ブック(ネタ)
□私を惚れさせた責任を取ってください
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「ベルトルト、君が好きだ」
「へ?僕!?」
時刻は夕方、茜色に空が染まる頃合いに私はベルトルトを校舎裏に呼び出した。
人気のない校舎裏に呼び出しといえばちょっと生意気な奴を絞めるためか告白と相場は決まってる。そしてここにいるのは私とベルトルトの二人だけ、夕方過ぎに人気のない校舎裏に男女が揃えばあとは察しがつくだろ?なのになんなんだよその反応。お前だってちょっとくらいはこの呼び出しって告白?いやいやまさか、みたいに期待しただろ?なのになんでそんな心底驚きましたみたいな顔しているわけなの?いくらなんでも鈍すぎるだろ。
「何?私が君を好きだといけないわけ?」
「いやまさか僕が告白されるなんて思わなかったから。てっきりライナーに伝えて欲しいみたいに伝言頼まれると思ったんだ」
「なるほど納得だ」
ライナーは頼りになるし格好いいし何気に紳士的だしライナーを好きだという女子は一定数いる。きっとベルトルトを使って思いを伝えた女子が過去いたのだろう。そして私もその類いだと思われたわけだ。だが私はライナーのことは好きでない。
だって奴は暑苦しいしマッチョだし厳ついしホモ疑惑もあるしあと顔も好みじゃない。私はスマートなイケメンがタイプなのだ。ライナーを落としまくりだけど別にライナーの事柄嫌いだといいたいわけではないよ?話がそれたね。つまり私が好きなのはベルトルトだといいたいのだ。
「だが私が好きなのはベルトルト、君だ。私は君に告白しにきたんだ。好きですアイラブユー」
「どうして僕なんだい?そんな僕を好きになる要素なんてないと思うんだけど」
そうベルトルトは困惑顔で言ってきた。本気で自分が好かれる理由がわからないらしい。なんでだよベルトルトは格好いいよ。
イケメンだし高身長だし順位も10番以内に入っていしむしろ外的要素だけでもモテ要素ありまくりだぞ?何故か私の友人達は皆あんな地味な奴嫌だというけど。なんだよ、ベルトルトはかっこいいよ。私は友人と趣味が合わないらしい。まあライバルが少ないのはいいことだ。これからも私だけのベルトルトでいてください。
さらにベルトルトは優しくてはにかむような笑顔が可愛くて私の好みの緩やか系男子にストライクだ。もう好きすぎる。結婚しよう、私が幸せにするよ。
「好きなところあげるときりがないけど私は本気だよ。私はベルトルトが好きだ、付き合って欲しい。ダメなら結婚してくれ」
「譲歩の仕方がらなんかおかしいけど、えっと、僕は」
そういいながらベルトルトは視線を漂わせた。なんて答えたらいいかわからないらしい。優柔不断なベルトルトらしい。なら私が答えを決めてやろう。答えはイエスだ。はいと言って敬礼したまえ。
「ベルトルト、答えは」
「ごめんなさい」
はいと言えよと促そうとしたらその前にベルトルトが答えを述べた。しかもノーだ。ば、ばかな!私の何が不満だというのだよ!
めったにノーと言わないベルトルトの貴重なノーだ。全くもって嬉しくない。なんなんだよ、私の何がダメなんだ!答えをいうまで納得しないからな!
「どうしてダメなの?私のことが嫌いなのか?」
「ナマエのことが嫌いなわけじゃないよ」
「じゃあなんでだよ。自分の意見を滅多に言わないベルトルトがノーと言ったんだぞ?ちゃんと理由を言わないと納得しないからな!納得できなかったら付き合えよ!」
若干強引な発言も交えてベルトルトに詰め寄る。お前どんだけベルトルトと付き合いたいんだよって?当たり前だろ?私はベルトルトが好きなんだ独占したい。他の女どもがベルトルトの魅力に気付く前に何としてでもベルトルトを手に入れなければならない。そのために手段なんて選んでなんかられないね!
