ハート短編夢

□オレンジ色の港
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「オレンジ色の港」

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クークー

遠くの空を見渡せば、カモメ達はどこかへ帰っていく。

しょっぱい湿った風が私の髪を連れ去ろうと揺らし、通り過ぎていく。

夕暮れに差し掛かった港は、日中の暑さに比べだいぶ涼しくなっていた。

海を見れば
水面は淡いオレンジ色の光をキラキラと綺麗に映し出していた。

私は彼と2人っきりで港を歩いていた。
人が一人入れる位の微妙な距離を保ちながら、会話のない…だけど居心地のいい不思議な散歩。

隣をみるとローさんの目と不意に合う。

夕暮れの光に照らされた彼は、やはり格好良く、いつもより近くで見る彼に…心臓が脈打った。

恥ずかしくて仕方がなくなり、慌てて目線を下げる…が。

「なに逸らしてんだよ…」

どこか悪戯っぽさを含んだ彼の声がとんできた。

「き、緊張して…」

彼との初デートなのだから、緊張しないはずがない。

「ほら、もっと近くに来い」

そう言われ、恐る恐る人1人分の距離を詰めてみる。

すると、突然腰にまわされる手。

「ちょっ、ローさん!?」

「あァ?もうお前は俺のもんなんだ…こんくれェ…普通の事だろ?」

夕闇に照らされた顔がニヤリと笑う。
そして、腰に回された手が、いっそう強く私の腰を掴んだ。

「…ッ!!」

腰がじんわりと熱くなる。声にならない悲鳴を楽しむかのように、へへッと笑ったローさんは言葉を続ける。


「あの灯台のところまで歩くか…」

「はいっ」


そう言うものの…

腰に手がまわされながら歩くなんて事ははじめてで、緊張して上手く同じペースで歩けない。

ついつい、ビクリと腰が反応してしまい。途中立ち止まりそうになる。


私の挙動不審にローさんは訝し気な視線を送る。


「名無しさん、どうした…?」

「…大丈夫ですっ、ただちょっと腰が緊張して…」

「…ククッ…仕方ねェな…、ほら、これ位のペースなら問題ねェだろ。」

ローさんがペースを落として歩いてくれた。

ゆっくりのペースだと落ち着いて歩けた。

特に会話はなく…
夕暮れと綺麗なオレンジ色の海を眺めながら2人っきりで歩く。

腰に添えられた手は、緊張をはじめ伴ったものの…いつしかそれは安心感に変わっていた。










「オレンジ色の港」





灯台の下で…
私は彼と日が落ちる最後まで、寄り添いながら、オレンジ色の海を眺めていた。

13.07.23
 

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