ロー長編連載夢

□07潜水艦生活その3
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……

………


ぼんやりとした意識。
真っ暗な世界の中。

この真っ暗な世界で
私は何度も何度も嫌な思いをしてきた。

私にとって暗闇は
孤独と不安と罪悪感

だけど…

今は違う。

私の近くには、たくさんの
温かい人達がいる。

今も私のすぐ近くで、何やら話している声が聞こえて来る。

私は目を見開くと、独りベッドの上にいた。
すぐ横の机にはランプが置かれていた。

見渡しても部屋には誰もいない、けれど、
すぐ近くにいるように
人の声が聞こえるところをみると…

扉の向こうの廊下か、隣の部屋にいるのかも知れない。

まだ完全に回復していないので
わざわざ身体を起こすのも、躊躇われた。
それに私の出現で話の腰を折ってしまうかも知れない。

目も閉じたまま、何を話しているのか
聞き耳をたててみた。

聴力はにぶっていない。
半分吸血鬼になったおかげで周囲の音を拾いやすくなっていて、こんな時は便利だと思ってしまう。

意識を集中すると…鮮明に話が聞こえて来た。
顔をみなくても声ですぐ誰が喋っているのか分かる…
この声は…ペンギンさんとシャチさんとベポさんだ!


「なぁ…船長の様子がおかしいとは思わないか?」

はじめに話題を切り出したペンギンさん。

「んーキャプテンはいつも通りだよ」
「そうそう、ペンギンの考え過ぎだって!」

それに対して口を揃えて、ベポさんもシャチさんも反論するが…ペンギンさんはどうも納得がいかないのか…
小さく「う〜む」と考えた後…再び話題を切り出した。
その話題は驚いた事に私の名前が出て来た。

「ラミアに対しての態度が、どうもおかしいと思うが…どうみる?」

「う〜ん、ジャンバールとの突然の戦闘は…確かにひでぇよな。」
「あれは見るに耐えれなかったよね〜」

「そこじゃないんだが…いや…そこもふくめて…」

溜め息をつくペンギンさん。
ますます気になって来る。
一体どういう事なのだろうか…

私に対して船長の様子がおかしいって…

私は気になって不安になる。

聞き耳をたてるのはよくないと思いつつ、
やはり…気になる。
私はそのまま話の行方を見守った。

「あの戦闘で、あんなにも冷静だったはずの船長が終った途端後悔しているように見えた。本来なら…戦闘に出すにはまだ早ェの一言で終らせて…後悔した素振りはしないと思わないか?」

ペンギンさんが再び二人に投げかけた。

「え、船長後悔してたんスか。あんだけ女の子にひどい事すれば…さすがに船長でも後悔………しないか」

「た、たしかに!船長なら『戦闘に出すにはまだ早ェ』って一言で終りそう!」

ペンギンさんは話を続ける。

「他にも…おかしな点が【実験体】と言いながら…戦闘要員として考えていたり…今回も成長させる為にわざわざ戦闘の場を設けさせたり…【実験体】としてだけでラミアを見ているだけではない…って思うんだ」

実験体としてじゃない?

それって…

もしかして…

身体の奥から熱いものが
込み上げて来る。

私が思っている事を代わりに、
シャチさんが言ってくれた。

「それって…、船長は…ラミアの事…」

「船長も男だからな…間違いなく船長はラミアの事を…す」

「仲間って思ってるって事っスよね!!」

私もシャチさんと同時に″仲間″という言葉が浮かび
嬉しさに胸が熱くなった。

もしかしたら…

船長は仲間として見てくれるのかも知れない。

そう思うと、嬉しさで自然と口元が緩む。

仲間…かぁ。

私に仲間と呼べる人がいたのは、
踊り子時代だったなぁ。あの時もみんな優しい人ばかりで、色々と迷惑もかけてしまったけど、ふざけあったり、楽しかった。
いつも仲間っていいなと心の底から思っていた時代。

今は現状が現状で、とても仲間にはしてもらえないと思っていたけど…
船長が【実験体】としてではなく、【仲間】として見てくれているなら、これほど嬉しい事はない。

半分吸血鬼の間、仲間としておいてもらえた幸せだな。
人間に戻って、この船を下りるその時まで…

私がそんな期待に胸を熱くさせながら
聞いていると、ペンギンさんの溜め息が聞こえて来た。

「俺の話した船長も男って下り…聞いていたのか?」

「え?はじめ実験体って言って、仲間にするなんて、さすが船長は『漢』って感じっす!船長かっこいいよな。あこがれる」

「…まぁ、いいか。そうだな…俺の思い過ごしだったかも知れないが…」

「ええーー、思い過ごしじゃなくて、本当に船長がそう思ってたらいいなー!」

シャチさんに続いてベポさんも

「うんうん、ラミアとってもいい子だし仲間になるといいなぁー」

と言ってくれる。


私もそうだといいなぁ…
と嬉しさと期待に
胸を熱くさせながら

ゆっくり、再び眠りについた。


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