マルコ長編連載夢2
□10セレ・ブリッジ島〜準備〜
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日が沈み、かわりに顔を出した満月。
銀食器の上にカチャンと金属の冷たい音をたて
フォークとナイフが転がった。
「結局、マルコきてくれなかったなぁ」
僕の目の前で泣きそうな顔をしていたシャミア。
そんな様子に
ふっと笑みがこぼれかけるのを堪え、
僕は心配そうにぼやいた。
「仕事に手間取ってるんだろうね。明日は来るだろうから心配いらないよ」
「そ、そうですよね」
「それより絵は順調かい?」
「あまりのショックで描く気がなくなっちゃいました」
「それは、残念だ」
そこまで、あんな男の事でショックを受ける何て、
変な女だ。
全く、どこが良かったのか分からないよ。
「あの・・・あの地下にいた生き物さん達を描いてもいいですか?」
突然口を開いたシャミアに少し驚くと
「え、アレを描きたいのかい?」
「今まで、見た事の無い生き物ですから描いてみたいんです。食事が終わってから、絵の具一色持っていってもいいですか?」
「でも、もう遅くだよ。明日にすればいいじゃないか」
まぁ、明日になれば白ヒゲ海賊団は出航してるだろうけどね・・・
「今日は、寝たくない気分・・・いえ、たぶん寝れないんです。マルコが傍に居ない事が不安で・・・、あ、でも唯一気を紛らわしてくれそうなのは絵なんで、描いていたいんです。珍しい生き物さん達を」
「マルコに君を徹夜させただなんて言ったら、僕は殺されちゃうかも知れないから内緒にしてくれよ?」
「あ、大丈夫です!内緒にします!」
「じゃあ、そこのメイドに絵の具等を運ばせるよ」
「わざわざありがとうございます。そして、ごちそうさまでした」
そう言って、席を立った
シャミアの背中を見ながらニヤリと笑う。
まぁ、絵で気が紛れる程の仲で良かった。
この後訪れるであろう
「白ヒゲ海賊団が自分を置いて出航」
その悲劇に見舞われて、立ち直れず
廃人となってもらっては
″価値″のない人間になってしまうからね。
まァ、大丈夫だろう。
もともとこっち側に向いてる人間だ。
あの子に海賊なんてむかない。
それをマルコという男は分かってくれたんだろうね。
てっきり取り返しに来ると思って警備を厳重にしたのに
姿を見せなかったしね。
″恋″なんて曖昧で不確かなものを
一番としていたって
″状況″さえ変えてやれば、簡単に壊せる。
あとは時が解決するさ。
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