白ひげ短編夢

□癒し
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「…名無しさん、まだやってんのよかよぃ?」

俺は名無しさんの船室から漏れる明かりが気になって、
そっと扉の外から声をかけてみた。

……


しばらく待っても、返事がない。

入るぞと声をかけても、やはり返事はない。


扉を開けてみると、

そこには、作業机の前で伏せている
小柄な女性の後ろ姿が目に入った。

静まりかえった部屋の中に

スー…スー…という寝息だけが

静かに聞こえて来る。


寝るなら、ベットで寝ろぃ

俺は名無しさんをベットに運ぶ為に近づいた。

傍にきて、よく見ると
名無しさんの右手には羽ペンが握られたまま。
左手を枕代わりにしている。


「無理しすぎだよぃ」

普段から頑張り屋な名無しさんは
ついつい夜更かししてまで頑張っちまう。

さんざん無茶するなって言ってんのによぃ

俺は溜め息をつくと、名無しさんが起きない様に
ゆっくりと姿勢を崩させお姫様抱っこをする。


スー…スー…


名無しさんの寝顔が自然と目に入って来る。


可愛い寝顔だよぃ


普段であれば、顔をじっと見ると
恥ずかしがって嫌がるが

今ぐらい、見蕩れてもいいだろぃ?


俺はゆっくりとベットに名無しさんを移動させ、
横になった名無しさんの隣で

しばらく可愛い顔を眺めた。


スー…スー…


可愛いよぃ

人にみえねェところで
頑張ってるのも、俺は全部知っている。

なんでも、ひとりで頑張っちまうんだよな。

他の奴に頼めばいいのによぃ。

そうゆう頑張り屋なところも好きだけどよぃ…


たまには、俺に全部まかせろよぃ。

名無しさんの髪の毛を一束掬ってキスをした。



愛おしいよぃ。



スースースー



「…マ…ルコ……」


一瞬ドキッとしたが、寝言だったようで、
また静かに寝息をたてはじめた。


俺の夢でもみてんのかねぃ


名無しさんがすぐ手の届くところで寝息をたてている事に、喉がなる。


ごクリっ


あんまり長く側にいるのも問題だよぃ。


変な気おこす前に帰らなきゃいけねぇなァ…



俺はなごり惜しさを残しつつも、

名無しさんの部屋のランプの火を消し

ゆっくりと名無しさんの扉をしめた。


いい夢みろよぃ



俺にとって、名無しさんは


これ以上にねぇーくれぇーの


癒しだよぃ



2013.3.24
 

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