ロー長編連載夢

□01医者と侵入者
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はぁッ

はぁッ

はぁッ

暗い暗い船の倉庫の中、私はひっそりと身を潜めていた。

先程、この船に忍び込んだばかりで、息も荒い。

はぁ

はぁ

はぁ



ふぅ

しばらくして
ようやく息も整える事ができた。

たたたッ

足音が暗い天井から響き部屋中に反響する。

唇をきっちり結び、体をすっぽりと包んでいる厚手の布を強く握りしめる。

いずれバレないといけないけど、でも今ばれるのはまずい…



私はあたりに漂う薬品の匂いと混ざり合って匂う微かな“あの香り”に意識を奪われそうになる。

ドクットクッ

心臓が脈打ち、のどが乾く

だめ、なんの為にこの船に侵入したのか、自分でも分かっているはず…

あッ

『ぐぅぅうう』

慌ててお腹をおさえる。

もう3日間食事をしていない。もう喉の渇きも尋常ではない。

ドタバタッ

先程より多くの足音が響き渡る。

そして大きな声が聞こえてきた。


「おい全員乗りこんだか?急げッ!揃い次第さっさと潜るぞッ!」

「ジャンバール遅いよッ…って、うわッ俺より早く行くな〜!」

「急げ、ベポッ」

「アイアイキャプテンッ!うわッ追っ手がもうきたッ」

「船長!潜水準備万全です!」

「さっさと船の中入れッ潜るぞ」

鳴り止まぬ喧騒の中

「億超えルーキーを逃がすな!」

遠くから聞こえる銃声と怒声


ゴンッ

重たい鉄の扉を閉められた音がした。








『ボコボコ』



『ボコボコ』


あぶくの音が聞こえた気がする。

潜水しているのだろうか?


外の様子が気になる。



私の近くに人の気配を感じる。


コツ、コツ


足音が聞こえる。


コツ コツ コツ


あ、足音が迫って来た。



どうしよう…

ここじゃまずい…


もう少し場所をかえて
身を潜めなくては…




でも…




もう意識が…


迫る人影。うっすらと目の前に人の影がみえる。



「医者…」



最後にそれだけ呟き、


倒れ込んだ。






暗転する世界。



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