ブック(ネタ)

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「神なんて滅べばいい」



目の前に出された質素な夕食を眺めながらぼそりと呟く。今日のメニューは蒸かした芋と豆のスープと硬いパンだ。今日が特別貧相なメニューなのではない。いつもこうなのだ。

この世界は残酷だ、満足に美味しいものすら食べることが出来ない。サシャじゃないけど飯に飢えてるよ。そりゃそうだ、だって私は美味しいものを毎日お腹一杯に食べれる幸せを知っている。何処で知ったのかって?前世だよ前世。こんなこというと馬鹿されるかもしれないけど私には前世の記憶がある。

前世で私は平穏で戦いのない世界で生まれ育ちなんの外的脅威もない幸せな環境で生きていた。好きな時にお腹一杯に美味しいものが食べられて暖かな寝床と優しい両親に囲まれて幸せな人生を生きた。そんな生活を送っていた私がだ、

硬いベッドと薄味の食事と物資の少ないこの世界で生きていけるはずがない!人間は欲深い生き物だ、1度快感を受けてしまえばどうしてもその時を切望してしまう。

おまけにここは巨人という得体の知れない恐ろしい敵が人間を食べようと壁の外を闊歩しているのだ。なんでこんな世界に転生させたんだよくそ神が。元の世界に返してください。それかせめて前世の記憶は消しといてくれよ。そのせいで私はこんな贅沢者になってしまったのだぞ?うー、クソッ。腹立つ腹減った。こうやって嘆いたって仕方ない、もうこの問答は子供の頃からしていてそして私は結論を出したんだ。

軍に入ってさっさと出世して美味しいものを食べるのだと!

私は考えた。この世界で美味しいものを食べるためにはどうすればいいのかと。

自分で作るのは諦めた。そもそも材料がない。塩でさえ高価な世界だ、料理なんてまともなものが作れるわけがない。

そんな酷い世界だがこの世界だってお偉いさんは良いものを食べ絢爛豪華な生活を送っているはずだ。ならば私もそれを目指そう。

そして平凡な平民の生まれである私が成り上がるには1つしかない。

それは軍で出世することだと!

この世界は巨人という外敵がいてそのため内政が安定しない。こういう世界は平凡に生きるのは難しいが力さえあれば成り上がることはできる。

幸い前世のもやし体系が嘘のように私の運動能力は高かった。同期でも1、2を争うほど高い。1人ミカサという女の子には何度やっても勝てないが大抵の課目で私はトップクラスの成績を修めている。このハイスペックな私より強いミカサは何者なんだろ。人間なのか?

そんなわけで私は間違いなくこの104期生の中で出世頭だ。訓練兵時代に好成績を残してそして軍にいって出世してやる。どの兵団に行くのかって?もちろん調査兵団だ。

どっかの死に急ぎ野郎みたいな巨人を駆逐したいみたいな高尚な理由ではない。ただ一番スピード出世しやすいと思ったから調査兵団を選んだ。

安全度でいえば憲兵団に行くのが正しいのだろうが憲兵団は兵士が多すぎて飽和している。手柄を立てるのも難しいだろうし出世するのはさらに難しい。その点調査兵団は実力主義だ。

こういってはなんだが調査兵団では多くの人が死ぬ。なので直ぐに上のポストが空くし実力が評価されやすい。成り上がるにはこれ以上ないくらい最適な組織だ。

だから私は調査兵団に行く。そして巨人を狩りまくって出世して美味しいものをたくさん食べて幸せになるのだ。そのためにはどんな犠牲もいとわない。絶対に強くなってやるッ!



「あー!ナマエそのパン残すんですか?いらないんですか?なら私に下さいよ!パン下さい!」


「嫌に決まってるだろ?これは私のパンだ」



夕食を食べないで考え込んでいたからどうやらサシャに目をつけられてしまったようだ。いくら不味くても食わなければ死ぬ。私は食事を掻き込んだ。

あー!というサシャの悲鳴が聞こえたが無視する。口に放り込んだパンが苦くて私は水とともに流し込んだ。


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