ブック(ネタ)
□少女Aが最遊記の世界にトリップした話(小説)
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「こんな話だったっけなー」
「ん?どうしたんだナマエ」
「何かあったのか?」
ガタゴト揺れるジープの上でぼんやりと呟いた独り言を左右に座る猿と河童に拾われる。
猿と河童と言っても比喩なだけで本当に猿と河童が座っているわけではない。どちらもリア充滅べとモテない男どもに叫ばれそうなぐらいのイケメンの男性だ。本当に滅べばいいのにバルス。まあ1人は男性というよりは少年だけど取り敢えず見た目は人間だ。
見た目はと付け加えたのは実は彼らは人間ではなく、なんでも妖怪だそうで妖力を押さえて人間の姿になっているらしい。妖怪って、君達はお化けなのか南無三と言えば妖怪というのは種族の名前でれっきとした生き物なんだって。違いがないか身体で確かめとくか?とセクハラ発言してきた悟浄は地面に沈めといた。そのあとは八戒に連れていかれてた。ザマー
悟浄のおふざけはおいといて私の世界に妖怪なんてもんはいない。どうやら私は異世界に迷いこんでしまったもようだ。またか。もうワンピースだけでいいよ。勘弁してくれ
ワンピースに引き続きまたしてもトリップとは一体どういうことだ。これが噂に聞くトリップ体質というやつか。まったくもって嬉しくない。本当いつになったら私は制服を着れるのだろうか。高校生活終わる前に元の世界に戻りたいです。
説明に困ったので異世界から来たということを私を保護してくれた三蔵さんに言ったところ直ぐに上の人に確認してくれた。この世界では徳の高い人は神様と話せるらしい。凄い世界だ。正確には神様ではないらしいけど観世音菩薩って神様だろ。違うのか?細かいことはわからん。
で、その人に確認したところ私はやはり異世界の人間で帰る方法はわからないらしい。オワタ。なんてこった。こんな電化製品のない世界で一生を過ごさないといけないのか。軟弱人間には生きていけません
と思ったけど案外生きていけてる。エアコンもテレビもないけど悟空という友達もいるしご飯も美味しい結構楽しい。中華ウマー。日本にいた時よりもいいもん食べてるかも。ワンピースの世界もご飯はおいしかったなー
なんてそんないいことばかりではなかった。
なんでも牛魔王とかいう妖怪を復活させようと企むやつらのせいで世界に負の波動が流れあちこちで妖怪が暴走してしまって、それを食い止めるために三蔵さんは西へ行かないと行けないらしい。
へー、頑張れという感じだったのだが私も連れていかれることになった。なんだ、と?
異世界からきた人間という異分子は手元に置いときたいらしい。いやいや、でもその旅って危険なんでしょ?牛魔王の手下とかが襲ってくるんでしょ?行きたくねーと言ったのだが拒否権はなかった。oh、
私弱いぞ?ゆとり舐めんな!と言ったら別に死んだら死んだで不安要素が1つ減って楽だと言われた。貴様鬼か。自分の身は自分で守るしかないらしい。幸いふうふうの実の能力者だから風になれば最悪死なんだろう。にしてもなんて世界に来てしまったんだ。ワンピースの世界より下手したら危険かも。おうちに帰りたいですママン。
そしてジープに揺られて今に至るのだがふと思う。ここは西遊記の世界ではないのかと。
三蔵法師が妖怪を連れて西を目指す旅。西遊記にそっくりだ。悟空の名前で気付けよという感じだが私にとって悟空は西遊記ではなくドラゴンボールの代名詞なのだ。かめはめ波とか悟空出せないの?と思ったら八戒が出した。八戒スゲー。君にはサイヤ人の称号をやろう
なんとなくここは西遊記の世界なのかなという気もするがやはり違うだろう。目指す先は天竺でもないし三蔵さん生臭坊主だし。
「いや、私の世界にある西遊記っていう話と展開似てると思ったんだけとやっぱり違うなと思って」
「へー、どんな話ですか?」
「三蔵っていう偉いお坊さんが猿と河童と豚の妖怪連れて天竺を目指す話」
「だいたい合ってるじゃねえか」
