ロー長編連載夢
□02医者と貧血者
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薄暗い部屋の中での拘束は続く。
「お前は何なんだ…」
えっと…
゛何゛なのか…
それは、ひどく唐突な投げ掛けであった。
その曖昧な問いに私はなんと返そうか戸惑う…
「私は、決して…怪しい者では…、迷ってこの船に迷いこんだ迷子で…」
゛何゛に対して私は
ぽかんとしながら、弁解の言葉をもらした。
やばい…
「………」
沈黙する空気が
失言であったと伝えた。
「お前、バカか?そんな言葉を信じるやつがどこにいる」
「で、ですよね〜」
今考えても、
なんであんな事を言ってしまったのか分からない。
信じる訳ないですよね。そりゃ〜
迷子っていう歳でもないし。
「自分の嘘を肯定した…だと?……お前…何がしてぇんだ…」
「あッ!しまった!!そこは、同意しちゃいけなかった!」
こちらを見る隈のある鋭い目の色にさらに不審そうな色が加わった。
二回目の失言。
……
いや、三回目かな?
他にうまい言い方が見つからなかったのは、きっと頭に血が足りなかったせいだ。
そう…頭に血が足りなかったせいだと自分で勝手に納得した。
私はゴクリと喉を鳴らす。
うわ……、どうしよう。
まずいこの空気は……
重たい空気がまた流れようとした時、
男は目を閉じ、深い溜め息をついた。
「何なのか…ってのは俺の聞きたかった言葉と違うが、まぁ、いいだろう。……お前が馬鹿な奴だって事は分かった。それとも……馬鹿な振りして油断させてんのかもな……」
瞼を閉じたまま面倒くさそうに首を一回転させた男は静かに言葉を続けた。
開かれた目が私を品定めした。
「おぃ……お前の目的を話せ。なぜ俺の船に乗り込んだ?」
そう…私はある目的をもってこの船に乗り込んだ。
ふたつの目的のうちひとつを達成すればいい……
もう、話してしまった方が楽になる。
期待は…していない。
「私の目的は、病気を治してもらいたくて、医療を専門としてるという噂をきいて、あなた達の船に乗り込んだ。」
そう、嘘ではない。
ひとつ語弊があるとすれば
【病】というくくりとは違う気がするけど…
治したいという気持ちに変わりはない。
私が嘘をいっていない事を見抜いたのか
どうか分からないけど
男は溜め息をつきながら、面倒くさそうにいう。
「何を勘違いして乗りこんだか知らねェが、俺達は海賊だ。お前がどんな病を抱えていようが、治して何のメリットもねェ…わかるな?助ける義理がねぇ。」
そう、はっきりと言い放たれる言葉。
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