ハート短編夢

□今日も同じ景色
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「今日も同じ景色」
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突如、その事件がは起きてしまった。

名無しさんが行方不明になった。

ペンギンは、焦り
額に冷や汗を浮かべていた。

名無しさんの姿が見えない事にここ最近、気がついた。島付近に停泊中ならともかく、このだだっ広い海の中、船内以外どこにも行ける訳がない。

名無しさんの部屋は鍵がかかっておらず、
確認したものの、そこにはいない。 

それなのに名無しさんを見かけないのは
おかしな話だった。

ちょっと前まで、
あんなに幸せそうに、
俺に船長の話をしにきた名無しさんが…

一体どうしたと言うんだろう。

名無しさんと船長が付き合い出したのは
驚愕の事実で、一週間ほど前…船員全員が驚き目を丸くした出来事であった。

だからこそ、名無しさんの行方が分からなくなっているという状況で一番心配しているであろう船長に声をかけた。

「船長…名無しさんの行方が…先日から…分からないんですが」

言いにくい事実のため、
言葉をプツリプツリと切りながら…
船長に事態を言う。

船長はこの事実を知ら無い訳が
ないだろう…

なにか…名無しさんが消えた事に関して…
知っているのではないか?

ペンギンは内心動揺しながらも聞くと、
それに対して、無表情のままペンギンに船長は答えた。

「あ?…名無しさんなら、俺の部屋につないである」

驚愕の言葉にペンギンは、
何も言えずに口を一二度パクパクさせ、
…なんとか言葉をひねり出した。

「え?…つないであるってどうゆう事ですか?」

聞き間違いであって欲しい。

嘘であって欲しい。

そう思い聞いたペンギンの期待は瞬時に裏切られた。

「どこにも行かねェように…な」

「せ、船長!」

俺はたまらず叫ぶ。

「なに、考えてるんですか。そんな事…」

「俺とあいつの問題で…お前には関係ねェ話だ」

そう言いながら船長は…
俺に背を向け、自分の部屋に向かった。

もともと…

この人は独占欲が人一倍強いとは…

そう思っていたが…

まさか、自分の恋人を監禁するとは…

思いしなかった。

名無しさんが心配でならない。

……

……

……

船長は…

いや…ローは…

一体なにを考えているのだろうか。

これでは…【恋人】というよりも…

私は手につながれた鎖を眺めながら、
不満をもらす。

【囚人】ではないか…

カチャ カチャ

腕を動かしてみるが、一向に外す事は
やはり、できない。

ローは一体何がしたいのだろう。

こんな事をしたところで…
私が逃げる訳がないのに。


バタン…

扉が開いた瞬間、
ローが姿を現した。

ローが私の姿を確認すると、
満足したのか…

机に座り、仕事にしはじめる。

私は唯一自由な口で
疑問を投げた。

「ロー…どうして…こんな事するの?」

「……お前を逃がさねェ為だ」

「私達…恋人だよね?」

「あぁ」

「これじゃあ…囚人と同じだよ」

私が悲しげに言うと、
ローは…仕事の手をとめる。

席をたち、そのまま私に近づいた。

やはり…今のローの表情から…
何もわからない。

そのまま…表情のよめないローの顔が近づき

私の唇を突如、奪う。

「…んッ、…はっ」

カチャッ

「ん、んッ」

「…ッは、名無しさん」

私の名前を呼び、
ローはねちっこいキスをする。

「ローっ…ん、ッはぁ」

私もローの名前をよび
彼のキスに応える。

ロー好きだよ。

ロー愛している。

だからこそ…

なんで…

信じてくれないの?

こんなに…

近くにいるのに…

心はずっと遠いままな気がしててん


不意に

涙がこぼれる。





私の涙に気がつき、キスを止め
舌打ちをする…ロー。

あっ

きっと、ローは勘違いしてる。

「そんなに…、…ッ、俺とキスすんのが…嫌か?」

ほら…やっぱり

私はたまらずに叫ぶ。

「嫌じゃない…ただ…ローが私を信じてくれないのが…悲しいだけ…、私を信じて…ッ!どこにも行かない、ローの側にずっといる。」

「……ッ、信じられねェ」

彼の過去に一体何があったのだろう…
彼に拒絶されてしまう言葉。

「ねぇ…ロー…どうしたら信じてくれる?」

私は…ただ涙を浮かべながら、
彼に聞くしかできない。

「…俺なしじゃ…生きられなくなるくれぇになりゃぁ…信じてやるかもな…」

そう言い…
私の側を離れ、業務に戻る。

つづく…監禁生活

私は彼の檻の中から

今日も 

逃げ出せずにいる。

それでも私は…

彼が好きで…

またこうして、

鎖につながれたまま、

彼を側で見ている。








「今日も同じ景色」





異常な束縛をする彼も

それでも、まだ彼を愛している私も…

歪んでいるのかも知れない。


13.06.12
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