ハート短編夢

□一番大切なこと
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「一番大切な事」

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最近気分が不思議と…沈んでいた。

昔は…ただ、船長に片思いで追っかけていたり
ただ遠くから見ているだけで…満足できたのに。

おかしな事に…

今満足できないのは…どうしてだろう?

せっかく…あのあこがれの船長と…
恋人になり1ヶ月が過ぎようとしているのに!

恋人になれたという事でもう十分幸せなはずなのに…

なのに…

なのに…

なんだか、しょっちゅう悩んでしまう。

それは恋人になる前よりずっと多くの事を…




「おい、何してる。早くいくぞ」

そう船長…今はローさんが私の方を振向いた。

「はい!!」


慌てて、私はローさんの隣に行く。

立ち止まってた訳じゃなくて…
彼との身長差から生じた結果
自然と距離が開いてしまったのだった。

彼は191センチもあるのに比べて…
私と言ったら…

普通に歩けば…距離が開いてしまう。

恋人になったばかりの頃は、
それでも…一生懸命ついていこうと必死で…
ずっと早足で隣を歩いていたけれど

時間が経つにつれて…
無理して早く歩く事に疲れてしまっていた。

合わせて欲しいなんて…
ゆっくり歩いて欲しいなんて…

我が儘な気がして言い出せずにいた。


「さっきから、浮かねェ顔だな…」

私がかけよると…心配してくれたのか声をかけてくれた。

もしかして…気づいてくれたのかな?
そんなことを思いながらローさんの方を見ると…

「どうした?腹空いたか?」

と一言。

「す、すいてないです!」

そんな空腹から浮かない顔になったわけじゃない!
あまりの検討はずれな心配に思わずむっとなる。
私がさらに表情を曇らせると…

「ハァ…どうしたって言うんだ…」

と溜め息をつかれてしまった。

「な、なんでもないです!」

私はそう言って早足になる。もう、少し放っておいて欲しい。
そう思い早足になったのに…
すると…案外、この速度がちょうどいいようで…
距離が開かなくなった。

沈黙…

沈黙したまま、私はローさんの隣を歩く。

なんで、あんな風にムキになってしまったんだろう…
子どもだった。と後悔がすぐ押し寄せてくる。

そもそも、頑張って早く歩くのになれればいい話なのに…
こんな事いちいち気にしたらダメなのに…

「ごめんなさい。」

気づいたら…
自然と口から漏れる謝罪の言葉。

「おい、名無しさん…」

名前を呼ばれ彼の方を見ると…
ひどく困惑した表情を浮かべていた。

「なんでそんな顔してんのか…言わなきゃ分からねェ…」

そして…

「今まで本気で女と付き合う…長く付き合うなんて…した事ねェから…今何お前が考えてんのか…わからねェんだ。」

そうぼやいた。

今まで…「俺の指示に従え」「命令は絶対だ」と言ってきた普段のローさんらしかぬ発言に私は驚く。

と同時に…

いままで自分が何も伝えず…
ただ、こうだったらいいなぁ…と
ローさんに期待してばかりしていた事に気がついた。

誰だって頭の中が分からない…
そんな当たり前の事がすっかり抜けていた。

私は勇気をもって言う、

「ローさん…ちょっと…我が儘言っていい?」

「あぁ、なんだ?」

「ローさん、もう少しゆっくり歩いて欲しいです」

そう、緊張しながらローさんに言う。


やっぱり我が儘かな。
わざとゆっくり歩くのも
足が長いローさんにとって大変だろうし…

我が儘でめんどくさい女って思ったのかな。

ローさんに嫌われるのだけは嫌だなぁ。


私は不安そうにローさんの顔を見ると…

「悪ィ…そういえば、お前ちびっこかったな。こんな事…もっと早く言え。なに遠慮してんだ。」

と、あっさり言った後…

少し間をあけてローさんが言い放つ。


「気付けなくて…悪かったよ」


そ、そんな…

ローさんが謝るなんて…

「ろ、ローさんは悪くないから謝らないで!」

途端に慌てて言うと…

「いや…今回の事は悪かった。これからは、何でも思った事はすぐに言え。俺も万能ってわけじゃねェ。むしろ気づけねェ事の方が多いかも知れねェ」

「あと…なんですぐ言わなかった?」

「ぅ。我が儘な要求だって思ったから…そんな我が儘な事言ったら、ローさんに嫌われるかも…って。我慢すれば良い話なのに…」

「だから、そういうのやめろ。我慢より先に相談しろ!いいな。そん位で嫌うようなら俺の女にしてねェよ」

「は、はい相談します!!」

ローさんに叱られてようやく気づいた。
我慢するより相談…しないと。











「一番大切なこと」




「今度言わなかったら…バラすぞ」

「ひぃいい」

「ってのは冗談だ。いいから…相談しろ。俺の女だったらそれ位できるな?」

そう言いながら、ローさんはかがんで…
私の額にキスをした。

かぁあああっとなりながらも
とコクリと頷いた。




13.06.05
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恋愛は付き合う前ももどかしくて
大変ですが、付き合ってからが
さらに大変ですよね。
どんな事も話し合っていけば
長くお互いを大切にできるのかも
知れません。
 

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