ハート短編夢

□別れを告げる
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彼からの着信は0…
スキーは山の方だし、電波が悪くて
かからないだけかも知れない。

それでも、私は彼から連絡がある事を
どこか期待して…。
そっと待っていた。

きっと今頃楽しくみんなでスキーをしているのかな。

そんな事を思いながらも…
仕事をこなしていく。

恋人が楽しそうに羽を伸ばしに
行っているのに…

素直に喜べない自分が…なんか、嫌だな。

駄目だ、考えないでおこう。
考えると悪い想像しか出てこないや。

今は仕事に集中して全てを忘れよう。

……

………


仕事が終わる頃には、すっかり外は暗く。
自宅への道がやけに寒く感じる。
道沿いの飲み屋で楽しそうな声ばかり
耳が拾って来る。

年が明け、寒さが弱まると思ったのだけれど、
1月末の今もずっと空気は冷たいままで…
むしろ12月末より寒い気がした。

白い息も凍るんじゃないか?ってほどに…。

そして心も凍ったように
重くて冷たかった。

自宅につき、部屋の電気をつけたというのに…
心は明るくならず…。

孤独感は増す。

テレビをつけてみると…
旅行特集なんてやっていて…。

よりスキー旅行に行っている彼を思い出してしまうので
テレビを消した…。

が…

再びつけて、別の番組に切り替える。
音がない事があまりにも淋しかったから…。

しばらく、呆然と携帯の着信を待っていても
虚しさが込み上げて来る。

こんな時は早く寝てしまおう。
寝る準備だけ済ませて
ベッドに寝転ぶと…

〜♬〜〜♬


着信音が鳴り響く。


「は、はい!!」

「…名無しさん?おい、聞こえてるか?」

「うん!聞こえてるよ…」

「??…よく聞こえねェな…」

どうやら、私からは聞こえているのに…
向こうからは、私の声が聞こえないらしい。

う〜ん…。会話は無理だったな…。

それでも、彼から電話があった事に嬉しくて
内心ドキドキして、顔はにやけていた。

「すまねェな…。電波が悪ィみたいだ…ん?」

『ちょっとロー、電話ー?ねぇねぇ、せっかく来たんだし電話しないでよーって、だれだれ?だれと話してんの?』


私の笑顔が瞬時に凍る。
電話越しに拾っているとは思えないような
鮮明なあの幼馴染みの彼女の声。


「お前には関係ねェよ…。どっかいってろ。ってか近ェよばかッ!」

『もしかして…彼女?も〜…こんな所まできて彼女とか、昔のローらしくない。それに女に飽き症のローがいつまで続くかなぁ…?』

「おい、悪ふざけが過ぎるぞ…」

そんな言葉を最後に電話はブツンと切れてしまった。

ピーピーピー

電話なんて、なければ良かった。
そうすれば、あくまで想像で終わったのに…。

さっきまで電話が欲しいと思っていながら…
我が儘な事を思っている事は自分でも分かっている。

それでも…

電話をとった事を後悔した。

今日もあなたと喋れなかった。
あなたの隣に居られなかった。

今隣に居るのは…

“昔のロー“を知る…

あの人だ。


本当にローの事を知ら無かった。
ローって…
女に飽き症だったんだ…。


そんな事を思いながら…
私は絶望に身を裂かれる思いで…
眠りに落ちる…。






あの幼馴染みの女性が
雪山の麓のログハウスで
ローに告白をした。
凄く緊張した様子で…。

美女に美男。

まさに向き合った時
絵になるような光景だった。

ローは多少動揺したものの、
静かにベッドに彼女を押し倒した。

“んぁ…ロー…、ずっと、こうしていたかった…“

“…ハァ…、俺も…名無しさんじゃ…お前の代わりにならなかった…俺はお前だけが欲しい“

“ハァん…ロー…、きて…。温めて…“

“あぁ…、愛してる…“

“ん、焦っちゃだめ…ハァ…ゆっくり…“

“お前とようやくこ出来るんだ…。焦りもするだろ…“


はッ!!!


がばっと起き上がると…
外は明るくなっていた。

実際に寒かったものの、
ここは雪山ではなく
いつも通りの自分の部屋が視界に飛び込んで来る。

そこで、ようやく…
先ほどの光景が夢だと気づく。


なんだか、妙にリアリティのある夢だった。
鮮明な光景が起きた今でも思い出せる。

もしかして…
正夢なんじゃないかな?

なんて思える程だった。


…。


あ…。

着信が一件入っている。

ロー…


私は夢は夢だよね。

そう思い、着信があった事に喜びを感じながら…
電話を掛け直すと、すぐにローは電話に出た。

「名無しさん…話したい事がある」

とひどく…
低く、深刻めいた口調で
私に宣告した。


「俺は昼頃には、そっちにつく。今夜、仕事が終わった後、お前の家に行くが問題ねェか?」

「う…うん」

口調がいつもと違う。

良くない事だとすぐに気づく。

私は嫌な予感を抱えながらも仕事場に行った。


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