ハート短編夢

□船長の苦悩
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「船長の苦悩」

※注意 完全キャラ崩壊注意。
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………



「くっそぉお、懸賞金2億がこれほどまでとは…くっそッゆるさねェ。人数じゃ、こっちが上だ。弱小海賊に…負けるはずが…」

懸賞金2億ベリーの男。トラファルガー・ローは
首だけになった敵の船長の暴言に、残酷な視線で言い放つ。

「言っておくが…その位ェにしねェと…船も身体バラしたままにするぞ?」

歪なオブジェと化した船だったものの
を、さらに細かく刻んでニヤリと笑うロー。

「わ、わかった。たのむから…見逃してくれ。みんな引け」

「あぁ、そうした方が利口だな。だが…もっと早くに気付きゃあ助かったかもな。……もう遅ェ」

ローは更に自分のテリトリーを広げると…
一網打尽に空間を切り裂いた。

そして、バラバラと上半身と下半身に分解される
敵の船員達。

「なんて…残酷な奴だ」

仲間がバラされて行く様子を
ただ見守るしかできない船長は唇を噛み締めた。

ここは…彼が絶対を誇る世界。
ローは、今まさに…
完全な空間の支配者となっていた。

彼を敵に回す事がいかに恐ろしい事なのか
身を以て学んだ敵の海賊は完全に戦意を喪失させた。

「俺の船を狙った時点で、てめェらの運の尽きだったなァ…」

そう隈のある目で一瞥しながら、
無惨になった敵に不適な笑みを浮かべた。

そして、彼は容赦もな…

「うぉお、船長さっすがー!」
「船長!かっこいい!!」
「船長に俺たちの出番もってかれちゃいますよねー」
「でも、そこがいいですよねー」
「最後かっこよく決めましたね!」
「最後のセリフ、俺今度使っていいですか!」
「本当に、かっこいいですね!」

ローの背後から飛んでくる、恥ずかしい位の声援とローを讃える言葉が飛び交う。

その状況に…ローは両手の拳をプルプルさせながら握りしめ、振り返り様に大声で怒鳴る。

「…お前ェら、いい加減にしろ。かっこもつかねェ!」

「………」

静まり返る一同に、ようやく落ち着いたと、ローは安心して溜め息をつく。

さぁて…こいつらを、このままにして…
金品だけ、とりあえず奪っておくか。


戦意を失った敵を前にして考えて込んでいると…

またもや…ローの後ろからポツリポツリ…小さな声が漏れる。先ほどとは違い、彼らにも遠慮があるようで、ヒソヒソと話しているのだが…

そのせいで逆に耳障りな感じに出来上がっていた。

「いまの船長…かっこつけたかった…って事だよな?」
「船長がかっこよく決めてる時は、黙ってないと駄目って事っすね」
「確かに…俺たちが、何か言う度に…船長のかっこよさが失せるのも勿体ない気が…」
「まったくだ…」


ローはまたもや、考えを中断して
振り返り叫ぶ。

「おい…さっきから聞こえているからな」

そして、ちゃんと船長の耳まで届いていた事を嬉しく捉えたクルー達は…そろって船長を叫んだ。

「船長〜♡」


ハァ…いいから…

頼むから…


「お前ら少し、黙ってろ!!」

ローは大きく溜め息をつき、
だいぶ疲労しているのか、
肩を大きく落とした。

自分の空間移動能力で…
背後に待機していた仲間の元にいくと…

なんとも言えない表情で周りのクルーを見た後、

「おい、ペンギン、シャチ…お前らに後の指示は任せた。適当に金品奪ってこい…俺は…寝る」

とクルーに伝え、甲板の重たい鉄の扉をガンと閉めた。

これが、今抱えている一番の悩みだった。


【船長の苦悩】

……



「…なんで、こんな状態になってんのか、お前わかるか?」

俺は、側で書類をまとめている名無しさんに問いかけた。こいつは…一応俺の女だ。

なぜ、【一応】がつくかって聞かれれば、
あまり答えたい話しでもねェが、

俺が、あまりにコイツからの告白まがいを
断り続けるのが面倒になって
折れた結果、こいつを「彼女」にするって話に発展しちまった。

俺は時々迷う。こいつを女として認識していいのか…よくわからねェ。そんな奴だ。


「ロー船長が、かっこ良すぎるから仕方ないんですよ。クルーの気持ちはすんごく分かるんです。私も追っかけてたじゃないですか」

「ありゃァ…追っかけるってレベルじゃねェだろ…」

付き合う前の名無しさんは、本当にひどかった。今は少し落ち着いているが…ストーカーってこういう奴を言うってのを身を以て経験した。

「そうですかね。好きすぎると…まっすぐ向かっちゃうんですよね。純情一直線って感じですから…」

そう言いながら、仕事を丁寧にこなす名無しさん。
一見まともそうな発言だが、コイツは違う。

「お前…まっすぐな奴が…俺の部屋から下着を盗んだり…媚薬盛ろうとしたり…するか?」

俺が睨むと…
名無しさんは…俺の視線も物ともせず、
悦に入った様に語り出す…

「確かに…今思うと…ちょっと犯罪でしたよね〜、いや…本当に船長の下着を手に入れてしまった時はどうしようかと…本当に…」

「おい、それ以上何も言うな。ますますお前を女としてみれねェ…」

「そ…そんなぁ。へこむ…」

「とか言いながら、近づくな」

微妙に俺にすり寄ろうとしてくる名無しさんをよけながら…俺はベッドに倒れ込んだ。


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