「えっと、」
「なんなんだよ言えよ」
「僕にはやらなければならないことがあって、」
「やらなければならないこと?それって憲兵団に入ること?」
「え?あ、うん」
ベルトルトは若干戸惑うように頷く。憲兵団になることか、なるほど。真面目なベルトルトらしい答えだ。
憲兵団になれば内地に行けて餓えることもなく平穏な日常を送ることができる。ベルトルトが頑張りたいという気持ちは理解できる。だけれど振られる理由は理解できない。私と付き合いながら頑張れよ。はい却下!
「それは私と付き合えない理由にはならねぇよ。私と付き合いながら頑張れ」
「え?え?でも、」
「なんだよ。まだ問題があるか?」
私がこれだけごり押ししているのにも関わらずベルトルトの返事は煮え切らない。おどおどしているのも魅力の一つだと思っていたけどそろそろ鬱陶しいぞ。もういっそう食っちまって既成事実でも作ってやろうか。なんかそれいいアイディアに思えてきた。ABC全部終わらせちゃっていいよね?さあベルトルト、一緒に大人の階段上ろうか。
そう決意してベルトルトに飛びかかろうとした瞬間だった。ベルトルトが顔を上げ真っ直ぐと私の目を見据えてきた。ベルトルトのグレーの瞳が飛び込んできてどきりとする。
「ごめん、やっぱり付き合えない」
「どうして?私にはそんなに魅力がないかい?」
「違う。これは僕の事情なんだ。僕は今どうしてもやらなければならないことがある。だからナマエといて情ができると困るんだ。だなら付き合えない」
そういうベルトルトの表情は真剣だ。憲兵団になることがそんなに大切なのだろうか?真面目すぎるぞベルトルト、もっと気楽でも人生上手くいくって。ほらサシャとか見てみろよ。あれだって世の中生きていけるんだぜ?まあサシャは芋とパンがあれば生きていける特殊な人間だけど。私にはベルトルトの愛情が必要なのであれは真似できません。
なんてふざけたことも言えないほどベルトルトの表情は真剣だ。あれ?ベルトルトってこんなキャラだっけ?気弱で優柔不断なベルトルトはどこ言ったんだよ。こんなキリッとした顔だったっけ?
「だからナマエとは付き合えない」
そういってベルトルトは私のことを振った。だけど私はそれどころではない。いやそれも大事だけど。
ベルトルトは大人しくて気弱でいつもライナーの腰巾着な草食系男子だったのにこんなはっきり物言うとはどういうことなのだ。何か問題があるかって?私がギャップ萌えで萌えさせられたことが問題なのだよ!
うわわあぁぁーー!!おとなしくて可愛いはずのベルトルトがきっちり系イケメン男子になってる!元々かっこよかったけど別の一面見せられるとさらに惚れる!ヤバい、これはヤバい。本気で惚れた
ベルトルトが好きで堪らない
「じゃあそういうことでごめんナマエ。今日のことは忘れてこれからも友達でいよう」
「え、嫌だけど?」
「え゛」
ベルトルトが驚いた顔してるけどなに言ってるのお前。私をこれだけ惚れさせといてなかったことにするなんて許さないからな!勝ち逃げはダメに決まってるだろ!そんなのさせないぞ!
お前が私と同じくらい惚れるまで許さないからな!
「これだけベルトルトのこと好きにさせといてなかったことにするだと?!ゆるさん!そんなのズルいぞこのヘタレ!イケメン!大好きだ!」
「えええええっ!?じゃあ僕どうしたらいいの!??」
「そんなの私を好きになればいいんだ馬鹿野郎!ちくしょう覚えてろよ!愛情どころか劣情まで抱かせてやるからな!覚悟しろ!」
そういって私はその場から走って逃げ出した。仕方ない今日は私の負けでいいよ。今日のベルトルトはかっこよすぎたから今日は私の負けだ。
だが勝負はこれからだ。これから3年かけてベルトルトに情を抱かせてやる。絶対に負けない。私は洗剤で落ちない染みよりしつこいから覚悟しておけよ。
私を惚れさせたんだからお前も私に惚れるのは当然だろ?
〜私を惚れさせた責任を取ってください〜