ブック(ネタ)
□言峰綺礼に転生した話(小説)
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気付いたら別の人間になっていたと言ったら貴方は信じるだろうか。
この世に生を受けて**年、私は極めて平凡な人生を送っていた。なのに、
いつの間にか私は修道女の服に身を包み顔も名前も別の人間になっていた。
ありえない
そんな意味不明な状況にあるこの身体の名前は言峰綺礼というらしい。
ここで私はピンときた。
言峰綺礼、この名前には聞き覚えがあった。
そう言峰綺礼、彼はFate/zeroという創作物にでてくる登場人物と同じ名前だった。
ひょっとしたら私はその言峰綺礼に成り代わってしまったのかもしれない。
だとすれば私は今とんでもない道を歩いている。
あと何年もすればきっと聖杯戦争が始まり命賭けの戦いに身を投じなければならないだろう。
その未来を避けようにもこの身体はそれなりに歳を重ねているからきっと代行者にもなっているだろうし遠坂家とも交流があるだろう。
聖杯戦争から逃れることはできない。
だが考えようによってはFate/zeroのキャラクターの中で言峰綺礼に成り代われたのは幸運かもしれない。
言峰綺礼は表向きは遠坂時臣を勝たせるための駒だ。なら言峰綺礼のようにその流れに逆らわず私は役割に准ずればいい。
私の記憶違いでなければ言峰綺礼は早々にサーヴァントを失いさらにセイバーとの共闘のために聖杯戦争から追放される。
実際の言峰綺礼はこの時遠坂時臣を殺しアーチャーのマスターとなるのだが私はそんなことせずにそのまま聖杯戦争から消えればいい。
そして遠坂時臣の娘の面倒をみながら余生を謳歌すればいい。
うん、完璧な人生プランだ。
だが1つ私は忘れていた。それは
「ふん、女。我は貴様が気に入った」
言峰綺礼がアーチャーに好かれてしまうということを、
原作通り私は時臣氏に気に入られアサシンと契約し聖杯戦争に臨むことになった。
そして時臣氏がサーヴァントを召喚するのを見守り後方で控えていると現れたアーチャーに上記のように言われた。なんということだ。
アーチャーとて誰が自分を召喚したのか理解しているはずだ。なのに私をマスターに指名するとはどんな嫌がらせだ。
今まで私はどんな時でも一歩下がり主である時臣氏を立ててきた。
控えめに決してでしゃばらない有能な部下を演じてきた。
なのにこの金ぴかのせいで全て台無しになったのだ。
時臣氏はきっと己を差し置いて私が金ぴかのマスターに指名されたことに対して不愉快に思われただろう。
その証拠にいつも優雅な微笑みが僅かに歪んでいる。
せっかくここまで友好な関係を築いてきたのにホントどうしてくれるんだ!
「…失礼ながら王よ。畏れ多くも貴方様を召喚しましたのは私でありまして、」
「黙れ雑種。我は女に話しかけておる。」
心の中で絶叫する。
こ、この金ぴか本当に何言ってるんだ!?
時臣氏に向かって何て口を!
しかしここでそんなことを口に出そうもんならそれこそ全てを台無しにしてしまう。
ナマエは能面のような表情を張りつけて静かに言う。
「申し訳ありません、英雄王。私は既にアサシンと契約しておりまして貴方様と契約することは出来ません。」
「何?」
英雄王はあからさまに顔を歪めた。
そしてチッと舌打ちをする。
それをナマエは心の中でざまあと嘲笑った。
1人の人間が複数のサーヴァントを所持することは許されていない。
英雄王はアサシンがいる間はどうやっても優綺をマスターにすることができないのだ。
淀んだ空気を時臣がまとめる。
「王よ、この言峰綺礼のこと気に入られたのでしたら彼女は私の部下。いつでも私の元に呼び寄せることができるでしょう。」
「だから貴様をマスターに認めろと?」
時臣氏は優雅に微笑む。
肯定ということだろう。
…今気付いたが私時臣氏に売られてないか?
馬を走らせる為の人参のように扱われている。
立場上仕方ないがなんとなく師に物扱いされるのは少し寂しい。
と思った瞬間そっと腰を引かれた。
え?と思う間もなく私は時臣氏の腕の中にいた。
「と、時臣氏?」
思わず表情を顔に出してしまった。無表情を心がけていたのに。
時臣氏は私の顎に手をかけゆっくりと持ち上げる。
「ええ、その通りです、我が王よ。このナマエは私のものですから。」
唇が触れ合うギリギリの距離で時臣氏は動きを止め、視線を流し英雄王に語りかけた。
彼の信念通りその動きはとても優雅だった。
英雄王は一瞬驚いたがすぐに口元を歪め笑い出した。
「クックッ。雑種、それは我に対する挑戦か?ならば実に愉快だ。」
「お誉めに与り光栄です。」
「ただの堅物かと思えば面白い。いいだろう。貴様をマスターと認めてやろう。だが覚えておけ雑種。」
そこで英雄王はちらりとナマエを見た。
これ以上ないほど極上の笑みを浮かべて
「我は王。欲しい物は奪うまでのこと」
「承知しております。我が王よ」
そういって2人は契約を結んだ。
今の流れで何故2人が契約に至ったのか私には全く理解出来なかった。
ただ1つわかったのは私はとんでもなく面倒なことに巻き込まれたらしい。
〜end〜