
車の中のクッションはモコモコしていて…
さながらトトロに出て来る猫バスを
彷彿させた。
またBGMにはジャズが流れていて
お洒落な感じ。

「さすがに…道こんでんな…。」

ハンドルを回すローさん。
車を運転しているところもカッコイイなんて…
ずるいなぁ…イケメンは。

そう思いながらも…見ていると、
不意に目があう。


「おい、何みてんだよ…。」

「え…あ…、なんか新鮮だなぁって…。」

「確かに車に乗せたのは初めてだったよな」

「うん」

「寒かったりしねェか?」

「大丈夫、全然寒くないよ。」

むしろ熱い位。
緊張で、勝手に身体が熱くなっていた。


田舎の景色が広がって行く。

町中でデートするのもいいけれど
こうした落ち着いた場所で
二人っきりというのもいいなぁ…。

田舎道は思った以上に対向車とすれ違うのが困難で…

「ッ…!ここで来るか?」

と珍しく困り顔のローを見れた。


ふと…車がオートマ車ではなく
ミッション車であると気づく。

「そういえば…ローはオートマじゃないんだね」

「ああ。ミッションでとった。」

「ミッションだと…エンスト起こして大変だよね。私なんて…交差点の真ん中でエンストおこして車とまっちゃって…。」

「俺がそんなヘマすると思うか?っていうよりお前もミッションでとったのか…よくとれたな。疑わしい。」

「ひ、ひどい…。確かにドジだけど…なんとか…。」


私達は途中でコンビニに寄ったり
しながら長い道のりを車で行く。

ナビが途中で仕事を放棄しかけたものの

それでもなんとか目的地の場所にたどり着く。
山奥にある有名な温泉。

この温泉には、色々な設備もあり
何より露天風呂が広くて素敵。


「…混浴だったら良かったのになァ?」

「うん…本当にね…。」

「混浴が良かったって…お前…相当な変態だな…。」


はっ!?


のせられた!?


「ロー、ローだってそうでしょ!?」

「ああ、いい女の裸みてェからな…。」


ひっどい!
いや、わかるけど、
いや、確かに分かるよ。私もいい女の裸みたいもん。


「ひどいー。ローの変態ーー!!浮気者!!」

「別にいい女の裸みてェって言っただけで、お前以外の女の裸が見たいって言ってる訳じゃねェだろ?」

「それって…どうゆう…。」

「自分で考えろ。ほら、行くぞ。」

っと言われて、なぜか理不尽にも
頭にデコピンされた。

温泉の受付を前にして、ふと気づく。

「ロー、あの…温泉ってタトゥー無理じゃ…。」

「あ?この温泉は入墨あっても問題ねェってあったからここにした。」

あら、事前チェックも万全。

受付を済ませているローは
どこか少年っぽい。
目がいつもよりキラキラしている。

考えてみれば、彼は
寒い地方の出身。だからこそ
暖かい温泉なんか好きなんだろうなぁと
変に納得する。

あんな引き締まった身体で
温泉に漬かって、気持ち良さそうにしているロー。

見たかった。

見たかった。

そんなローが見たかった。

「混浴…見たかったなぁ〜残念。」

気づいたら、願望が口に出ていて
慌てる。


「お前…どんだけ見たいんだよ…。」

って呆れ笑いをされてしまった。


「しかし、人が多いな。」

「みんな、考える事は一緒って事だね。」

新年早々の温泉。
人は…とにかく多い。
有名な温泉の為、私達みたいに遠くからでも
人が集まってくるんだろうなぁ。

たくさんの人が温泉から上がり寝そべっている空間があった。

「1時間半後にここで集合で…。」

その言葉と共に、男湯の暖簾の向こうに姿を消すロー。
混浴じゃないのが、惜しいと思いつつも、
私も久しぶりの温泉にテンションはあがる。



……

……


新年早々、温泉とは…
なんとも雅ですなぁ。
露天風呂に漬かり贅沢な時間を楽しむ。

きっとローも…日頃の疲れを癒しリラックスしているんだろうなぁって思い、胸がほくほくする。

色々な設備の温泉を乗り継いで乗り継いで…

気がつけば時間もかなりたっていた。


風呂からあがり、
服OK 髪OK 化粧OK。
身支度を整え。
集合場所に到着。

集合場所は畳が敷いてあり
丸くて大きい低反発クッションが何個も散らばっていた。そこに身を埋める。

やばい、気持ちがいい。

お風呂あがりの幸せな気持ちのまま
仰向けになり目を瞑る。
しばらくそうしている内に眠気が襲う。

するとすぐ隣に誰かがクッションの上に寝転んできた。

「ん?」

そして横を見ると…ローが…。

「わ…っ、ロー!」

突然の彼に驚き起き上がる。
するとがしっと彼の腕に捕まり、
またクッションに引き戻されてしまう。

「ロー?」

「名無しさん…しばらくここで、こうしてたい。」

「うん。しばらく、ゆっくりしよっか。」

こうして…ローと二人並んで
温泉の余韻に浸る。

寝転がるローは自然と私の手に手を重ねる。


なんか…いいな。

こうして好きな人と一緒に寝転んで
温泉を出た後の余韻に漬かるなんて。

確かな幸せを感じる。

あったかい。


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