ロー長編連載夢

□10祝福の夜
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もう日が暮れたな…


結局、海軍の船や敵船、商船も通る事がなく、
特にやる事がねェ…日中だった。

日が沈むとすぐに、あいつらの騒ぎ声が聞こえて来る。

確かに久しぶりの宴だ
騒ぐのは無理ねェか…。

俺が部屋を出て
甲板に行くと…

あいつらはすでに、
宴の準備をすすめていた。
船のコックも相当気合いが入っているのが
分かる。おそらくラミアを意識したのか
可愛いハート型に切られた野菜を目にした時は、
浮かれ過ぎだろ!と思ったが…

「船長!!準備万全ですよ!ありったけの酒に豪華な食事!」

そう言うクルー達は、口にこそ出さねェが…
そわそわと急かす目線を俺に向けている。

…ったく…

そんな分かりやすい態度に
思わず口元が緩む。


「おい、全員聞け!」

俺の言葉に全員一斉に俺をみる。
甲板にクルーがそろっている事を目で確認しながら
宴の合図をした。

「改めて、ラミアとジャンバールが仲間に加わった事を祝して。今日だけは存分に騒げ」

「うぉおおおお!!!!」

一斉に全員が声を上げた。
こうして、新規の仲間に向けた宴ははじまった。

…………

…………

始まって早々、色々な声が飛び交う。
俺は壁にもたれかけながら酒を飲んで
様子を観察した。

ラミアの様子を目で追うと、
なぜか知らねェが…酒をついで回っていた。

何してんだ…あいつッ…くくッ

そして、俺を見つけると
笑顔で走ってきた。

「船長!あの改めてありがとうございます!!」

「別に礼なんか、かまわねェよ…それよりお前何してんだ?」

俺がラミアの抱えた酒瓶をみると、
心底真面目な表情で…

「いえ、せっかく新しく仲間に加えてもらったんで、クルーの皆に挨拶もかねて…」

と、なんとも律儀な答えが返って来た。

「そんな事した奴はお前がはじめてだ。そんな硬ェ事する必要ないだろ…。お前は祝われてればいい。その為の宴だ」

「そ、そうですか!…でも船長にはお世話になってるし、注ごうかと思ったんですけど…直接ボトルから飲んでるんですね…」

俺の手元のボトルを見ながら、
戸惑ったように言うラミア。

「あ?…あァ。お前が注いでくれるって言うなら…貰う」

「あ、グラスとってきますね…」

「取りにいく必要はねェ」

ブゥゥゥウン シュッ

俺は能力を使って、手元に持って来たグラスを掴む。
あいつは、驚きぽかんとしていたが…
すぐに疑問を口にした。

「え、どうやって…マジックですか?」

「マジックってお前…、ふッ、この前見せただろ。悪魔の実の能力だ」

「べ、便利ですね!!!」

「まァな…」

俺が空のグラスをラミアの方に向けると
ラミアは、酒をゆっくり俺のグラスに注いだ。

こいつに酒を注がれんのは悪ィ気はしねェな…

そんな事を考えていると、
グラスはあっという間に満たされた。

注ぎ終わるとラミアは俺の前で一礼し、
「他のみんなの所にいってきます!」
と言葉を残して、すぐにいっちまった。
あいつの背中を見送りながらふと考える。

あいつを仲間にすりゃァ…
俺は満足するはずだったが…


なぜか…満たされねェな…。

目の前にある酒に満たされたグラスを
見ながらぽつりと思う。

ったく、なんなんだろうな…
自分でもよく分からねェ。


俺は手元に残った
アイツが注いだグラスの酒を
一気に飲み干した。


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