ハート短編夢
□暗黙のルール
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「暗黙のルール」
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どの世界、どの場所でも暗黙の了解というルールは存在する。それは、このハートの海賊団も例外ではない。
むしろ暗黙のルールが多い場所とも言える場所であった。
そのルールの支配者は、トラファルガー・ロー。
暗黙のルールが多くなったのは…
ハートの海賊団のこの船長の性格に依るものだとは
言うまでもない。
■暗黙のルールその1
「船長にパンをもっていかない」
これは基本的なルールであった。
船長はパンが嫌いなので…決してパンを持っていったりしてはいけない。といった、なんともおかしな話。
そもそも、なぜ、そこまでパンに敵意をもっているか分からなかった。パンより米を重視すり理由もよく分からないけれど、船長が言うなら仕方が無い。
そして、困ったことに…
私達も大抵パンを食べる事ができなくなったのだ。
料理をしてくれるクルーの人が
船長命令で「パン以外を出せ」と言われている為だ。
恋しいよ…パン。
帰っておいでよ…パン。
結局、お米派への転換が必要になったのだ。
■暗黙のルールその2
「寝ている船長をおこすな」
これは、私達クルーの基本的な願いであった。
もっと、船長がに睡眠をとって欲しい。
あの…色濃い隈をみると、
私達はどうしても…
「もっと寝て下さいよ、船長」
と言いたくなるのだ。
もっと寝た方がいいですよと言っても、
「俺が寝たい時に寝る。寝たくねェ時は寝るわけねェーだろ」
の一点張り。
昼間寝ている姿をみると…
昨晩は寝てないんだな。としみじみ思い…みんな用事があっても、大体船長が起きてからしか言わないのだ。
ただ、この暗黙のルールには欠点があった。
「寝ている船長をおこさない」
とだけ、あって…
「寝ている船長に悪戯をしてはいけない」
とは無い訳で…
私は今日決意した。
みんなが、できない事をしようと思った。
みんな、船長に一度はやりたいと思っても…
恐ろしくて、とても…といった雰囲気があり、
決して誰もやろうとしなかった。
【船長への悪戯】を仕掛けることにした。
そして、この悪戯には勝算もあった。
なぜなら…■暗黙のルールその3である
「さわらぬ神にたたりなし」
があり、クルーのみんなが悪戯に気付いても…
それを船長に直接言える人がいないのである。
私は…甲板に船長をみつけ実行にうつした。
寝ている船長と言っても、なかなかに警戒心が強くて近寄れない。顔に落書きを試みるなんて真似はできなくて…ともすれば、身体に触れない部分を悪戯するしかない…。
私は船長が寝返りをうち、背中を向けて寝たのを見計らって…
背中に…紙をそっと貼った。
本当に心臓がバクバクし緊張した。
微かな音すら、起きてしまうような気がして、
息を殺して…そっと遂行した。
ペタリ…
任務完了。
ちなみに、紙には何が書いてあるかというと…
【俺もクルーの皆が大好きだ】
これは、一瞬船長が自分で主張しているかのようで…
他のクルーのみんなから見ても…
もしかしたら、悪戯だと気付かないかも知れない。
そう思わせるのが悪戯であり、
よくある【ばか】だの【あほ】だのじゃ…
つまらない。
私はそのまま、遠くから観察する事にした。
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