ロー長編連載夢

□05潜水艦生活その1
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そおっと開けた室内での彼の第一声は

「遅い…3分遅刻だ」


【実験体ルールその1】

船長の実験時間に必ず時間を間に合わせる事。


「ごめんなさいっ、ちょっと話に夢中になってました…」


私は頭を垂れ、また戻す。
そして船長の顔をちらっとみる。

「次遅れたら…どうなるか分かるな?」

そう一言さりげなく言い、
また手元の書類に目を通す船長。


ひぃいいい


その隈のある双眸が一瞬狂気の輝きを放った事を
ラミアは見逃さなかった。


「何があろうが、に、二度と遅れません!!」

「分かりゃあいい」

私がびしっと背筋を伸ばして言うと、
船長の表情が若干気持ち…ゆるやかになった。
ような気がした。

で、でも油断してはいけない。

快楽殺人者

脳裏に先ほどの話で浮かんだ言葉が刻まれる。
ビクビクしながらも、そっと声をかける。


「あの…今日は何をするんですか?」

昨日までは、採血と体温を計る事だけで終わった。

【実験体】というのだから…もっと恐ろしい事をされると思っていたのだけど…

案外…私の事を【実験体】ではなく…【患者】って思ってくれているのかな?

とさえ…

思っていた時だったのに…
今日聞いた話で見方が一気に変わってしまった。
いや、戻ってしまったのかな?

今はただ…この船長が怖い。


「今日は…そうだな…。回復速度について試してみてェ…」

「あの…バラバラにしたら、吸血鬼でも…死にますよ?」

「あ?バラしても死なねェよ。問題は…バラした後回復速度が早けりゃ…勝手にくっ付いちまうかも知れねェって事位か…それでも俺の範囲内ならそれを止める事もできるかも知れねェが…」

何言ってるの、この人。

やはり…危ない。


「私をなんだと思ってるんですか?」

「回復速度早ェんだろ?」

「普通の人が全治1週間の怪我が3日で治るっていう位の回復力ですッ!」

「そうか…ちょっとした怪我をさせて様子をみてみるってのもいいかもな、切り傷くらい…問題ねェだろ?」

そう言いながら取り出したのが…
銀のナイフ…いや、銀のメス。


一瞬ひぃいいという悲鳴を上げそうになったものの…

バラバラにされるよりは…

マシかな。

「おい…手を出せ」

そう言われ手を出したものの、
船長に掴まれそうになって一度出した手を引っ込めた。

「あァ?」

明らかに不機嫌そうな顔になる船長。

「あ、あの…切断だけは…やめて欲しいです…ッ」

「俺に指図するな。どうするかは…俺が決める。じっとしてろ」


う、ぅう。


我慢、我慢。
私は実験体としてこの船に置かせてもらてるんだから!!
そう思い、ぎゅっと目を閉じて恐怖に耐える。

快楽殺人鬼の船長に…どうか…
手を落とされませんように…

皮1枚つながった状態にされ
『切り落とさずに残しといてやった』
とか言われないだろうか?

不安だけが過る。

「あ、冷たッ」

ひんやりとした感触が私の手の平にそっと触れる。

スーっと銀のメスが私の手のひらをなぞる。

プツッ

「…ッ」

ちょっとした痛み…

そして目を瞑ったまま、どうなるか見守る。


「………」


!?


「おい、いつまで…目つぶってんだ。目を開けろ」

「こ、これだけ…ですか?」

手のひらから血がやや出る程度…
想像してたのと…違う。

私の唖然とした反応に、怪訝そうにこちらを見る船長。

「あ?もっと深く切られたかったのか?」

「い、いえいえ、そんな訳ないじゃないですかっ、良かったです。バラされなくて…」


そうほっと言うと…明らかに不審そうな目でこちらを見る船長。


あ…

なんか、突然の気まずさ。

また!一言多く言ってしまった!



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