私の話を聞くと三蔵さんが肯定してくる。まあ確かになんとなくストーリーは合ってるがやはり違うな。こんな煙草吸って拳銃所持してるヤクザのような三蔵法師は出てこなかった。あれは全くの別もんだ。
「ちょっと待てそれって俺が猿ってことか!?」
「ははっ、合ってるじゃねぇかくそ猿。てめぇは猿だろ」
「なんだとエロ河童っ!悟浄だって河童で合ってるだろが!」
「ふざけんなくそ猿!誰が河童だ!」
「俺だって猿じゃねえ!」
「悟空が猿で悟浄が河童なら僕は豚ですかね」
私を挟んで騒いでいた二人が八戒の一言でぴたりと黙る。うん、そういうことになってしまう。確か豚妖怪の名前は猪八戒だ。奇しくも八戒さんの名前と一緒である。もしここが西遊記の物語の世界であるなら八戒さんは豚役ということになる。が、それはない。スマートで知的な八戒さんが豚ってことはない。だからそんな笑顔をこちらに向けないで下さい八戒さん
「そういうことですよねナマエさん」
「いやいやいや!そんなことないですよ八戒さん!八戒さんが豚なんてそんなわけないじゃないですか!ははは。西遊記に似てるとか私の気のせいでした!幻想です!」
八戒さんの言葉を全力で否定する。ビビり過ぎだって?当然だ。八戒さんは穏やか温厚に見えて腹黒だ。アダ名は魔王で間違いない。三蔵一行で一番逆らってはいけない人だ。奴は裏ボスなのです。
「だいたい西遊記の三蔵法師は聖人ですし」
「おい、何が言いてえ」
「ひひっ、それは確かに別物だ」
「言っときますけど三蔵を普通のお坊様と思わないで下さいね。普通のお坊さんはちゃんとまともな方々ですから」
「八戒まで何が言いてえ」
何が言いたいってそりゃ三蔵さんがまともな坊主に見えないって話だよ。だいたい金髪でハゲてないし。坊さんってハゲじゃなくていいのか?まあ何にしても銃振り回して殺生する人間を立派な坊さんとは思えない。むしろヤクザです。口に出したら眉間に穴空くので言いません。
「大丈夫だよ。寺院にいた時にちゃんと他のお坊さん方も見てるから三蔵さんがアレなのはわかってるって」
「そりゃ良かった。この世界の坊主が皆あんなもんと思われたらたまんねぇもんな」
「そうそう。むしろ三蔵が坊主ってのが可笑しいんだよ」
「‥てめえら覚悟は出来てるんだろな」
そういうと三蔵さんが銃を取りだし後ろを向いて標準を合わせる。ちょ、だからそういうところが坊さんっぽくないんだって!本当にこの人なんで最高僧になれたんだ?審査の基準がわからん。任命した人は節穴だったのだろうか。この人を僧侶として解き放ってはいけなかったと思います。取り敢えず銃はヤメテ死んじゃう
「よし!後は任せた!」
「あーっ!汚ねえぞナマエ!」
「ナマエずりー!」
サクッとふうふうの能力使って風になり前座席に移動する。そして三蔵さんが身を乗り出して空いた座席に身を沈める。三蔵さんの席を半分奪った形になったがまあ三蔵さんが戻ってきた時に戻れば問題ないだろう。悟空と悟浄からクレームが来たが聞かなかったことにする。奴らは犠牲になったのだ
「悟空も悟浄もいい奴だった。残念だよ」
「コラッ!勝手に殺すな!」
「そうだ!そうだ!俺達死んでねぇぞ!」
「うるせえ!黙れお前ら!!」
パンパンと銃声が荒野に響く。隣で聞くと耳が痛い。
とんでもない世界に来てしまったと思いながらもそんなに悲観的でないのは周りの人員に恵まれたからだろう。
悟空も悟浄も八戒さんもあの三蔵さんですら彼らはいい人達だ。
いつか元の世界に戻りたいと思うけれど少しくらいならここにいてもいい
なんて思ったけど大量の妖怪に囲まれてやっぱり一刻も早く帰りたいと思ってしまう私は正常です。
〜少女Aと西への旅〜
(ヒャハー!出たな三蔵一行!)
(おや、団体さんですね)
(私違います三蔵一行じゃないです。ただの通りすがりの一般人です)
(おい、コラナマエ!)
(いやいやこれ無理でしょ?死んだ絶対死んだ死んだら化けてやる!)
(そこまで元気あるなら死なねえよ。おら行くぞ)
(え、ちょっ、私戦いたくないギャー!)
ーendー