護衛チーム短編夢

□pioggiaー雨
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「pioggiaー雨」

◆相手:ブチャラティ


※注意

*ヒロインの死ネタ
*長編ヒロインとは関係ありません。






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名無しさん :side





死≠チてこんなにも
冷たいものなのね。

私は、土砂降りに打たれながら…
自分の身体からひっきりなしに流れ続ける
鮮血をただ眺めていた。

雨の中、傘を差し行き交う人々は
こんな路地裏で倒れている私には気づかないだろう。

それに…
助からないと分かっている私は
助けを呼ぶことも…
しなかった。

もう、身体の感覚はなく、
指先一本すら動かせない。

あんなにも痛く苦しかったのに…
その痛みさえ、何処かに行ってしまった
ようで…

雨の音だけが、やけにうるさく聞こえる。

濡れた道を飛ばす車の音、
この辺りではよく聞くクラクションの音、
雨の中を行き交う人の足音も
何もかもがまるでー聞こえない。

雨以外の音が全てかき消されたように、

ただ耳に入ってくるのは土砂降りの音だけ。


一瞬の隙だった。

ほんの、一瞬、隙を見せただけで
全て終わっていた。

私は…バカだな。

分かっているつもりだった。
自分の弱さも、彼らと一緒に居て安全な場所がない事くらい。
でも、こんな状況だから言えるだけで、
事実、私は分かっていなかったのだろう。
仲間との楽しい時間に押し流され、
自分の置かれている立場がいかに脆いのかなど
考えもしなかったから…。

私は、最愛の彼の顔が
脳裏に浮かんだ。

死ぬ前に ブチャラティに会いたかったなぁ…

そんな感想が胸に沁みわたるが、
実際に今の私のこの状況で彼と会った時…

想像した瞬間に胸が苦しくなる。

__違う。

会わなくて良かったんだ。

最後に彼に会わなくて、
本当に…
良かったんだ。

優しい彼はきっと後悔する、
自分の責任だと思ってしまう。
そんな彼の顔を見て逝きたくなかった…。

ごめんなさい、ブチャラティ…。

私はそっと
静かに訪れる孤独な死≠ノ備え
目を瞑った。



「名無しさんッ!_名無しさんッ!」

懸命に私を呼びかける声が
遠くから聞こえる。
ぼんやりとした意識の中で、
その声はだんだん近づいてくる。

私は力を振り絞って、
目だけ開ける。

すると、そこには…びしょびしょに濡れた
ブチャラティが居た。

彼の顔を見た瞬間、
私の目から涙が溢れてしまった。

こんなところを彼に
見られたくなかった。

見せたくなかったよ…
ブチャラティ。

声をかけようと思い、
口を動かそうとするが、

「…、…っ」

口は動かない。神経が繋がってないのか…、唇の感覚もないのか何も彼に伝えられない。


「名無しさんッ、俺の…せいだ!」

違う!
違うのに、
何も言えない。

私は必死に目だけで訴える事しかできない

違うよ、ブチャラティ。

あなたのおかげで私は生きる意味を見つけたの。
だから…
そんな悲しい顔をしないで…

そんな自分を責めるような顔を
しないで…

私の身体を抱きしめてくれているのかな?
感覚のない身体はそれさえも
わからなくて…。

死を覚悟したのに、
まだ生きたいって、
そう思っちゃうよ。

死にたくない
本当はまだ、一緒に居たいんだ。

鈍感なあなたに、私はまだ
言えてないんだ…

ブチャラティ…
あなたを…
愛してました。

ずっとずっと、
愛してました。

鈍感なあなたは
私の想いに気づいてないかも知れないけど、
私はあなたの側にいられて

ずっと…

…あわ… せだ… 

…、…。


.
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