ハート短編夢

□ファーストペンギン
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「ファーストペンギン」

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ハァ…

また…考えてしまう。

なるべく考えない様に仕事を増やしたんだが…

こうも、仕事がなくなると…

考えてしまうな。



俺が海を眺め、溜め息をつくと
ドタバタと人一倍おせっかいな奴がやってきた。

「おい、ぺんぎーん!どうしたんだよ浮かない顔して!!」

「シャチ…今の俺に構うな」

「ちぇー…人がせっかく心配してやったのに」

「…ありがとうな」

「うえぇ!?やめろよ、やっぱりおかしい」

「なんでもない。少し…疲れているだけだ」


なんとか、シャチを追い払う事に成功した俺は、
また…何度も何度も同じ事を考えた。

名無しさん

名前を心の中で呟くことですら、
心に重くのしかかり、気分が沈んだ。

今、頭の中を占めているのは…
間違いなく

名無しさんの俺に向けた最後の
あの笑顔だった。

最近までは…
そんな事何ともなかった。

名無しさんは…

俺やシャチにとって
妹のような存在であり…
当然妹の恋は応援してやりたいと思っていた。

船長に一目惚れしたあいつは
何度も何度も
俺とシャチに相談しに来た。
その度に、俺たちも
色々と案を出し合った。

何度も失敗しては…俺達の前で号泣し

いま、ようやく…作戦が成功した。



「今日から…こいつは、俺の女だ…」

船長が…はじめて名無しさんを女として認めた記念すべき日だった。

嬉しいはずだった。

シャチはすぐに名無しさんを祝福した。

なのに…何故か

俺だけは…

「ペンギンさん!ようやく、船長に女として認めてもらえました!これもペンギンさん達のおかげです!ありがとう!」

あの時の名無しさんは…
本当に…嬉しそうで…

幸せそうな笑顔だった。

それなのに…

俺だけは


「あ、ああ。よかったな」


心から祝福なんて

できなかったんだ。


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