ハート短編夢

□別れを告げる
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「別れを告げる」
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叶ったはずだった。

私が彼に告白をして、
彼がそれを了承した。

お互いが恋人になった時

その証明であるかのように
彼が私の唇を奪った。

深く、深く
息もつかぬ間のキス。

確かに…。

あの時、
叶ったと確信していた。


それを裏付けるように
彼からデートの約束をとりつけてくれた。
彼は私が行きたい所に連れて行ってくれた。
また、私もその御礼にって訳ではないけれど
お弁当を作ったりなんかして…

付き合って短い間だけれども
絵に描いたような
何一つ文句ない幸せな時間だった。


「身体痛くねェか?」

「ん?…大丈夫。ありがとうロー。おやすみ…」

「あァ…おやすみ」

そんな事を言いながら
愛し合った後のベッドの上で
幸せを感じていた。


……

……



ある日、彼が旅行にいくと言った。
その彼は少し様子が変というか…
妙に浮き立っているような気がした。

長年の付き合いだと言った。
幼馴染みだと…。


確かに二人っきりではなかったので、
私も何も言わなかった。

ただ、なんというか…

私のデートより頻繁に
遊んでいるようだったので、
少しばかり嫉妬していたのは事実だった。



そして、知った事がある。
彼女は…。


彼女がローを好きだという事に…。

今は確かに私の彼氏としてローは居るのだけど…
それでも、私は彼女のあの…ローに向ける視線が忘れられなかった。

彼女に会ったのは一度きり、
その時、ローは気づいてなかったけれど…
彼女がこちらに向けた視線は
鷹のように鋭い視線だった。

彼女はローと長い間の付き合いだもの。
私が要するに奪ったという状況。

もし、彼女が…ローに告白したら…
どうなるんだろう?

私がローと知り合ったのは
それはつい最近の事で…。
彼女の方がずっと長くローを見て来た人。

私が嫉妬する事の方が

出過ぎてるんじゃないかな。


ずっと思い続けて居たなら、
ローだって…本当は彼女の事が好きなんじゃないかな?

彼女の事が好きで…
だけど、叶わないから…

たまたま告白した私を受け入れただけ。

そんな気がした。


「ロー…。本当にただの幼馴染みなの?」


私は本人に言えない気持ちを
独ぼっちの部屋に投げかけた。

ベッドで抱き枕をぎゅっと抱きしめても
不安なんか消える訳がなく…。

ただ、彼が今隣にいない寂しさを
ひしひしと伝えるだけだった。

明日は…ローが…幼馴染みとその他の男女と複数で
スキー旅行に行くらしい。

私は仕事があったので、
「お土産待ってるよー!」
と無理に明るく演じて見送った。


心配で、心配で仕方がないのに…

私はどうしようもなくて…。


冷たいベッドの上でひとり…
涙を落とした。


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