マルコ長編連載夢2

□22fairy tale〜クローストーリー〜
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クローストーリー
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儂は山奥で木を削って物を作る仕事を生業としていてな。
木を色々な形に彫ったり、物を作ったりする事が好きでな。

普段から山奥に住んでいて相棒はトナカイ達だけだ。
このトナカイってのも普通のトナカイと違ってな。この森深くに生息するトナカイだけ、何故か翼を持っていた。
よくトナカイの背に跨って空を飛んだりしたんだ。
街のもんから、山奥にこもる儂は変人として映っていたんだが、さすがにこのトナカイを見られるとますます変な奴に思われるだろう?

だから、街には連れてこずに途中で繋いどいて
街で食料を買い込んだりしていたんだ。
大体一ヶ月分の食料を一気に買うからソリを引きながら街を歩いたもんだ。


途中で自分を変えるきっかけが訪れた。
おもちゃ屋の前で少年が車の玩具をじっと羨ましそうに見ている姿がなんだか気になってな。

ついつい声をかけてしまった。

「あの玩具が欲しいのか?」

「うん。欲しいけど買えないんだ」

少年が悲しそうに俯いた。

当時、島での玩具は貴重中の貴重品で
一般では買えなかった。

こんな雪に囲まれた街は雪以外特に子ども達に楽しみがない。玩具も入荷するにも入荷が遅すぎるんだ。

街でその子どもを見てから

自分で何か作って渡せないかと思った。

そして儂は木を使って玩具作りをはじめた。
昔から山奥に暮らす変人だと思われていた儂は
その子どもがどの家の子どもがわかっていても
直接手渡しなんてする度胸もなかった。

この島はあまりにも狭くて、大体知られてしまっているからのう。大人はまず俺と関わり合いたいとは思わん。

だから、みんなが寝静まった夜にこっそりトナカイと共に街を繰り出し
子どもの枕元にこっそりと玩具を置いて出て行ったんだ。

それが、はじまりだった。

街に行った時にその子どもに会った時に喜ぶ顔が見れてな。儂はそれから、色々な子ども達に1年に1回プレゼントするようになったんじゃ。

プレゼントをもらった子ども達が少し大きくなると
島を離れ、この事を人に想像を織り交ぜて
話したという事らしい。

それでサンタ像が勝手にできてしまったという訳じゃ。

玩具を作る小人も居ない
夢もある訳じゃない


世にあるサンタとはかなり違うじゃろ?

だから、サンタと呼ばれる事に抵抗があったりするんじゃ。

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そう、こちらに向かってクロースさんははにかんだ。

確かにこの話は世にあるサンタクロースの話ではないけれど、すごく心があったかくなった気がした。

「確かに世にあるサンタクロースのお話とは違うんですけど、私はお話にある世界中の子どもに玩具を届けるサンタより、島の子ども達の事を考えたクロースさんのお話の方が大好きです。」

「そんな風に言ってもらえて、幸せすぎる日じゃ。」

すると、周りで聞いていたみんなが口々に賛同する。

「俺もクロースさんの方がいいっす」

「俺もそう思う」

すると、クロースさんの目元には涙がうっすら込み上げているのが見えた。

「本当に俺のバカ息子や娘はいいやつばかりだろ?」

「ああ、羨ましいくらいだ。でも、俺にも娘息子は島中にいるんじゃ」

「ああ、そうだったな。グラララ」

そして、親父様とサンタさんは色々な話をしていた。

私はふと、マルコの方を見ながら
少し、自分の住んでいたあの島について思いを馳せていた。

離れて住む孤独

私にはリリアンが居たから話し相手には困らなかったけれども、街に買い出しに行く時などの疎外感を思い出す。

私は自分を避ける人々と
完全に通じ合えないと関わらなかったけれど、

自分からめげずに関わったり
村人の為に何かしようなんて考えた事がなかった。

クロースさんみたいにはなれなかった自分がそこには居た。

今だから言える事だけれど、

もしかしたら、何か変える事は出来たのかも知れないと。

でも、それに対して後悔ばかりはしない。

だって今の自分はあの頃の自分とは違って
ちゃんと行動に起こせるようになったのだから。

全部、マルコのおかげだ。


「マルコ・・・ありがとう」

「??突然どうしたんだよぃ」

「うーうん。なんでもない」


その後、
私たちはサンタさんと一緒にクッキーを食べたり
差し入れの温かいウィスキーを飲んだりと楽しい時間を過ごした。


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