ハート短編夢

□恋愛童貞論
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「恋愛童貞論」

「嫉妬からの行動選択」のローサイド
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最近どうも調子がよくねぇ。

医者である俺自身が体調を崩しちまった訳でもねぇ。
確かにいつも寝不足だとクルーに心配はされるが…
それも、問題はねぇ。
体調不良だったら、自分で何とかできるわけだ。

今、問題があるとすりゃぁ…

こうやって、それなりの女を囲んで飲んでも 
全然楽しくもなんともねぇ…


どういう訳か

満たされない感覚だけが

ずっと、あるっていうことだ。



俺は周りに群がる女から酒をもらい、
一気に飲み干した。

「船長さん…本当に色男ね…」

女がべっとりと俺にもたれかかり、
上目遣いで、俺を誘う。

端正な顔立ちに
豊満な胸
艶やかな唇

どんな男が見ても
上玉の女だった。


「今夜…どうかしら?船長さんにだったら、安くするわよ」

長く船の上にいて女を
ずっとは抱いていなかった。

溜まってるもんを解消すんのに
手頃な女が目の前にいる。


こいつを抱けば…

この満たされねぇ

嫌な感覚が消えんのか?


「言っておくが…今むしゃくしゃして機嫌が悪ィ。それでもヤるか?」

俺は酒を一気に飲み干しながら、俺を誘う女に聞いた。

女は一瞬戸惑いを見せたが、

「私を抱いてむしゃくしゃした気分を晴らして?」

そう言いながら
俺にすり寄って来た。

………

………


「先にシャワー浴びてくるわね…」

俺はベッドに座り、女がシャワーを浴びている間
考えていた。

頭に過るのは名無しさんの顔

なんで、あいつの顔が今出てくるのかわからねェ。

今シャワー浴びてる女に比べて…
本当に色気ねェのに…

なんで…こんな時に

考えちまうんだ?

あぁ、むしゃくしゃする。

名無しさんの事は嫌いじゃねェのに…

なんか、あいつの事考えると…

むしゃくしゃして

嫌な感覚になる。



そうこう考えている内に…

シャワー室から一糸まとわない姿で出て来た女が、
俺のベッドに横になる。

そして甘ったるい声で俺をよぶ。

「船長さん…いいわよ。好きにして?」



俺は、気分を晴らす為にも
この女の身体に手を伸ばした。

胸を強引につかんだが…

そんな事にも慣れているようで…

「ふふ…船長さん…ふあッ」

余裕の笑みをこぼした。

「あら?」

しかし、俺はしばらく胸をいじって
この女を喘がせていたが…
ある結論に達した。


ヤる気がしねェ


「ハァ」

俺は深く溜め息をつき、手を止める。

「悪ィ…な。する気が起きねェ」

その言葉に、ひどく傷ついた顔をした女だったが…

「いいわ、またする気になったらいつでも呼んでね」

と笑顔をこちらに向けた。

「金は…置いとく」

俺はジーンズのポケットから
金を取り出し、机に…置いた。


ほかの女の身体を目の前にしてんのに…

こんな時まで

名無しさんが

あいつが気にかかって仕方がねェ。

まったく…

俺はどうかしちまったのか?

そこそこ上玉の女を目の前にしてるってのに…

…ハァ…重傷だ。


どんな病気も治療できる自信は持っていたが、

何が原因でこんな気分になってんだろうな…







満たされねェ



俺は煙草を取り出し一服した女を残して
部屋の扉をあけた。


13.06.08

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