ハート短編夢

□誘惑は甘美で…
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※現パロ夢


「誘惑は甘美で…」

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私は何度になるか分からない涙を流し…
アルコール度数が高い酒に溺れる。

口の中の苦さですら…
この気持ちは紛らわせなかった。

酔ってるというのに…
決して気分が晴れない。

いっその事煙草を吸ってしまおうか…。

今まで手を出した事もなかったところまで
手を出そうと考えながら、
溜め息をつきながら…
手で煙草を吸う真似事をしてみた。

お酒で駄目なら…
もしかしたら
煙草を手に出せば、
この乾いた心を潤わせるのかも知れない。


「煙草はやめておけ…肺に悪ィ…」


そう言いながら現れたのは…
私の隣に住んでいるロー。

彼は…医者らしいので
お金を持っているはずなのに、
なぜか、こんなボロボロのアパートに住んでいる。

彼とは…古い付き合いになる。
いつも、一緒に飲み合ったりする中で
頼れるお兄さんといった感じだった。

私が彼氏との問題にアドバイスをくれて…
本当に頼れる人だった。


「ロー!どうして…ここに?」

「お前、鍵あけっぱなしだぞ…それに、泣いてんの丸聞こえだ」

そう言って、ローは壁越しに隣の自分の部屋の方をみる。

そういえば…、泣きながら帰って来て
部屋に鍵をかける事すら忘れていた。

慌てて、鍵をかけにいき戻って来ると、
ローは私が飲んでいた酒をまじまじと見つめながら
リビングでくつろいでいた。

まったく…人の家だというのに…。
私は、グラスをだしながらローに酒を差し出した。


「それにしても…またひでェ顔だな」

「う…ごめん、ごめん。また…ちょっとね…」

「お前…いい加減別れた方がいいだろ…」

そう言って、差し出したグラスを総無視で、
直接ボトルから飲むローに唖然としながら…。

考える。

「だって…まだ、嫌いって訳じゃないし…」

「へへ…嫌いじゃねェ…か」

私がポツリと言った言葉に、
ローが食いつき、ニヤリと笑う。

「じゃなくて、ちゃんと…好きだよ?」

「仮にお前が…好きでも、今幸せとは言えねェだろ…
。こんな風に泣いてんのも、しょっちゅう、俺の部屋に聞こえてくる」

「幸せか…そうだね。幸せになりたいんだけど…どうして、こんな、上手くいかないのかなぁ…」

私は、ローからボトルを取り上げ、
グラスにつぎながら溜め息をついた。

すると…、ローが突然
ボトルをもった私の手を掴んできた。

ボトルを取り上げた事を怒ったのかな…
身構えていると

「名無しさん…この際、はっきり言うが…、お前の話聞く限り、そいつと一緒にいても幸せになれるって思えねェ。本当はお前も分かってんだろ?」

「そ、そんな事いっても、私には…彼しかいないの!」

「バカ、俺がいるじゃねェか!!」

その言葉に驚き目を丸くする。
ローの真剣な目。
冷静なローが…怒っていた。
考えてもみない言葉だった。

目線をそらして、しどろもどろになる。

「だって…ローは…、その、お兄さんみたいな…」

「…はぁ。お前がそう思ってても、俺は違った。好きな女の愚痴以外聞かねェよ…」

ローは、私の手を掴んだまま…
溜め息をついた。

「ロー…」

「名無しさん…、今は俺だけを見ろ」

ローは放した手で
私の頬の涙の痕をなぞった後
顔を近づけ唇を奪った。









「誘惑は甘美で…」





夜が更けたアパートの一室で
涙がこぼれ落ちた。



13.07.15
 

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