ブチャラティ 長編夢

□19.Sospetto
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ソフィア :side




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リストランテでの仕事に精を出す。
新人を教育しながら、普段の業務をしっかりとこなす。お客さんには何度も来てもらえるよう最高のおもてなしを。

そうしている内に気がつけば…
常連さんができ始めていた。

「ソフィアちゃーん!これの追加のオーダー頼むよ!」

「ありがとうございます!すぐにお持ちしますね!」

「いつもソフィアさんを見ると今日の疲れが吹き飛ぶよ」

「マッテーオさんお疲れ様です!本日の注文はいつものでしょうか?」

「ああ、いつもので頼むよ!それをおくれ!」

「はい!すぐに!」

常連の方と楽しく話しながらも、仕事に勤しんでいると…

店の扉が開く開く音、そして現れるブローノ達。どうしても彼と現実で仲良くするのは何か危険な事に巻き込むかもしれないという彼の硬い意志によって、リストランテでは軽くお話しするくらいしかできない。勿論デートも外でできず、夢の中でしか彼に会えていないと言っても過言ではない。

ナランチャ君やフーゴさんとはリストランテでたまに話したりはするのだけどね。

あれ?

あの人誰だろう。

銀色の長い髪に、上も下も全身が黒の服を着ている人がブローノ達と一緒にいる。
一瞬女性かと思うほど美しい人であったが、低い声とガタイの良さで即座に男性だと気づく。

「ブチャラティさん達、こんばんは。そちらの方は…」

「ソフィアーこいつは俺の後輩のアバッキオだ!」

紹介したのはブローノではなく、ナランチャだった。ナランチャの言葉を受けたやや暗めの相貌の男は特に何かいうわけではない。後輩≠ニいう言葉…なるほど、新しい人がブローノのチームに入ったと瞬時に理解する。

「新しいお仲間さんなんですね!」

「… …」

アバッキオと言われた男は私の方をちらりと見るが特に反応はない。代わりにブローノが補足する。

「ああ。つい先日入ったばかりなんだ。」

挨拶をしようと考えていたが、アバッキオさんの方を見つめても目を逸らされてしまったのであまり話したくないのだろう。私は早々に本来の業務モードにシフトチェンジをした。

「私はソフィアと言いますよろしくお願いします…それでは、皆さん本日は何を召し上がりますか?」

彼も恐らくスタンド使いなのだろう。一体どんな能力で、どういう訳でブローノのチームに入ったのか…彼の事はとても気になる。だけど、邪魔しちゃ悪いしね。

全員分のオーダーをきき仕事に戻った。







フーゴ :side





「随分と店の店員と親しいんだな」

ソフィアがその場を離れてからアバッキオは静かに意外そうにいう。

「ここの店はパッショーネ≠フ管轄だからな。それに俺はこの店とは随分古い付き合いがある」

ブチャラティはさらっと言う。
流石に恋人だと言う事を明かすつもりはないのだろう。
ナランチャに余計な事は言うなと目で合図を送る。

ソフィアの方をアバッキオは遠くから眺めている。
胡散臭そうに見ているのは全く違ったタイプだからだろう。
その点は僕も最初に彼女に抱いた彼女の感想だった。

最初はわかり合う事はないと思っていた。
それから…ブチャラティに隠れて夢で会って調査をすることが度々あり、それで今では印象として良い方だ。

彼女に情報収集を依頼する度に、ブチャラティにバレるんじゃないかってヒヤヒヤしてはいましたが、今回入ったアバッキオの能力≠ヘ相当情報収集能力に特化している為彼女を頼らなくても良くなりそうだと安心する。

今見ても何故あんなにも楽しそうに、
見知らぬ客に笑顔と気遣いをできるか理解はできない。
まぁ、客に「ソフィアちゃん」だなんて呼ばれるたびに、眉間がピクッと動いているブチャラティがいる訳ですが…。

僕たちとは違った世界に生きている人間だと
はっきりわかる分、今後はアバッキオとともに情報収集していくのが良いでしょうね。

ブチャラティが今後について話している内に料理が運ばれる。皿の上に色とりどりに並ぶ料理にアバッキオも少しは心を開いた様子だ。

「ここの店の料理…美味ェな…。あんたのお気に入りの店だけあるって事か」

無言だが、速い速度で食べきったアバッキオは満足気に呟いた。

「デザートも食べてみてくれ。ここにイチゴのケーキを4つ運んでくれ」

「Si…」

店員がそそくさに厨房に戻っていく。


… …

… …






ソフィア :side




*****

****


「お疲れ様〜」

「お疲れ様です!」

レオナルドさんはいつもより職場から慌ただしく出ていく。
以前、彼とデートをして熱い告白を断ったあの日…
それから二週間後に店の新入りの子から告白されてそれを
了承したのだった。

すごく微笑ましい二人であり、彼がちゃんと幸せになってくれて私はすごく嬉しい。それと同時に仕事終わりにデートがすぐできる彼らが羨ましくもあった。

ブローノと外でデートをできたら良いのにと
贅沢な悩みを持ってしまう。



店の後片付けを終わらせ
普段着に着替え外に出ると
どっと疲れと眠気が押し寄せる。

早く帰って家でゆっくりしよう。
そう思い暗い路地を歩いていると、

背後に気配がして…

振り返る。

だけど、そこには誰もいない。
気のせいかと思うのだけど最近は頻繁にこう言う事が
多くてうんざりする。

変な人間がいても、最悪フォアビデン・ドアがいるから…
眠らせる事は出来るけれど…

素直に怖い。

もしかして、幽霊なのだろうか。


私は自分が住んでいるアパートの郵便受けに
珍しく手紙が届いている事に気がついた。

部屋に着いて明かりをつける。
しっかりと確認してみる。
封筒には差出人が書かれていない。

ただ私の名前が宛名としてあるだけ。
手紙を開いてみる。


すると、そこに書かれていたのは

ブチャラティ達のようなギャングと関わるな

この一行だけ。

背筋に冷たいものが走る。
差出人が誰かもわからない手紙にこんなことを書いてよこすだなんて一体誰が何の目的で出しているのか。

こんな時こそ、冷静に考えなくちゃ。

ブローノ達と関わっている場面を振り返ってみる。
日常で会うことも、デートすることもない。
現実での接点はリストランテで店員として彼らと関わっているくらい。

夢の中を覗けたら話は別だろうけど…
流石にそんな能力を持った人間が仮にいたとして、
ここまでダイレクトに警告するだろうか。

となると、リストランテだろうか…。

ちょっと様子を見てみよう。
いつも通りに勿論ブローノ達と接してみよう。

私はその手紙をすぐに捨てたかったけど、
証拠になると思い一応机の上に置いていた。


2019/06/26
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