ロー長編連載夢

□17シャボンディ諸島にて05
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結局、起こされた船長は不機嫌そうに…

「俺は自室で寝る。…ラミア、俺の部屋に来るか?」

何てニヤリと笑ってくる。
それにドキっとして心臓が跳ねるも…

「わ、私が…船長室に!?い、いえいえいえ、私まだ起きてますし…その、船長はとにかくお休みになった方がいいですっ!相当酔ってますよ…」

「…さっきのは少しからかってみただけだ。別に酔ってる訳じゃねェが…まぁいい」

そう言い残してくるりと背中を私達に見せ
船長室へと足を向けた。

後ろ姿をみて思う事が一つある。

やっぱり船長は…



“相当酔っている!!”



私は確信めいたものを感じて…
どこまでの言葉が船長の本心なのだろうか…
なんて…不思議に思いながら、
船長の背中を見送った。

いや、本心はないと思った方がいい。
なにせ酔った船長の行動に勘違いして
痛い目を見た事があったのだから。

甘言。



「しかし、ビビったな…まさか、船長が…」

「うん。本当に戻って来た途端、ありえない光景を見ちゃったって感じだもん」

ぐったりと酔い倒れてる仲間を
それぞれの自室に運び終わった
ペンギンさんとベポが
私に信じられないという表情を向ける。

「あの後、キャプテンと何かあったの?」

ベポが興味津々といった様子で
かなり至近距離に顔を近づけながら、
私を問いつめる。


近づくベポの顔は
白熊そのもので…
食べられてしまわないか
不安になる位大きかった。


「たしかに…船長がラミアを娼婦と違うとか言っていた時はいい感じの雰囲気だったが…まさか…ああなるとはな」

同じく私に詰め寄るペンギンさん。
相変わらず帽子の影で表情がわからないペンギンさんは
何か迫力があって…。

二人の詰め寄りにたじろぎながら
何があったのかをポツンポツンと
私は二人に説明する。

二人は何度もお互いの顔を見合わせたり、
驚き目を丸くしたりしていたが…

どうして、あの状態で発見されたのか
説明すると半ば苦笑混じりで話を聞いていた。

一気に説明をしてから
大きく息を吸い込み、
はっきりと話をしめくくる。

「これって…船長絶対に酔ってますよね!!」

「あ…ああ。おそらくな」

「うん、キャプテン酔ってると思う」

「ハァ……『お前は…、違うんだ』と言った最初の方の言葉も本気にしない方がいいって事ですかね…」

酔っている事が私よりずっと船長の事を知っている
ペンギンさんとベポが言うなら間違いない。
ちょっと…期待していたけど
がっくりと肩を落とす。

「あ、でも、酔ったからといってキャプテンは嘘言う人じゃないよ!」

「間違いなく本音だと思うぞ。ただ…ちょっと色々と抑えがきかなくなってる気はするが」

私の様子をみた二人がフォローを入れて
くれた。

「ほ、本当ですか?じゃあ、はじめの方の娼婦の方とは違うっていう言葉は信じても!」

「ああ!!間違いなく信じてもいい。それは自信をもっていえるぞ!」

「やったぁああ!!」


床で一緒に寝そべった事も
後ろから抱きしめて船長が寝た事も
それは船長が酔ったからの行動であっても…

それでも…

私は、今夜は

『俺も口では説明できねェが…。なんて言ったらいいのか分からねェが…お前は…、違うんだ』

という船長の言葉でじゅうぶん過ぎる程幸せになった。

『とりあえず、お前は…俺の傍から離れるな』

そんな事を言ってくれた船長。

私はクルーとして
女性として見られてなくても
幸せ者だ。

いつか恋人になれる事を祈って
今は船長を支える船員として

この船にいたい。

そんな事を思いながら、
ペンギンさんとベポと軽く話した後
私も自室に戻る為足を早めた。

そんな時

ふと…

何か

信じられないほどの

寒気を感じた。
背筋に氷が落ちるような感覚。

気のせいだと信じて…

自分の部屋に近づくにつれて
嫌な予感がする。

それは

直感であって
なんの根拠もない事だけど

良くない。

嫌な予感。

それは確かに背筋を凍らせた。

だけど…勇気を振り絞り
部屋の前まで来ると
突然嫌な感じは消えた。

なんだったんだろう。
気味が悪いな。
先ほどまで血をグラスに注いで
飲んでいた私が思うのはおかしな話かも知れない。


扉をゆっくりと開ける。
暗い部屋の中は…いつも通りで…

と思ったものの…
私はある一点の変化に
気づいてしまった。

自室の机の上に
島の外に行く時にはなかったものが…。
そこには一通の手紙が置いてあった。

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