白ひげ短編夢

□祭の夜に
1ページ/3ページ




私は笛の音に耳を傾けながら、
数々の出店に目を走らせる。

今日の満月は輝きを少し失っている様に思えた。
だって、今夜の祭りの方が

ずっと、ずっと

夜なのに眩しくて・・・


笛の音と鼓の音が大きくなる。
神輿をかつぐ男の人達が目に入る。

その中に


″あの人″ も・・・



「名無しさん、さっきから、じっと見てるな」

私の友達のボニーが3本の特大りんご飴をがっつきながら私に笑いかける。


「だって、あの中にいるもん・・・」


私がハッピ姿の″あの人″から目を離さないまま意味ありげ言うと、
ボニーは呆れた感じで



「あぁーマルコね。あんた、なんであのおっさんがいいの?男くせぇーだろーし」


「ちょっと、ボニー!マルコさんは臭くないし、むしろ匂い嗅ぐし!」


「ごめん、名無しさんには、ついていけねぇー」


「とにかく、マルコさんの事好きで好きで仕方が無いの!」


「本人に言やぁーいいだろうが!今日酒の勢いでいっちまえ!」


そう言って、ボニーは私の背中を豪快に叩く。



「ボニー・・・私、未成年なんだけど」


「今日は祭りだ、気にすんな!おっちゃん、日本酒1合な!」


「へぃよ!」


となんだかんだで、おちょぼと熱燗が渡される。



「え、飲めないし」


「じゃあ、差し入れとか言って、ついでやりゃあいいだろ!見ろ、今担ぎ終わって休憩中だ!」


「えーでも、でも」


ためらう私にしびれを切らしたのか、ボニーが声をはりあげた。


「おいっそこのマルコって男ちょっと、こい!」



「ちょっと・・・ボニーッ」


あぁ、マルコさん


きちゃった。




どうしよう。






「この子があんたに用があるってさ、じゃあ、そーゆーことで」


そう言いながら薄情にもボニーは走っていって
私を置いてく。







.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