ロー長編連載夢

□08幸福の朝
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……

……


目覚めがいい。

身体の痛みもなく
昨日血を飲んだおかげで
だいぶ身体も軽い。

今まで目にしてきた、暗い部屋ではなく、
明るい光に包まれた部屋での起床。

ま、眩しい。


潜水生活をしていた為、日光を浴びる事なく
薄暗い部屋で居心地よく過ごしていた。
外での光の感覚はない為、
一日の時間感覚を掴むには
ほとんど食事と時計のみであった。

ペンギンさんが言うには…
浅いところであれば、海の中も日差しが入ってくるが、
シャボンティ諸島で「天竜人」が吹き飛ばされるという
異例の事態…その犯人に船長が巻き込まれてしまい、
共同犯と見なされる結果に
どういう訳かなったとの事。

その結果、海軍から必要以上にマークされている状況が続き、深海の潜水待機はやむを得ない状況となっていた。

光を感じない生活に身体はなれ、
体内時計はすっかり狂ってしまった。

吸血鬼の血のせいで、
本来、朝の日差しを感じる時間は眠気が襲って来るはずだったが、狂わされた体内時計はある種、普通の人間と同じ様に作動して

朝に目が覚め、夜は眠る

といった、なんとも普通の人間のような生活を送れていた。

その習慣を引きずって早くに起きてしまったものの、

日差しが眩しい。
そして、チクリと寝間着から
はみ出た肌に光が突き刺さる。

寝間着に着替えず、そのままツナギのまま寝れば
良かった。と後悔しつつも…

私は光から逃れる為、ノソノソとベッドから起き上り
身支度を整えはじめた。

長い髪をブラシでとき、
みんなとお揃いの白いつなぎに
足を通してボタンを留めて着る。
最後に帽子を深くかぶった。

鏡の前で確認する。

昨日、一昨日と服装も見た目も
一切変わっていないはずだというのに、
違った印象に見えた。

はじめて、この服を着ろと言われた時は、
女性らしさの欠片もない
見た目に若干の違和感と不満があった。
実験体で文句は言えないと思い、
しぶしぶ着ていたのだけど…

今の鏡に映った自分の姿に
口元がついつい緩み、ニヤけてしまう。

みんなとお揃い…
本当の“仲間”としての証。

侵入者でもなく

実験体でもなく

仲間になる事ができた喜びに
胸が熱くなった。


私は…新しい気持ちで、部屋から出て…
甲板に向かった。

やはり外だけあって…
眩しさに目がくらみそうになるけど、
肌の露出もない、この服装のおかげで
日の当たる場所に何とか平気で出る事ができた。


開けた甲板には船員のみんなが集まっていた。
そして、船長もベポさんの上に背中を預けリラックスをした姿勢で待機していた。

起きるの…遅かったかな。
不安に思いながらも、みんなの方に歩いて行くと…

「ラミア!」

私の姿を確認した船長が私を呼ぶ。


「すみません…遅くなっちゃったみたいで…」

「それより、お前…身体の具合はどうだ?」

てっきり「遅ェ」と言われると思っていたのに…
船長が気遣ってくれて驚き目をパチクリする。

「なんだ、その顔は…」

「あ、なんでもないです!身体はみての通りバッチリです!!」

「ならいい…」

周りのクルーの人達は、なぜこうして集まっているか分からないいった表情で黙って待機している。

緊張するなぁ…。

思い出す昨夜の船長の言葉。
船長は確かに…私に
「お前は…俺達の″仲間″になる気はあるか?」
と言ってくれて、私は仲間になりたいという意思を伝えた。

あれは、夢じゃないよね?
私の妄想じゃないよね?

信じられない程
嬉しい出来事だった為
突如不安になる。

もし、昨晩の出来事が全て夢で
勝手に今喜んでいるだけではないのだろうか…

不安な気持ちを残したまま、
船長の言葉を待った。


「ラミアが来たところで…お前らに話しておかなきゃいけねェ事がある…。おい、ラミア。こっちに来て、ここの前に立て。」

船長に言われてみんなの前に立つが、
あまりの緊張に足が震える。

クルーのみんなが私に注目する。

みんなは果たして

私を【仲間】として受け入れてくれるだろうか…


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