ロー長編連載夢

□09恐怖の昼
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五分の遅刻だ。
あぁ、朝あんなにも遅れるな…って
船長言ってくれていたのに…
なんて最悪な事をしてしまったのだろう。
ごめんなさい、船長。

約束を破ってしまった。

船長に対する罪悪感を抱えつつも

コンコンと船長室の扉をノックする。
すると、苛立った彼の声。


「入れ…」

そおっと扉を開け、室内に入る。
船長と目があい、すぐさま謝罪した。


「遅刻してしまって、ほんっとうに申し訳ないです!!!」

「……」

無言。

船長は無言のまま、手元の本をペラペラとめくる。
私への反応はなかった。

船長は相当怒っているのだろう。
でも、それは私がした事を考えれば当然で…

私は、謝罪する事しかできなかった。


「ほんっとに申し訳ありませんでした!!!!!」


「…二度言うな。…ハァ。ちゃんと聞こえてる」

船長は面倒くさそうに溜め息をついた。
私はそっと…船長の側にいく。

「船長…怒ってますよね」

「怒ってるんじゃねェ…呆れて、物が言えなかっただけだ」

怒られるより、呆れられる方が一番苦しい。
私は、くどいとは思いつつ。
小さく言葉を漏らした。


「………ごめんなさい」

「ったく…他の奴らといい、お前といい…うかれ過ぎだ。遅刻を許すのは、今日限りだ」

「は…いッ」

こうして、私は久しぶりに実験される事になった。

前とは違い、捕虜としての実験体ではない。

だから、私は安心しきっていた。

それが、間違いだったと気付くには、
そう時間はかからなかった。





………

………


「今日やる実験について…話をしておく」


船長がそう言い、実験の内容を私に説明する。

船長の説明が進むにつれ、
私のもともと低い体温が
氷点下まで下がる。

そして、どんどん実感する恐怖。
私は…反論したけど…


「これは、決定事項だ」


と、一言。何気ない表情で言い切る船長。
その平気で言ってのける様は、
【死の外科医】の異名をとるだけの
残酷さがあった。


うそ…。

こんな事って…。

きっと、遅刻した事を恨んでいるんだ…。


「ごめんなさい。遅刻した事は、本当に申し訳ないと思ってるんです!」

「その話とこの話は別だ。お前が遅刻しなくても、やるって決まっていた事だ…」


どうやっても、逃れられない運命らしい。


「いやぁああぁあああ」

「うるせェ…」



私は、涙ながらに必死に懇願する。
しかし、船長は一向に私の意思を無視する。


私の悲鳴を聞きつけ、
何事かとベポさんと、ペンギンさんとシャチさんが駆けつけてくれた。

「キャプテーンどうしたの!?」

「船長…あんた、何してるんですか!」

「ラミアの悲鳴を聞いたんッスけど!!」


3人の非難の声に、
船長はめんどくさそうに、
今からやる実験について話をする。


渋い顔をしたまま
船長の話を聞いていた3人。


だめ…

船長の言葉巧みの話術にひっかっかってはダメ。


私は心の中で何度も祈ったが…


祈りもむなしく
唯一の頼みの綱であった3人まで…
まんまと丸めこまれてしまったのだ。

3人は若干申し訳無さそうな顔をして、
私に声をかける。

「ラミア…キャプテンを信じて」

「た、確かに…必要な事ではあるからな」

「ラミア…力になれなくてごめんな…」


それだけ言い、3人は…目線を落とした。


「分かったな。文句は言わせねェ」


救いの糸は…

あっさりと切れてしまった。



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