ハート短編夢

□真夜中の読書
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「真夜中の読書」
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カチッ カチッ

時計の針の音だけがやけに大きく響く部屋。
その針は夜中の2時を回っていた。

そして、部屋に響く

ペラッ ペラッ

とページを捲る音。


名無しさんはソファーの上にちょこんと座り、
ランプの明かりを頼りに医学書を読んでいた。

先ほどまで、ローも同じ様にランプに照らされながら
向かい側のソファーで静かに古い医学書に没頭していたが、
突如、本を片手に無言で立ち上がる。

そして、突然名無しさんの横に腰をどすんと下ろしたかと思うと…

「おい、膝をかせ」

と名無しさんに声をかけた。


「え?…膝?」


ローの意図したことがわからず…
オロオロしている名無しさんに


「お前は…そのまま読んでろ」


そう言ったあと、ゆっくり身体を倒し
名無しさんの太腿の上に頭を下ろすロー


「きゃ、キャプテン!?」


突然の膝枕!?



船長の顔近い…

やだ…緊張して…本読めないッ


「お前の太腿…寝心地いいな」


そんな私の動揺を察していないのか…
人の太腿の上に頭をのせ、医学書をもった片手をブランとソファーの下に下げて、完全リラックスしているキャプテン。


私は恥ずかしさと緊張を隠すため、
必死に医学書を読むのだけど…


………


ペラッ


ペラッ



目で文字を追って
ページをめくるものの…

全然、内容が頭に入ってこない。





やっぱり


き、気になる。


ついつい本から目を離して
太腿にいる船長に目がいってしまう。
欲に負けて…見てみると。

船長は…
目をつぶって…いた。


寝ちゃったのかな?


目をとじ、リラックスしている船長の姿を
こんな間近で見られる機会なんて、滅多になさそう…

まじまじと見蕩れてしまう。

やっぱり、船長
かっこいい…





「おい、本に集中しろ」

目をつぶったまま…放たれる言葉。
その声で現実に戻り悲鳴あげる。

「ひぃい…起きてたっ」

「そんな、まじまじと見られちゃ…寝るにも…寝れねぇ…」

そう言って、ゆっくり目を開けて
怪訝そうにこちらを見る船長。

ドキッ

心臓がドクドクいってる。

だって、こんな近くでそんな風に船長の視線を感じたら…本なんて読めない…

「その…そんなに、見られたら…集中して読めないですッ」

「仕方ねぇな…起きろって言いてぇのか」

太腿に乗っていた重さが急になくなると、
途端、その重みが名残惜しくなる。

「こ、このままでいいです!」

自分でも何言ってるんだろう!?
カァーっと恥ずかしさが込み上げてくるも、

ローは大して気にした様子もなく、
再び名無しさんの太腿に重心をかけた。


「そんなに視線が気になんなら…視線さえ遮ればいいんだろ?」

そう言ってブランと下げていた手を戻して、
医学書を自分の顔に見開きでかぶせるロー。

「これで、文句ねェだろ…」

「う、うん!」



………


………



カチ、カチ、カチ


再び訪れる静寂


私はようやく、一冊の本を読み終わる頃には…
もう3時を回っていた。

太腿のぬくもりが気になり、
そっと船長をみる。

と言っても、目の前には見開いた表裏表紙しか見えないのだけど…




また…

起きてたりしないかな。



そう思いつつも、

そおっと

船長の顔の上にある
本をとってみる。


スー… スー… スー


光で一瞬顔をしかめたものの、
寝息をたて、起きる気配は一向にない。

日頃…船長という立場で
いつも背負う事が多くて疲れてるんだろうなぁ。

そんなことを思いつつ、

じっと見る。


いつも険しくムスっとしかめている表情が
緩んでいて、なんだかいつもの船長じゃないみたい。


こんな事言ったら、怒られちゃいそうだけど…


スー、スー… …スー、スー


こんな風に警戒を解いて
私の太腿で寝てくれているのが…

嬉しくて、ついつい

「このままで、いいです!」

なんて言っちゃったけど
こんな船長見れたから、本当に良かった。


あぁ…船長…


胸がきゅんと高鳴る。



きっとロー船長は私のこの思いには気づいていないけど…そっと今、伝えたい。









「ロー船長…大好きです」







今こうして船長が近くにいる喜びを感じながら…
私もゆっくり目を閉じた。



13.05.21
 

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